2018 Fiscal Year Annual Research Report
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18H00712
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
春田 直紀 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 教授 (80295112)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 雄基 立教大学, 文学部, 准教授 (00726573)
薗部 寿樹 山形県立米沢女子短期大学, その他部局等, 教授 (10202144)
小川 弘和 熊本学園大学, 経済学部, 教授 (10320417)
榎原 雅治 東京大学, 史料編纂所, 教授 (40160379)
呉座 勇一 国際日本文化研究センター, 研究部, 助教 (50642005)
湯浅 治久 専修大学, 文学部, 教授 (70712701)
高橋 一樹 武蔵大学, 人文学部, 教授 (80300680)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 中世地下文書 / 銘文史料 / 行宗文書 / 柳瀬文書 / 土佐国大忍荘 / 久木小山家文書 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、以下の3点にわたる研究活動で成果をあげることができた。 【1】中世地下文書研究会の開催:平成30年6月に立教大学でメンバー会議(研究計画と今年度の予定を協議)の後、一般公開の第8回研究会(薗部寿樹「村落定書の源流―注置状と置文―」ほか、村上絢一「(中間報告)「饗料・腰差・酒肴請取状」の検討」、熱田順「在村寺社の経営と村落自治―紀伊国柏原村を事例に―」ほか、小川弘和「篠原系図と田浦系図-改変系図写の史料批判と活用の試み-」)を主催した。第9回研究会は同年10月に京都で開催され、大村拓生「久多荘における売券と署判」、服部光真「大和国霊山寺所蔵寄進札の史料的性質」、小橋勇介「『地下文書』を伝える家に関する一考察-向井家文書と林家文書を事例に-」という3報告があり、議論を深めた。【2】中世地下文書の原本調査とデータベース作成:平成31年3月にオーテピア高知図書館で行宗文書、高知県立歴史民俗資料館で柳瀬文書の原本調査を実施した。また、両文書に関連する大忍荘故地の現地も踏査し、石碑銘文の実見等も行った。なお、高知調査に先立ち、研究協力者の協力で大忍荘関連史料のデータベースを作成し、調査に活用した。【3】畿内・近国班は、国際常民文化研究機構の奨励研究「熊野水軍小山家文書の総合的研究」と連携して、6月に神奈川大学で研究会(坂本亮太「熊野水軍小山家文書研究の現状と可能性」、佐藤純一「日置川流域の文化財と安宅荘城郭群」(仮)、北野隆亮「紀伊半島における中世備前焼の流通」)、11月と3月に和歌山県立博物館で久木小山家文書の原本調査、11月と2月に日置川流域で現地調査、3月に古座川河口部で現地調査をそれぞれ実施し、成果をあげた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的に掲げた、文字史料群構成の列島規模での地域偏差にも留意しつつ、原史料調査による問題発見という方法に基づき、地下文書論の視点から中世文字史料研究の再構築に取り組んでいくという課題については、以下の点からおおむね順調に進展していると判断される。 【1】全国を①東国、②畿内・近国、③中国・四国、④九州に分けた地域班を編成し、各地域を対象とした研究が進展している。【2】中世地下文書の原本調査と金石文・木札の銘文調査については、高知県や和歌山県での合同調査をはじめ、メンバーの個人研究においても精力的に実施し、原史料調査によって初めて知り得た研究成果を提示することができた。【3】一定地域における中世文字史料群の全体構成を把握する試みとして、土佐国大忍荘の中世文字史料を網羅するデータベースを構築した。【4】本科研による研究成果の発信は、2回主催した一般公開の中世地下文書研究会を通して行った。また、中世の文字史料や「地下」社会に関する研究代表者・分担者・協力者の研究成果も多数、論文や学会発表を通して公表されている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策としては、以下の諸点を考えている。 【1】各地域班では、地下文書(紙媒体)の原本調査に加え、関連する銘文史料も実見し、各地域における史料のあり方を立体的に復原していく。【2】毎年度メンバー全員による合同調査を実施し共通認識を培っていくが、本年度は信州諏訪社の神官層伝来文書群を対象にした調査を実施する。本調査にあたっては、事前に中世諏訪社関係総合目録を作成して、そのデータベースを調査・研究に活用していきたい。【3】地下文書の原本調査、銘文史料の記録化、データベースの構築では、地元の史料所蔵機関等と連携するとともに、研究協力者として日本中世史専攻の若手研究者を登用していく。【4】畿内・近国班では引き続き、国際常民文化研究機構の奨励研究「熊野水軍小山家文書の総合的研究」と連携して、紀伊国に重点をおいた調査・研究を推進していく。【5】毎年、6月と10月頃に公開の研究会を主催し、調査・研究成果を研究者向けに発表して意見交換し、議論を深めていく。本年6月の研究会では、シンポジウム「日本中世の「地下」社会-薗部寿樹の文書論と春田直紀の生業論から考える-」を開催する。昨年度実施した土佐国大忍荘関係文書調査の成果は、10月頃の研究会で発表することにしたい。【6】研究会にあわせてメンバー会議を開き、研究調査の計画を立て、出版や博物館等での企画展示など研究成果の公表のあり方についても検討し、準備を進めていく。
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Research Products
(36 results)