2020 Fiscal Year Annual Research Report
Unified high-precision calculations of nuclei and neutron stars with a massively parallelized density-functional solver
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18H01209
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中務 孝 筑波大学, 計算科学研究センター, 教授 (40333786)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
櫻井 鉄也 筑波大学, システム情報系, 教授 (60187086)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 密度汎関数理論 / 集団運動 / 原子核反応 / 原子核構造 / 中性子星 |
Outline of Annual Research Achievements |
原子核集団運動論の大きな目標の一つとして、核融合・核分裂反応がある。ここでは、原子核の形状変化の運動と分かれた原子核の重心同士の相対運動を同時に記述することが求められ、ミクロな観点からの研究では大きな困難が伴うため、これまでマクロな現象論的模型を用いた研究が中心であった。これに対して、我々はミクロな原子核密度汎関数理論に基づき、融合後(分裂前)の1つの原子核の形状変化と融合前(分裂後)の2つの原子核の相対運動を、集団運動として統一的に記述する理論手法により、マクロな集団ハミルトニアンをミクロな立場から導出することに成功した。特に、この中の集団慣性質量をミクロに導出・計算することで、これまでの現象論的モデルの問題点を解決することができた。その1つが、時間反転に対して符号を変える平均場の奇時間(time-odd)成分を自己無撞着に取り入れることで、慣性質量を過小評価する問題を解決できることを示したことである。これまでの現象論的モデルで用いられていた集団慣性質量は、クランキング公式と呼ばれる方法で評価されるのが一般的であったが、原子核励起スペクトルの実験データを再現できないため、30%ほど人工的に増加させたものを使うのが慣習化していた。我々は、同様の問題が核反応の記述においても存在することを数値的に示し、例えば2つの原子核が遠方に離れた極限においても、相対運動の質量が換算質量(reduced mass)に一致しないこと、さらに、平均場の奇時間(time-odd)成分を取り入れる我々の理論手法では一致することを示し、理論の優位性を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍によりポスドクの雇用が遅れたこと、海外の研究者との共同研究推進が滞ったこともあり、研究はやや遅れたが、2020年度予算の執行期間を2年間の延長させてもらうことで概ね対処できた(本実績報告書は2023年4月に記入している)。
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Strategy for Future Research Activity |
有限温度Hartree-Fock-Bogoliubov法の新たな進展として、グリーン関数を用いる計算手法を開発してきたが、計算コストはおおよそシステムサイズ(一粒子状態ヒルベルト空間次元)の2乗(N^2)に比例している。一方、計算物性分野で大きく発展してきているオーダーN法と呼ばれる手法があり、Nに比例した計算コストが実現できるとされ、多数の理論計算手法が提唱されている。これらの中から、我々が興味のある有限温度核物質の計算に適した方法として、特にフェルミ演算子展開法の応用の検討をスタートさせた。さまざまな観点で、上記のグリーン関数法と相補的な性質を持っており、将来有望な方法になると期待されるため、今後具体的な計算コードを開発し、この手法の有用性を確かめたいと考えている。また、さらにこれらを応用し、中性子星クラスト構造、及びそのダイナミクスの解明を目的とした数値計算を実行することを目指す。
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