2019 Fiscal Year Annual Research Report
Fundamental studies for proper utilization of linguistic data preserved by retired linguists
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18H00661
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
加藤 重広 北海道大学, 文学研究院, 教授 (40283048)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 裕 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (70227750)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 言語データの再資源化 / データ保存方法 / 言語学の研究倫理 / 言語調査と理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究計画に基づいて,研究職を離れた言語学者の言語データの保存と再資源化のためのデジタル作業に中心に,合わせて,理論的な調査と探求を行った。前者については,故湯川恭敏東京大学名誉教授提供のバンツー諸語のデジタル化が完了し,菅原孝和京都大学名誉教授提供のコイサン諸語の言語データのデジタル化を進めている。これらは計画よりやや早めに進捗しており,利活用の方法や再資源化の有効性を検証する段階に進んでいる。加えて,土田滋氏提供のオーストロネシア諸語のデータについてデジタル化を進めているが,これについては,フィールドノートについて確認すべき点が多少あり,それについての疑念を解決しながらリソース化を進めている。確認のために直接インタビューを行う予定であったが,二度目のインタビューは社会状況を踏まえて延期している。 あわせて,次年度の対象とするための,日本語方言データについてもデータの状況の確認を進めていたが,言語データが非常に多いことから,どういう手順で進めるかの優先順位を策定し,次年度早々に作業に入る準備を整えた。 言語データの再資源化と保存に関する理論的な研究については,言語データの種類とカテゴリー,データ収集者(主に言語学者)のプレファランスとその変異をどう調整するかの基準策定,データ再活用に際しての倫理的問題などについて論考を進めており,まもなく成果として発表する予定である。データ提供者(いわゆるインフォーマント)が物故している場合,連絡が取れない場合など,許諾をどう考えるかは,法的な問題とは別に,研究倫理にかかわる問題を含む。言語調査の時期によっては,明確な記録がないことも多く,通常は契約書等を取り交わしていないことも判明している。これらの問題点を整理して,実地にどう対応するかを含めた試案はまとめてあるが,次年度は討論を通じて成果として発表することになっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
全体として当初の計画以上に進捗がある。特に言語データのデジタル化については,想定よりも作業が進んでいる。最終的に補うべき点が残っているケースもあるが,作業の進展は計画よりも明らかに進展がある。理論研究も遅滞なく進んでおり,最終年度よりも早く,成果をまとめられるように注力している。特段大きな問題は現時点では生じておらず,計画全体についてはかなり進捗がある。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画とその遂行に特段問題はなく,計画以上にデジタル化・再資源化の作業は進展している。その利活用方法と言語研究事業のあり方に関する研究倫理の課題についてもおおむね進捗は良好で次年度の内に多くの成果がまとめられるとの見込みを持っている。研究倫理の成果と実際のデジタルデータを照合しながらの検証を今後は行い,それを研究倫理と言語データ保存という多面的な課題に相応の結論を出す方向で進める。このまま良好な進捗であれば,後継の研究課題を整理ながら準備を早めに進める。
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Research Products
(4 results)