2019 Fiscal Year Annual Research Report
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18H01191
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
吉岡 伸也 東京理科大学, 理工学部物理学科, 教授 (90324863)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ナノパイル構造 / 滑落性 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的と今年度の研究実施計画に基づき、ミンミンゼミ、アブラゼミ翅の表面において走査型電子顕微鏡と原子間力顕微鏡を用いた表面観察を行った。予備観察で得られた結果と矛盾せず、翅の上には突起構造が存在することを確認した。また、原子間力顕微鏡から得られた二次元の高さ情報を可視化し、突起の位置と高さを抽出する解析方法を構築した。これらの結果は、次に述べる機能面を定量的に評価するための材料となった。 先端が平たんな形状を持つカンチレバーを用いてセミの翅のフォースカーブ測定を行った。20 箇所において測定を行った結果、ミンミンゼミの翅の吸着力;がおよそ15 nN であることが分かった。この力は例えば甲虫のヨモギハムシが天井に接着するために必要な吸着力の1/10 程度の大きさである。したがって、セミの翅の持つ滑落性を定量的に確認することができた。この力の大ききさを物理的に説明するために、分子間力を用いた解析を行った。一方、ヨモギハムシが歩行するときには脚の先端から液体を分泌してることが確認された。これらの結果については、日本物理学会2019年秋季大会(物性)、the 8th Asian Conference on Colloid and Interface Science (Nepal, Kathmandu)において発表を行った。 また、微細構造の不規則性が光学特性に与える影響を調べるため、コロイド粒子の球状凝集体に関する研究を並行して行った。今年度は、凝集体の結晶ドメインの配向の違いが引き起こす光学現象の差について、より詳しい解析を行った。また多くの凝集体を平均化した光学特性(巨視的な色)についての角度依存性に関する研究を行い、上述の二つの学会で発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施計画通りに昆虫の微細構造の評価がすすんでいる。また機能面においても定量的に滑落性を検証することができた。また、並行して行っている不規則性な微細構造が示す光学特性に関連しても研究が進展し、学会発表を複数回行った。以上のことから、本研究全体としておおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、微細構造の観察と評価、また機能面では滑落性ついては研究を行ってきた。研究目的を達成するために、今後は撥水性の評価を開始する。微細な表面構造がある場合の撥水性に関しては、Cassie-Baxterモデルが良く知られている。しかし、実際の表面構造に適用しようとすると、たとえば水にぬれる部分の面積をどのように決定するかなど、取り扱いが難しい部分がある。今年度はさまざまな表面構造を持つ微細構造において撥水性を、接触角測定により評価し、それをCassie-Baxterモデルにより解析を試みる。その際、解析に必要なパラメータや構造の異方性の取り扱いについて、その妥当な評価方法についての研究を行う。これらの結果を蓮の葉など、既存の超撥水に関する研究報告と比較し、その結果をまとめて学会発表を行う計画である。 また前年度に引き続き原子間力顕微鏡を用いた表面構造観察を実施し、不規則な微細構造の評価、光学特性の評価を行う。
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