2018 Fiscal Year Annual Research Report
北海道東部根釧台地の最終氷期以降の湿原形成史と植生変遷
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18H00762
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
冨士田 裕子 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (50202289)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
百原 新 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 教授 (00250150)
井上 京 北海道大学, 農学研究院, 教授 (30203235)
紀藤 典夫 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (30214836)
近藤 玲介 皇學館大学, 教育開発センター, 准教授 (30409437)
吉田 明弘 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (80645458)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 地形発達史 / 花粉分析 / 大型植物化石 / 堆積学 / ルミネッセンス年代測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の湿原発達には、気候・水文環境に加え、地域的な地殻変動や火山活動が大きな影響を与えており、世界でも特異的な地域となっている。これまでの研究成果から、縄文海進以降の海退とともに発達した沖積平野内に形成された湿原の成立過程と環境変動との関係が次第に明らかになってきた。一方、海水準変動の影響を直接受けない段丘上などに分布する湿原の形成過程や古気候変化の影響、古植生変遷については、十分に解明されていない。そこで本研究は、北海道東部の根釧台地上の湿原で、古環境変遷、地形発達や堆積環境の変化と形成史との関係を明らかにし、他の沖積低地の湿原と比較検討し、北海道の第四紀後期以降の湿原形成に関わる古環境を解明することを目的とする。 2018年6月に、海成段丘上に位置する落石湿原、落石西湿原、歯舞湿原などでハンドボーリング等による野外調査を実施した。また、機械式ボーリングの掘削地点を決定した。しかし、2018年9月の北海道胆振東部地震の影響で、機械式ボーリング調査は次年度に延期となり、2019年7月に実施した。 2018年の秋以降、植生調査、UAVによる撮影、地形測量データ解析、湿原とその周辺における摩周火山起源をはじめとした主なテフラの分析、地形学的な記載などの調査結果をまとめた。また、ハンドボーリングコア試料のAMS14C年代測定を多点で行うとともに、花粉分析、大型植物化石分析を開始した。 落石西湿原では約11,000年前に湿原の発達開始があったこと、根室半島の基盤地形である海成段丘は、上位の地形面ほど周氷河作用を受けて丘陵化が進行していることなどが明らかとなった。AMS14C年代測定の結果、現在の湿原を構成する泥炭基底・下部からは、最終氷期~完新世初頭を示す年代値が一部で得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
6月に根室半島や根釧台地上の晩氷期が起源とされる歯舞湿原、落石湿原、落石西湿原などで現地検討会を開催し、ハンドボーリング等も実施、今後の研究の進め方などを検討した。その後、各自が研究計画に沿い、落石西湿原、落石湿原、歯舞湿原で植生調査、UAVによる撮影、GNSSおよびレーザーレベルによる地形測量、ハンドボーリングによる湿原の形状と泥炭層の空間的分布状況を調査した。 湿原成立の地形学的・堆積学的な背景を明らかにするために、湿原が分布する段丘や周辺地域において地形と堆積物の記載を行った。野外調査時にはUAVを用いた測量、テフラやAMS14C年代測定試料、ルミネッセンス年代測定試料なども採取した。空中写真判読により湿原周辺の海成段丘や周氷河性斜面地形などの分布を把握した。 採取されたハンドボーリング試料は花粉分析、大型植物遺体分析を中心に、テフラの対比に関する分析、ルミネッセンス年代測定に関する試料処理を順調に進めた。特にAMS14C年代は議論の基礎資料として重要であるため、多点の測定を速やかに進めるように努めた。 以上のように、当初予定の通り研究は進捗したが、秋期から冬期に予定していた専門業者委託の機械式ボーリングによる基盤岩以浅のオールコア試料採取については、平成30年9月に発生した北海道胆振東部地震の影響で、ボーリング業者が地震関連の業務を最優先することとなり、年度内のボーリングの実施が困難となった。このため機械式ボーリング調査を次年度に延期し、2019年7月に落石湿原と歯舞湿原で実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
歯舞湿原において植生調査による群落区分を行い、UAVによる撮影、湿原の形状や植生と微地形の関係を解明するための微地形計測(GNSS測量機器およびレーザーレベルによる地形測量)、測線を設定しハンドボーリング・検土杖調査をおこない、湿原の形状と泥炭層の空間的分布状況を明らかにする。 湿原成立の地形・堆積学的な背景を明らかにするために、野外調査と室内作業・実験を実施する。野外調査では、湿原上のみならず湿原の基盤地形である海成段丘等も対象に広域で地形と堆積物の記載を行い、UAVを用いた測量も実施する。また、指標テフラやAMS14C年代測定試料、堆積物から直接年代値の算出が可能なルミネッセンス年代測定試料などを採取する。室内作業では、まず空中写真判読により湿原周辺広域の地形を分類しそれらの分布を把握する。次に主対象とする湿原の微地形を把握するために、DEMにより基図とする等高線図を作成する。室内実験では、まず湿原や関連する堆積物の編年を行うために、広域に本研究対象地域に分布すると考えられる摩周火山起源や樽前火山起源などのテフラの基本的な層序を整理するため、検鏡や屈折率測定、AMS14C年代測定、ルミネッセンス年代試料測定を行う。同時に、湿原形成史解明のため、機械式ボーリングによりオールコアボーリング試料を得て、海成段丘面の離水後~泥炭堆積開始前から現在に至るまでの基礎物性値、層序や珪藻分析などに基づく堆積環境の詳細を明らかにし、古植生変遷を明らかにするために花粉分析、大型植物化石分析を実施する。また、高分解能な湿原形成史を明らかにするためにコア試料の複数層準から有機物試料を採取し、AMS14C年代測定を実施する。
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Research Products
(2 results)