2018 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者における経口分子標的抗がん薬の適正使用に関する研究
Project/Area Number |
18H00432
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
細野 寛貴 東北大学, 大学病院, 薬剤師
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Project Period (FY) |
2018
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Keywords | 高齢者 / 薬物血中濃度 / 経口分子標的抗がん薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん患者の生存期間の延長のためには、抗がん薬の有害事象をコントロールしながら、より長期間の使用することが重要である。しかしながら、骨髄抑制、肝機能障害などの様々な有害事象の出現によって、投与量の減量または中止に至ることも多い。有害事象の出現は抗がん薬の薬物体内動態との関連が考えられており、当院では、経口分子標的抗がん薬の薬物血中濃度を測定することにより、薬物動態学的観点から抗がん薬の適正使用を実践してきた。近年、抗がん薬の治療成績の向上や支持療法の充実などにより、高齢者においても化学療法が行われるようになってきたが、一般に高齢者においては薬物処理能力、すなわち薬物体内動態あるいは薬物感受性が非高齢者とは異なる。そこで、本研究では、高齢がん患者を対象として、分子標的抗がん薬の薬物血中濃度と抗腫瘍効果、有害事象との関連性を解析した。 チロシンキナーゼ阻害薬スニチニブを投与された65歳以上の腎癌患者13名および65歳未満の患者17名を対象とした。高速液体クロマトグラフ-タンデム型質量分析計(LC-MS/MS)を用いた一斉測定系により、スニチニブ薬物血中濃度の測定を行った。65歳以上および65歳未満の患者群を比較した結果、性別、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、スニチニブ薬物血中濃度/投与量比のいずれにおいても有意な差は認められなかった。一方で65歳以上の患者群において、スニチニブ薬物血中濃度が海外の臨床試験結果からスニチニブ有効薬物血中濃度の下限とされる50μg/mL以上を示した群と、50μg/mL未満を示した群を比較した時、50μg/mL未満を示した群において有意にPFS、OSの延長が認められた。 以上のことから、スニチニブの薬効・有害事象における年齢による影響は少なく、高齢者においてもTDMを実施して薬物血中濃度のモニタリングを行うことで安全で治療効果が最大となる化学療法の提供に貢献できると考えられた。
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Research Products
(1 results)