2019 Fiscal Year Annual Research Report
人口減少社会における世代間の自助・共助に関する研究
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18H00865
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Research Institution | Sugiyama Jogakuen University |
Principal Investigator |
黒田 達朗 椙山女学園大学, 現代マネジメント学部, 教授 (00183319)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮澤 和俊 同志社大学, 経済学部, 教授 (00329749)
玉井 寿樹 名古屋大学, 経済学研究科, 准教授 (00456584)
相浦 洋志 南山大学, 経済学部, 准教授 (50511177)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 少子高齢化 / 世代間共助 / 高齢者の労働 / 人口減少 / 居住地選択 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度に引き続き、近年のわが国の人口動態等に関する資料を調べた。特に、注目すべき現象としては、相変わらず東京大都市圏への一極集中が続いている中で、例えば愛知、静岡等の東海地方から20代前後の女性が東京への大幅な流出超過していることが挙げられる。この原因としては、いくつかの理由が推測されているが、まだ統計的に十分な解明には至っていない。基本的に東海地方は自動車産業に代表される製造業が主たる産業であり、首都圏に比べて企業の本社ひいては管理部門が少なく、サービス業に種類も圧倒的に少ない。戦後の歴史的にも新たな地域格差の要因となるだけでなく、本研究の課題である世代間の共助等にも影響を及ぼす可能性がある。 昨年も指摘した自動車の自動運転の進捗やその影響についても、黒田(2019)で研究成果を公表した。とくに、高齢者の居住地域選択の自由度が高まるので、世代間の共助にも影響を与えると思われる。 理論的な分野については、宮澤が高齢者への権限付与による人口変化等の世代重複的な影響に関する研究をAssociation for Public Economic Theory (2019)で報告した。玉井は高齢化と財政赤字の関係をKamiguchi and Tamai (2019)で公刊した。また、相浦はAiura (2019)において、高齢化社会において重要な課題となる医療の越境サービスの財政的課題を分析した。 黒田と宮澤は、引き続き、わが国の労働市場で課題となっている高齢者の労働期間の伸びが、出生率や孫世代の育児補助へ与える影響などを検討するための世代重複モデルの試作を続けている。本来は年度末に研究メンバーが参加した研究会を開き、共同研究を進める予定であったが、2月以降新型コロナウィルスの影響で開催できなったので、今秋以降に行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の研究実績の概要にも記したように、とくに理論的な研究に関しては個々に各メンバーが関連する研究を進めて公表している。ただし、黒田と宮澤を中心に開発中の居住地の世代別選択を考慮したモデルに関しては、長期の収束に関して明示的な解が得られない場合があり、まだ解決できていない。今後は、メンバー間での議論を一層進めながら、研究目的に可能な限り近い理論的研究の遂行を目指している。 同様に、上記のように、女性の地域間移動やM字カーブなど年齢に依存した労働供給について、データ等の収集を行うとともに、理論モデルへの反映も検討したい。 住宅の遺贈等も世代間の自助・共助に関連するが、慶応義塾大学や日本大学の研究者を中心に相続税改訂の影響などについて統計的な検証も行われており、これらも参考に本研究で予定しているシミュレーション分析の対象とする政策の具体的候補を抽出したい。
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Strategy for Future Research Activity |
理論的研究に関しては、上記のように研究の基本的目的である世代間の居住地選択を中心とした自助・共助の分析について明示的な解が得られるモデルを最終的に構築する必要がある。上記のように試作的なモデルは、まだ安定的な解を得るに至っていないので、今後は新型コロナウィルスの終息を待って、研究グループのメンバーを中心に意見交換する機会をより多く設けたい。メンバー各自は、上記の実績を見てもわかるように、得意とするアプローチや分析手法も違っているので、討論や議論をより進めることで改善を進めたい。 より実証的なデータに基づいたシミュレーション分析に関しては、その参考となるようなマイクロデータの存在についても今後確認したい。 研究実績の概要にも記したように、本研究にも深く関係する研究テーマで、メンバー各自は以前より個別の研究を進めてきており、それらについて本年度も学会発表や学術誌への投稿を行うことにより、他の研究者からの意見や示唆を可能な限り獲得しながら、上記のような本研究の最終的な成果に活かしていきたい。
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