2020 Fiscal Year Annual Research Report
Study on operand observation and analysis of buried interface on tribology
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18H01361
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
柳沢 雅広 早稲田大学, ナノ・ライフ創新研究機構, その他(招聘研究員) (20421224)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | トライボロジー / 埋もれた界面 / 表面増強ラマン散乱 / プラズモニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、最も複雑な界面現象であるトライボロジーにおける摩擦、摩耗、潤滑現象が係わる動的埋もれた界面を、機械物性と化学構造の同時測定手法を開発することによりそのメカニズムを明らかにすることを目的とする。2020年度(令和2年度)では、潤滑状態のトライボロジー界面測定の観察と解析を行った。特に極圧添加剤としてMoDTC(モリブデンチオカーバメート)の鋼材(SUJ2)表面での摺動時のオペランド観察を行い、摺動中の平均100℃のフラッシュ温度でMoS2が形成され摩擦力が下がること、摺動無しではMoO3が形成されることを開発した連続レーザーパワースキャン機構によって確認した。また摺動中の機械物性と化学構造の同時測定をブリュアン散乱(BR)/ラマン散乱(RS)ハイブリット分光法を用いて、SUJ2上の潤滑油のポリαオレフィン(PAO)の摺動中の化学構造と粘度変化を同時・同一場所で測定することに成功し、PAOが摺動により分解・重合するとともに粘度上昇が生じて摩擦係数が増加することを明らかにした。また摺動トラックの断面観察を測定し、波数マッピングからRSの引っ張り応力が見られる部分はBRの弾性率の増減が、半値幅マッピングからRSの非晶質化が進んでいる部分が大きな粘性率に対応することを明らかにした。またCMP研磨プロセスのメカニズム解明の基礎データとしてストッパ層のSiNと研磨層のSiO2のそれぞれに対するポリアクリル酸の吸着を調べ、その水溶液界面においてSiO2表面への吸着量が多いことを明らかにした。他にも摺動時の新しい現象が次々と見つかっており、今後の解析が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究は、当初の計画以上に進んでいる。初年度の第一段階で開発した計測装置をベースに新規にラマン分光法とエリプソメータを組み合わせた偏光解析装置も開発し、膜厚と化学構造の同時測定を実証した。さらに55,000rpmの超高速トライボメータを開発し従来にない機能と高速・高感度なトライボロジー測定が可能となった。超高速トライボメータでは耐摩耗性プラズモンセンサからなる摺動子の組み合わせにより、摺動材料や潤滑剤の表面・界面の変化を100msの時間分解能でアンチストークス線の観察による界面温度と化学構造の同時測定を併せてトライボ界面測定が可能となった。 またブリュアン散乱/ラマン散乱ハイブリット分光法により、弾性率や粘性などの機械物性と化学構造の同時測定が可能となった。これらの新規開発装置を応用して潤滑油およびMoDTC添加剤付加潤滑油のトライボケミカル反応を計測解析しそのメカニズムを明らかにした。さらに研磨現象のメカニズム解明にも挑戦している。他にも摺動時の新しい現象が次々と見つかっており、今後の解析が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当初の計画を超えて、トライボロジー界面現象解明のケーススタディを積み上げることにより本研究で開発した手法をより広く実証することを試みる。材料面ではCo,Ni,Feなどの金属または各種合金(鋼材やステンレス)、ゴム、DLC膜、グラフェン膜、炭化水素系潤滑油(ベースオイル、各種添加剤)、フッ素系潤滑油の耐熱性、触媒作用、トライボケミカル反応などを静的および動的測定を行い界面のメカニズムを解明することにより、統合解析を行い極めて複雑なトライボロジー界面の現象とそれを元にした材料設計の可能性をアピールする。また当初計画になかった材料試験(引張り試験)などを開発して材料破壊のメカニズムを動的埋もれた界面の観点から観察および解析し、ゴムやプラスチックなどの材料破壊のメカニズムを機械物性および化学構造の観点から明らかにすることを試みる。
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