2020 Fiscal Year Annual Research Report
Listening to the postcolonial experiences in East Asia: a comparative study of oral history between Korea, Taiwan and Japan
Project/Area Number |
18H00932
|
Research Institution | Yamato University |
Principal Investigator |
蘭 信三 大和大学, 社会学部, 教授 (30159503)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
李 洪章 神戸学院大学, 現代社会学部, 准教授 (20733760)
八尾 祥平 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (90630731)
権 香淑 上智大学, 総合グローバル学部, 助教 (00626484)
中山 大将 釧路公立大学, 経済学部, 准教授 (00582834)
丁 智恵 東京工芸大学, 芸術学部, 助教 (90794545)
福本 拓 南山大学, 人文学部, 准教授 (50456810)
坂田 勝彦 東日本国際大学, 健康福祉学部, 教授 (60582012)
佐藤 量 立命館大学, 先端総合学術研究科, 非常勤講師 (20587753)
伊地知 紀子 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 教授 (40332829)
山下 英愛 文教大学, 文学部, 教授 (80536235)
田中 里奈 フェリス女学院大学, 文学部, 准教授 (40532031)
伊吹 唯 熊本保健科学大学, 保健科学部, 助教 (00880189)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 東アジア / ポストコロニアル / オーラルヒストリー / 日・韓・台の比較研究 / 民主化とオーラルストーリー |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度の具体的な作業課題は以下のようである。(1)各国・地域におけるそれぞれのオーラルヒストリー(OH)の所在調査の継続。日韓台の様々な語りについての所在調査を学会ホームページやインターネット検索による所在調査を行い、多様な語りの分布状況を整理した。(2)各OHを言説空間との関連で位置づけるために、言説空間を規定する政治状況、語られる対象、マスター・ナラティブやモデル・ストーリーとの関連という基本的なメタ・データを明らかとする。テーマごとのOHの位置づけや、個々のオーラルヒストリーの意味とともに、各国のポストコロニアルな言説空間を読み解くことを可能とする。2021年3月13日の研究会では、中国の対日協力者の戦前から戦後のライフヒストリーとOHから、戦後炭坑で働いた在日朝鮮人のOHから、さらに宮古出身漁民の独特な引揚げ体験とその後の国内移動に関する語りから、それぞれの言説空間に関する考察を行った。とりわけ、予算の繰り越しによって2022年7月10日に「東アジアの脱植民地化とジェンダー秩序-女性たちの経験と集合的記憶の再構築」というシンポジウムを開催し、それはかなりの好評を博することができた。 最後に、東アジアにおける主要なOHを聞き取る学会とネットワークを構築し、国際ワークショップ・シンポジウムの準備を始めだした。また、2022年7月に「東アジアの脱植民地化とジェンダー秩序-女性たちの経験と集合的記憶の再構築」というシンポジウムを開催を準備しだしたが、それはかなりの野心的な企画であり広く関心を集めた。最後に、2022年9月に東アジアにおける主要なオーラルヒストリーを聞き取る学会とネットワークを構築し、日本オーラル・ヒストリー学会と共催しての日本・韓国・台湾による国際シンポジウム「東アジアにおけるオーラルヒストリーの展開と課題」の準備を順調に進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、本研究課題の三年目として張り切っていたが、新型コロナのパンデミックから思うように資料調査や研究会活動も行えず、研究成果を十分蓄積できなかったし、韓国や台湾との協力関係の構築も十分とは言えなかった。研究会やシンポジウムの開催も資料調査もなかなか思うようにいかず苦労した。進捗状況は芳しくなかった。 そこで、2021年に予算の繰り越しをおこなったが、同年も新型コロナの影響は抜けきらず、2022年まで繰り越して、その7月10日に「東アジアの脱植民地化とジェンダー秩序-女性たちの経験と集合的記憶の再構築」というシンポジウムを開催し、非常な好評を博した。そのシンポジウムでは、戦後東アジアの脱植民地化における女性たちの経験とジェンダー秩序に着目し、日韓台のそれぞれの事例をめぐる集合的記憶の再構築過程から、そこでのジェンダー秩序の揺らぎを読み解いていった。すなわち、第二次世界大戦での日本の敗戦で植民地は解放されたが、迫りくる冷戦のなかでその脱植民地化は様々な困難に直面した。なかでも韓国の済州4・3事件と台湾の2・28事件とその後の50年代白色テロはその困難さを象徴している。これらの白色テロはその後の権威主義体制下で抑圧され、1987年民主化以降になってやっと語り直され、集合的記憶が再構築されていった。他方で、敗戦した日本は植民地から追放され、引揚げの過程で凄惨な性暴力被害を受け、また中国やサハリンに残留した人たちのなかには女性が多く含まれていた 。これらは多様な要素が複雑に絡んだものであり、その集合的記憶も時代と共に変化してきたことを明らかとした。 このような、2020年度のみで見ると本研究課題はかなりの苦戦を強いられ、その進捗状況は厳しい状況であったが、繰り越し最終年度の2022年度のシンポジウムによって課題を大きく進めることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の課題としては、第一に、2年間の活動を継続し、東アジにおけるポストコロニアル経験に関する語りの所在調査を明らかとすることにある。第二に、それらを各国地域における言説空間に位置づけながら考察するという作業を根気強く行っていくことである。最後に、これまで、日韓関係の悪化や新型コロナのパンデミックによって、相互訪問が出来なかったことで大きく遅れている東アジアにおけるオーラルヒストリーを研究する研究グループや学会間のネットワークの構築を準備していくこと、そのための起爆剤としての日・韓・台による国際シンポジウムの開催であろう。そのことによって、各学会間の交流を促進し、最終的な課題である東アジア・オーラルヒストリーのアーカイブ化という課題への道のりを準備することができるからだ。これも、2021年には日本オーラルヒストリー学会、韓国口述史学会、台湾口述史学会との連絡がとれたので、今後は本格的な準備へと協議を重ねていくことであろう。
|