2018 Fiscal Year Annual Research Report
Reconsidering 'Unfree workers' in Britain and the British Empire c. 1800-2000
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18H00879
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
奥田 伸子 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 教授 (00192675)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中沢 葉子 (並河葉子) 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (10295743)
江里口 拓 西南学院大学, 経済学部, 教授 (60284478)
竹内 敬子 成蹊大学, 文学部, 教授 (80206945)
吉村 真美 (森本真美) 神戸女子大学, 文学部, 教授 (80263177)
三時 眞貴子 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (90335711)
大澤 広晃 南山大学, 外国語学部, 准教授 (90598781)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 労働市場 / イギリス・英帝国 / 奴隷労働 / 女性労働 / 児童労働 / 移民労働者 / 自由主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018度の研究目標は、第1に「不自由な労働者」についてメンバーが問題意識を共有し、それぞれの研究対象間の相互関連について確認すること、第2に国内外において資料調査を進めることであった。 第1の目標を達成するために、2018年7月に第1回研究会を行ない、それぞれの研究について紹介し議論を行なった。2019年3月の第2回研究会では、アイルランド教育史を専門とする岩下誠(青山学院大学)が「保護主義的子ども期の臨界点」という講演を、並河が「英領西インド植民地における奴隷たちの解放に向けた情報戦略」を報告し、講演・報告と質疑応答をとおして児童労働女性労働および奴隷労働の研究について多くの知見を得た。報告と議論をとおして、「不自由な労働者」の「不自由」の2重の意味、労働者の自由と契約、労働市場の分断といった研究の基本概念についての理解が深まった。 第2の資料収集については、並河、竹内、大澤、奥田がそれぞれ国外で資料収集、研究打ち合わせを行なった。並河はイギリスにおいて反奴隷制運動の表象調査を行なうとともに、インド洋奴隷貿易についての専門家であるロンドン大学のShihan de Silva教授と研究打ち合わせを行なった。竹内はイギリスにおいて「自由な」児童労働力への規制を行なった1819年工場法、「不自由」と定義される労働者が拡大する1860、1870年代における女性のフリー・エージェンシーに関わる資料を収集した。大澤は南アフリカ共和国において20世紀前半のアフリカ人労働問題に深く関与した南アフリカ人種問題研究所関連文書の収集を行なった。奥田はイギリスで20世紀中葉のヨーロッパ大陸からの難民受入れを労働力移動の立場から検討する政府資料を収集した。国内では、吉村は収集済の資料の整理を行い、三時と江里口はそれぞれ関連文献の分析を行なった。 2019年度以降、成果を学会誌等で公表の予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度の具体的目標は、①研究課題にかんする問題意識の共有化と、それぞれの分担についての相互理解の深化 ②研究会を開催し、隣接する研究分野の理解、③研究が先行しているメンバーについては国外での資料収集、であった。 ①については2回の研究会をとおして、問題意識やそれぞれの研究関心を共有するとともに、議論から、研究を一層推進するためのさまざまな方法、考え方が示され、目的を十分に達成することができた。 ②第2回研究会において、アイルランド教育史の専門家の研究報告を聞き、議論することによって、女性労働と児童労働、メンバーのみでは研究が手薄となるアイルランドにおける児童労働と女性労働について多くの知見を得た。 ③2018年度は、4人が国外での資料調査を行なうことができた。それぞれ資料収集としては十分な成果が得られており、収集した資料を利用した論文等は2019年度以降順次公表される。また、並河は国外出張の際にインド洋奴隷貿易についての専門家と研究打ち合わせを行ない、2019年度の招聘について、原則的に合意に達した。これらの研究活動をとおして2019年度の研究の進展に視する大きな足がかりを作った。 なお、研究成果について、それぞれが執筆、投稿を進めているが、編集の都合で2018年度内に公表されたものは多くはない。この点についてやや残念である。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度に共有した「不自由な労働者」をめぐる論点を発展させるために、2019年度における各メンバーの研究課題を以下に設定した。並河:奴隷制と経済合理性、吉村:女性含んだ囚人労働、三時:インダストリアル・スクールの資料を利用した児童労働をめぐる議論、竹内:女性労働者のエージェンシーと19世紀初頭の児童労働をめぐる議論、大澤:南アの黒人の労働問題、奥田:20世紀中葉の難民受け入れと労働力政策と研究にかんする理論の検討、江里口:労働者の「自由」をめぐる経済思想。2019年度から研究分担者となった山本千映(大阪大学経済学研究科・2018年度は研究協力者)は労働市場をめぐる理論の整理と本研究で相対化することを目的とする「自由な労働者」の実態を19世紀イギリスに即して研究する。 本年は、三時と山本がイギリスへ国外出張し資料収集を行なう。他のメンバーは収集した資料を利用して成果に結びつける。2019年度も2回研究会を行なう。第3回研究会では、竹内が女性労働、三時が児童労働、第4回研究では大澤が南アの黒人労働者、吉村が囚人労働について報告を行なう。 10-11月頃にはロンドン大学のShihan de Silva教授を招聘し契約労働者(インデンチャード・ワーカー)について講演を依頼する予定である。これによって、本研究ではカヴァーできなかった「不自由な労働者」である契約労働者について理解を深めるとともに、英帝国における労働者の移動について多くの知見を得ることが期待される。 長期的には、本プロジェクト最終年である2021年度に関連学会において小シンポジウムを行ない、プロジェクト全体の成果を公表することを計画している。2020年度前半までに研究メンバー全員がそれぞれの個別研究を報告し、20年後半はシンポジウムに向けて、テーマの設定、個別研究相互の関連性を精査し、必要な研究を進めることを予定している。
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Research Products
(3 results)