2018 Fiscal Year Annual Research Report
糖尿病患者におけるがん化学療法時のデキサメタゾンの有用性と安全性に関する研究
Project/Area Number |
18H00413
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 歩 東北大学, 大学病院, 薬剤師
|
Project Period (FY) |
2018
|
Keywords | がん化学療法 / デキサメタゾン / 血糖値 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究目的】がん化学療法における悪心・嘔吐は、患者が苦痛と感じる代表的な副作用であり、適切に制御することが求められている。高度催吐性リスクのレジメンでは、制吐薬としてNK_1受容体拮抗薬、5-HT_3受容体拮抗薬、デキサメタゾン(Dex)などが用いられるが、Dexはコントロール不良な糖尿病患者への投与は原則禁忌とされており、血糖値に与える影響について十分に検討されていない。そこで本研究では、がんと糖尿病を併発した患者において、がん化学療法時のDexの投与量が悪心・嘔吐や血糖値の変動にどのように影響しているのか解析することで、糖尿病患者の制吐療法の適正化に貢献することを目的とした。 【研究方法】東北大学病院でシスプラチン50mg/㎡以上の高度催吐性リスクのレジメンを施行し、糖尿病治療薬を使用していた58例を対象とした。全例においてNK_1受容体拮抗薬と5-HT_3受容体拮抗薬による制吐療法が実施されており、day1~5のDex投与量34mg以下をDex低用量(25例)、36mg以上をDex高用量(33例)に分けて解析した。悪心・嘔吐はCommon Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE) v5.0によるgradeと嘔吐完全抑制(CR)率で、血糖値は毎食前の数値で評価した。 【研究成果】悪心・嘔吐のgradeとCR率は、1コース目、全コース共にDex低用量群と高用量群間に有意差が認められなかった。一方、1コース目における毎食前の血糖値は両群間に有意差が認められなかったが、全コースでは低用量群における昼食前の血糖値(平均値±標準偏差)は200.2±45.8mg/dLであり、高用量群の228.8±51.2mg/dLと比べ、有意に低下していた(P=0.038)。以上より、がんと糖尿病を併発した患者において、がん化学療法時のDexは低用量で投与することにより、悪心・嘔吐を制御しつつ血糖値を改善する可能性が示唆された。
|