2019 Fiscal Year Annual Research Report
Reconsidering 'Unfree workers' in Britain and the British Empire c. 1800-2000
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18H00879
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
奥田 伸子 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 教授 (00192675)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中沢 葉子 (並河葉子) 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (10295743)
江里口 拓 西南学院大学, 経済学部, 教授 (60284478)
竹内 敬子 成蹊大学, 文学部, 教授 (80206945)
吉村 真美 (森本真美) 神戸女子大学, 文学部, 教授 (80263177)
三時 眞貴子 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (90335711)
大澤 広晃 法政大学, 文学部, 准教授 (90598781)
山本 千映 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (10388415)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 「不自由な」労働 / 労働市場 / イギリス・英帝国 / 間植民地 / 自由主義 / ジェンダー / 労働力移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
メンバーの研究報告会の他に国外研究者を招聘して研究集会を行なった。研究報告会では三時が「浮浪児を労働者に;19世紀後半イギリスにおけるインダストリアル・スクールの活動とネットワーク」を、竹内が「イギリス1819年工場法とジェンダー:『自由な児童』との関連で」を報告し、19世紀の児童の労働がいかに社会において認識されていたかを分析した。それぞれ「保護される存在」として位置づけられていた年少者にかんして「困難を抱える児童」にたいする労働への方向づけという観点、および児童保護政策にジェンダー的視点を入れ、児童が働く上での「不自由さ」に着目した。 2019年10月にはロンドン大学コモンウェルス研究所のShihan de Silva Jayasuriya博士を招聘し(「感情労働の地域・階級観比較にみる『近代家族』、18H00702と共同招聘)、 “African Diaspora and Unfree Labour in Indian Ocean’と題した研究集会を開催した。Jayasuriya博士の報告は19世紀初頭のスリランカにおいて植民地政府が奴隷制廃止後、伝統的な賦役制度を改変し植民地のインフラ整備のための不自由労働制度を利用したことを示し、インド洋世界の不自由労働への視座を与えた。 国外出張では、竹内、三時が資料収集を、山本は資料収集と研究報告を行なった。上記の三時と竹内以外のメンバーの研究は以下のとおりである。並河:19世紀西インドにおける解放後の奴隷の労働と家族形成。森本:若い囚人の労働(三時の研究との接合)。大澤:20世紀初頭南アフリカにおけるアフリカ人の労働。山本:19世紀中葉の「働かない」男性、江里口:ベアトリス・ウェッブの自由主義批判、奥田:第2次世界大戦前後の難民のイギリスへの労働者としての導入、研究全体の総括として19,20世紀の「自由」概念についての考察。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度の研究は2020年2月まで、ほぼ予定通り遂行することができた。2020年3月に予定していた通算第4回研究会は延期せざるを得なかった ① 資料収集については、山本、竹内、三時がイギリスにおいて、それぞれ必要な資料の収集を行なった。山本は「働かていない」男性に着目して、自由な労働者とされてきた成人男性労働者を相対化する視点を取り入れたことにより、研究が進展した。三時と竹内は資料収集の結果を研究報告に生かした。特に三時の研究は大きく進んだ。 ② 科研メンバーにより研究会では活発な意見交換が行なわれた。その結果、労働市場における「不自由さ」の多様性・多義性、経済・社会思想における「自由」の概念について錦が深まるとともに、今後の研究課題がより鮮明になった。 ③Shihan de Silva Jayasuriya博士を招聘することができ、博士の講演により、本プロジェクトメンバーでカヴァーできなかったインド洋地域における、奴隷/不自由労働についての認識が深まった。この時の講演は翻訳、訳注をつけて発表する予定である(2020年7月発表)。 ④研究成果の発表については2019年度に発表できた成果は一部のメンバーによるものに偏っている。この理由として、それぞれのメンバーにとって個々のテーマを「不自由な労働」という観点から考えるのが初めてであり、資料集や概念整理等の時間が必要なことがある。個々の研究は順調に進展し、2020年以降は成果の発表も進んでいる。今後の成果発表をより積極的に行ないたい。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナウィルス感染拡大以前の予定では、2020年度は大澤、奥田が国外における資料調査を行なう予定であった。大澤は南アフリカにおいてアフリカ人労働者の管理の実態とそれに対する社会および人道団体の対応に関する資料の収集、奥田は1930年後半におけるユダヤ人難民のイギリスへの導入政策にかんする資料をロンドン中心に収集することを予定していた。 2020年度開始時点で、国外出張の見通がたたないため、収集済の資料やオンラインで入手可能な資料を利用して研究を進めることになった。また、この期間を利用して、個別研究相互の関連を重視し、追加すべき研究課題を確認することとした。これによって「間植民地」における近代的労働力創出の視点が得られることが期待される。研究テーマについては並河:奴隷制度の経済合理性(特に女性奴隷に着目)、森本:若年囚人の労働、三時:インダストリアル・スクールと児童労働、竹内:工場法とジェンダーの構築、山本:1851年センサスを利用した働いていない男性」の分析、大澤:南アにおけるアフリカ人労働者の管理、奥田:第2次世界大戦前後の難民導入とイギリス労働市場、江里口:19世紀イギリスにおける「自由主義」思想批判の系譜、である。 メンバーの報告を中心に研究会はこれまで通り年2回を目途に行なう、議論についてはメーリングリストを活用する。 最終年度に予定していた小シンポジウムについては、2020年度、報告を考慮していた社会経済史学会が延期になったこと、資料収集に遅れが出ていることから、1年延期し、本研究課題の研究期間終了後になるが、2022年の大会において行なうことを予定し、2021年度は研究の総まとめと、可能ならば国外資料収集、後半は小シンポジウム準備を行なう。小シンポジウム延期に伴い、2021年度末には、4年間の研究をまとめた報告書を作成することを予定している。
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Research Products
(8 results)