2021 Fiscal Year Annual Research Report
学校的社会化の理論的・経験的研究-「児童になる」論理と実践の教育社会学的探究
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18H00990
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
北澤 毅 立教大学, 名誉教授, 名誉教授 (10224958)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有本 真紀 立教大学, 文学部, 教授 (10251597)
間山 広朗 神奈川大学, 人間科学部, 教授 (50386489)
鶴田 真紀 創価大学, 教育学部, 准教授 (60554269)
小野 奈生子 共栄大学, 教育学部, 教授 (90615973)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 教育社会学 / 歴史社会学 / 構築主義 / エスノメソドロジー / 学校的社会化 / いじめ / 発達障害 / 子ども観 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度、新型コロナの影響で、予定していた研究調査活動がほとんど実施できなかったことを受けて、2021年度は、方針を変更する部分と継続する部分とを慎重に見極めつつ研究活動を実施した。その結果、2021年度中に、予定していた調査を一定程度実施できたが、新型コロナの影響が長引くなか予定通りに進まない部分も残り、繰越金が発生した。 <A>「学校的社会化」の理論的・経験的研究領域では、理論的かつ実証的知見を深めるために、複数の研究者に講演を依頼した。また、2021年度の繰り越し分で、2022年度に関東圏の公立小学校での継続的な観察調査を実施したが、海外の小学校調査に関しては、交渉を試みるも、新型コロナの影響が続くなか調査の見通しが立たない一年となったゆえ、同じく繰越金を使用して、2022年度に、奈良教育大学付属小での調査を実施するとともに、奈良教育大学で研究会を実施した。また、大津いじめ自殺事件に関しては、編著刊行に向けた補足的なインタビュー調査を継続することで(比較という視点から川口市いじめ不登校事案を調査した)、予定通り9月に編著を刊行することができた。 <B>発達障害研究領域については、NPO法人が経営する発達障害児童生徒のための学習塾での観察調査を予備的に実施するとともに、児童生徒の保護者へのインタビュー調査実施に向けた準備作業を進めた。さらには繰越分を使用して、2022年度に、小学1年次から調査対象としてきた生徒の様子を在籍中学校で観察するとともに、生徒本人、および生徒の保護者と学級担任などにインタビュー調査を実施した。 <C>「学校的社会化」歴史社会学研究領域では、新型コロナの影響が続くことで、北海道の公立小学校での資料収集調査の見通しが立たず、今年度も、大学図書館やデジタルアーカイブスでの資料収集を継続的に実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要で述べたように、歴史社会学領域で予定通りに進まなかった部分はあるものの、それ以外の調査研究は一定程度順調に推移した。とはいえ、新型コロナの影響が長引き、今年度も、2020年度分と2021年度分と2年度分の繰越金が発生した。 <A>領域に関しては、外部講師を招いて、Zoom形式での研究会を2件実施した。1つは、ミードの『精神・自我・社会』の新訳を刊行した山本雄二氏(関西大学)を迎えて、ミードの自己論や社会化論について意見交換ができ、理論研究を進めていくうえで有意義であった。もう1つは、「学校と教師」をめぐる問題について、油布佐和子氏(早稲田大学)に連続講演をお願いすることで、現代日本の教育課題について理解を深めることができた。また、大津いじめ自殺事件に関しては、編著刊行に向けた補足的な調査を実施することで、岩波書店から『囚われのいじめ問題』を9月に刊行した。また本年度分の繰越金を使用して、2022年度に、1)関東圏の公立小学校での観察調査、2)発達障害児を積極的に受け入れている奈良教育大学附属小学校の授業場面の観察と管理職へのインタビュー調査を実施した。後者の調査は、<A>領域ばかりか<B>領域にも関係している。 <B>領域については、本年度分の繰越金を使用して、2022年度に、1)中学3年生になった生徒の観察調査と、生徒の保護者と担任教師などへのインタビューを実施できたことで、小学1年から中学卒業までの9年間の調査を完遂することができ貴重なデータを収集できた。2)発達障害児童生徒を対象とした学習塾(NPO法人経営)に子どもを通わせている保護者へのインタビュー調査に向けて本格的な準備作業(塾の観察と塾の教室長を招いての研究会)を実施できたことで、来年度の調査実施への見通しが立った。
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Strategy for Future Research Activity |
いじめ問題については、編著を刊行できたことで一つの目標を達成できたが、海外の小学校の観察調査の見通しは立たずに終わった。そこで、最終年度に向けた課題として、比較という方法を維持しつつ、海外の小学校調査の可能性を探り続けるとともに、それが実現できなかった場合を想定して、国内のオルタナティブスクールなど、いわゆる「普通の学校」とは異なる教育形態を実施している小学校を調査対象とすることも計画した。 さらには、発達障害問題に関しては、NPO法人が運営している学習塾に子どもを通わせている保護者へのインタビュー調査実施に向けた作業を着実に進めることで、来年度のできるだけ早い時期の実施を目指すことにする。 そして、歴史社会学領域では、新型コロナの影響で実現できずにいる北海道の公立小学校での資料収集調査の実施を目標の一つとしつつ、同時に、大学図書館や国会図書館などでの資料収集を継続していく。
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Research Products
(18 results)