2019 Fiscal Year Annual Research Report
Mechanisms of shell spiral growth: a primer for Paleo-Evo-Devo
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18H01323
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
遠藤 一佳 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (80251411)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野下 浩司 九州大学, 理学研究院, 助教 (10758494)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 貝殻形成 / バイオミネラリゼーション / 形態形成 / 軟体動物 / 貝殻基質タンパク質 / プロテオーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は以下の3つの項目の研究を主に行った。(1)L. stagnalisの貝殻基質タンパク質(SMP)遺伝子の発現非対称性を利用した貝殻形成で重要なSMPの同定、(2)Wnt促進剤を用いたWnt遺伝子の貝殻形成への関与の分析、(3)マイクロインジェクションによるL. stagnalis胚への遺伝子導入の技術開発。(1)ではL. stagnalisの外套膜を左右に分け、それぞれでSMP遺伝子の発現量に差があるものをトランスクリプトーム解析とqPCR解析により分析した。その結果、いずれの手法でも右巻系統で外套膜の右側よりも左側で有意に発現量の大きいSMP遺伝子が多いこと、すなわち貝殻形成の促進よりも抑制に働いているSMPが多いことが推察された。また、いずれの手法でも共通して左右非対称的に発現しているSMP遺伝子、すなわち貝殻形成で重要な働きを持っていると推定されるSMPを4つ同定した。そのうちの3つは外套膜の左側で高発現(2つは新規の、1つはPif-likeのSMP)で、もう1つは外套膜の右側で高発現(EGFドメインとWAPドメインをもつSMP)であった。(2)では貝殻が形成されるトロコフォア期やベリジャー期に胚をWnt促進剤で処理することにより、貝殻がらせんに巻かず、小型で傘型の貝殻を作る変異個体が生じること、またハッチした後も同様の成長を継続することが確かめられた。(3)では、様々な条件検討を繰り返し、胚にインジェクションを行うことが極めて困難であることを確認した。一方で、卵膜を除去せずに、また胚に直接インジェクションせずに、胚の周囲の囲卵腔に顕微注入することでローダミン色素が胚に取り込まれることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
貝殻形成の分子メカニズムは未だ不明な点が多い。その解明において、どのような分子、特にタンパク質が重要な役割を果たしているのかをリストアップし、実際にそのタンパク質の生体内での働きを確認するアプローチは欠かすことができない。その中で、これまでの研究で、巻貝の貝殻の左右非対称性を利用し、貝殻形成で重要だと思われるSMPを4つ(また重要である可能性の高いものを32個)同定することができた。また、機能促進剤・機能阻害剤を用いた実験により、Wntが貝殻形成に関与していることも確認した。今後これらの生体内での機能を遺伝子ノックアウト等のアプローチで確かめる必要があり、そのための基礎として、胚への遺伝子導入の技術を確立する必要があるが、その問題点と解決策も明らかにしつつある。これらの理由から本研究課題はほぼ順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
巻貝の左右非対称性を利用した貝殻形成に重要だと思われるSMPの推定の研究では、右巻系統の外套膜の左右比較だけでなく、L. stagnalisの左巻系統の外套膜におけるSMP遺伝子発現の左右比較と、L. stagnalisの右巻系統と左巻系統の貝殻プロテオームの比較を今後行う。この解析は、実験室で維持している右巻系統と左巻系統を1回交配させた後に、再度右巻系統と左巻系統をそれぞれ得ることにより、右巻系統と左巻系統のゲノムのバックグラウンドを揃えてから行う。これにより、貝殻形成に重要なSMPのリストアップをさらに進めることができると同時に、左右性の本質に迫ることもできると予想している。Wnt促進剤によって生じた変異個体についてはCTスキャンによる貝殻形態の詳細な観察を行い、理論形態モデルに照らし合わせて、どのような成長パラメーターにWntが影響しているかの解析を進める。同様の解析をdpp遺伝子の阻害剤により生じた変異個体についても行う。さらに、Wntやdppの他にも、FGFやNotch等のシグナル伝達因子についても同様の解析を進める計画である。これらの貝殻形成への関与が疑われる遺伝子産物の機能解析については、CRISPR/Cas9を用いた遺伝子編集により、遺伝子をノックアウトすることにより研究を進めたい。そのためには、いかにして遺伝子コンストラクトやRNAを胚に導入するかが鍵を握る。今後は囲卵腔への顕微注入の条件検討、ePore等の新しい遺伝子導入技術の応用等を行うことで、世界中の同業者が抱えているL. stagnalisへの遺伝子導入の問題を解決したい。
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[Presentation] Molecular Evolution of the Matrix Proteins of Shell and Dart in Terrestrial Snail Euhadra quaesita2019
Author(s)
Shimizu K, Kimura K, Isowa Y, Oshima K, Ishikawa M, Kagi H, Kito K, Hattori M, Chiba S, Endo K.
Organizer
Biomin XV, Munich, Germany. (9-13 September 2019)
Int'l Joint Research
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