2019 Fiscal Year Annual Research Report
Study on operand observation and analysis of buried interface on tribology
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18H01361
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
柳沢 雅広 早稲田大学, ナノ・ライフ創新研究機構, その他(招聘研究員) (20421224)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 美紀子 早稲田大学, ナノ・ライフ創新研究機構, 上級研究員(研究院教授) (80386739)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | トライボロジー / 埋もれた界面 / 表面増強ラマン散乱 / プラズモニクス / 時間分解測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、最も複雑な界面現象であるトライボロジーにおける摩擦、摩耗、潤滑現象が係わる動的埋もれた界面を、機械物性と化学構造の同時測定手法を開発することによりそのメカニズムを明らかにすることを目的とする。平成31年度(令和1年度)では、潤滑状態のトライボロジー界面測定の観察と解析を行った。特に極圧添加剤としてDDDS(Di-tert-dodecyl disulfide)の鉄表面での摺動時のオペランド観察を行い、偏光表面増強ラマン散乱スペクトルからS-S結合がFe表面の摺動方向に配向していることがわかった。またFeとSの反応が観察され摩擦力が反応生成物の形成と脱離に対応して変化することを明らかにした。さらにスチール上のZDTP(Zn di-alkyl thiophosphate)の摺動中の摩擦熱が最大600℃になることを発見し、それに伴いポリリン酸などのトライボフィルムが形成され同時に摩擦係数が減少することを時間分解測定によって明らかにした。また自動車エンジン用ベースオイルであるPAO(Poly-α-Olefin)もFe上ではカーボンと未知物質に分解し、ダイヤモンド状カーボン(DLC)上ではカルボキシル基が生じることがわかった。また磁気ディスクに用いられるパーフロロポリエーテル(PFPE)は摺動温度35℃であっても、DLC上で分解し(CF2)2C=Oが生じて摩擦係数が増加する。またシリコーンオイルはDLC上で摺動温度200度となり、SiO2に分解され摩擦係数が減少することがわかった。一方、無潤滑状態でのDLC膜では摺動直後にDピークとGピークの強度比が3程度と非常に大きくなり、摺動と共に通常の0.5程度に回復する。これは表面層の分解しやすい層が変化し、摺動と共に排出されることがわかった。他にも摺動時の新しい現象が次々と見つかっており、今後の解析が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は、当初の予定通りに進んでいる。初年度の第一段階で開発した計測装置をベースに新規にラマン分光法とエリプソメータを組み合わせた偏光解析装置も開発し、膜厚と化学構造の同時測定を実証した。さらに55,000rpmの超高速トライボメータを開発し従来にない機能と高速・高感度なトライボロジー測定が可能となった。超高速トライボメータでは耐摩耗性プラズモンセンサからなる摺動子の組み合わせにより、摺動材料や潤滑剤の表面・界面の変化を100msの時間分解能でアンチストークス線の観察による界面温度と化学構造の同時測定を併せてトライボ界面測定が可能となった。これらの新規開発装置を応用して、今年度は摺動時の潤滑膜のトライボロジー界面測定の観察と解析を行った。まず極圧添加剤DTDDSの鉄表面での摺動時のオペランド観察を行い、偏光表面増強ラマン散乱スペクトルからS-S結合がFe表面の摺動方向に配向していることが明らかになった。またFeとSの反応が観察され摩擦力の変動が反応生成物の形成と脱離に対応して変化することを明らかにした。さらにスチール上のZDTPにおいて摺動中の摩擦熱が最大600℃になることを発見した。それに伴いポリリン酸などのトライボフィルムが形成され同時に摩擦係数が減少することが時間分解測定によってわかった。またベースオイルについても摺動により分解が生じることが分かった。例えば、自動車用エンジンオイルのPAOはFe上ではカーボンと未知物質に分解し、DLC上ではカルボキシル基が生じる。また磁気ディスクに用いられるPFPEは摺動温度35℃であっても、DLC上で分解し(CF2)2C=Oが生じて摩擦係数が増加する。またシリコーンオイルはDLC上で摺動温度200℃となり、SiO2に分解され摩擦係数が減少することがわかった。他にも摺動時の新しい現象が次々と見つかっており、今後の解析が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当初の計画に沿って、独自の光学デバイスを用いた超高感度表面増強ラマン分光法とマルチビームラマン分光法、および他の分光法との複合機能を有する計測装置を開発し、それらを用いてナノからマイクロメートルにわたる動的界面の測定・解析を行う。具体的には、摩擦力や荷重の変動と分子構造や結晶構造の変化、温度および界面の幾何学形状を同時に観察する。さらに干渉光や偏光、表面弾性波との測定により界面形状、膜厚、密度、分子配向、粘弾性などの物理的変化も同時に測定する。なお令和2年度では表面弾性波デバイスとプラズモンセンサを組み合わせて粘弾性と化学構造を同時に測定する予定であったが、ブリュアン散乱とラマン散乱を同時測定することにより、両物性を同時・同一場所でより精密な動的測定が可能になったことから、本手法を用いてさまざまな潤滑膜のトライボケミカル反応を同時測定・解析する予定である。さらに令和3年度ではAEと併用し、ミリ秒レベルの高速測定から摩耗を含む過渡現象を捉える手法を開発する。本手法を、鋼材、ゴム、DLC(ダイヤモンド状炭素)膜、各種潤滑油・極圧添加剤など工業的に重要な材料系の摺動解析に応用する。令和4年度では開発した様々なツールを用いて、統合解析を行い極めて複雑なトライボロジー界面の現象とそれを元にした材料設計の可能性をアピールする。
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