2019 Fiscal Year Annual Research Report
Carbon storage due to aquatic plants in stratification for climate change mitigation
Project/Area Number |
18H01545
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中山 恵介 神戸大学, 工学研究科, 教授 (60271649)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢島 啓 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 教授 (10283970)
矢野 真一郎 九州大学, 工学研究院, 教授 (80274489)
駒井 克昭 北見工業大学, 工学部, 准教授 (90314731)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | CO2 / DIC / TA / stratification / global warming |
Outline of Annual Research Achievements |
研究分担者である北見工業大学の駒井准教授が協力して,2019年7月に北海道道東に位置するコムケ湖にて共同観測を実施した.アマモ密度がゼロから密(約250シュート/m2)な状態における水深1 m~1.5 mのアマモ場を対象にし,異なる葉長も考慮して水の密度の鉛直分布および上下層における採水を実施し,溶存無機炭素(DIC)およびアルカリ度(TA)を計測し,アマモ場における葉長が急激な密度変化を有する特徴的な成層構造の形成に重要な役割を果たすことが分かった.アマモ場が存在することにより上下層の水塊の交換が抑制されるため,日中はアマモの光合成により上層におけるDICが急激に減少し,コムケ湖が大きなCO2の吸収の場となっていることが分かった.つまり,アマモが存在することでCO2を吸収するだけでなく,アマモ場の影響を受けた成層場の発達により,よりCO2を吸収しやすくなっていることが示された.矢島教授が担当する宍道湖では,9月に水草が存在する領域としない領域における成層構造および採水を実施した.昨年度は宍道湖および中海を対象とした広域の観測を行っており,それらの結果と比較することで異なるスケールでの解析が可能となった.矢野教授が担当する八代海では,長崎大学の調査船を利用し8月に昨年度と同様な定点での潮汐による成層場とDICの変化に関する調査を実施した.これらの観測データを利用し,コムケ湖および八代海に関して年度末にかけて論文を投稿した.採択の可否は今年度に分かる予定である.さらに,一昨年度に実施したアマモを利用した30時間連続計測室内実験の結果を利用し,アマモによる呼吸・光合成がDICの変化に及ぼす影響を評価するための式を提案し,国際雑誌に投稿した.現在,査読中である.一方で,3次元数値計算モデル解析について,実スケールにおけるアマモをモデル化できるスーパーアマモモデルを開発中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では,亜寒帯,温帯,亜熱帯における沿岸域から湖沼までの多様な閉鎖性水域において,水生植物によるCO2の放出と吸収に関する現地計測を行い,一般化を目指して数値計算モデルを展開・拡充し,閉鎖性水域でよくみられる密度成層が作り出す特異な鉛直分布を考慮したCO2の放出・吸収機構を解明することを目的としている.亜寒帯と温帯を中心とした解析については,北海道東部に位置するコムケ湖(分担者である北見工業大学の駒井准教授が担当),宍道湖(分担者である島根大学の矢島教授が担当),八代海(分担者である九州大学の矢野教授が担当)において観測および解析を実施しており,それらの成果は国内の学術論文集へ2本投稿中である.さらに,アマモの呼吸・光合成による溶存無機炭素(DIC)の変化に関する定式化について,水温の変化も考慮して提案することができ,現在,国際雑誌へ投稿中である.一方で,亜熱帯に関しては,データの収集を中心に活動を行い,その結果をまとめて国際雑誌に投稿する計画である.亜熱帯でも亜寒帯や温帯と同じく成層構造がDICの値およびCO2フラックスに重要な影響を与えていることが分かりつつあり,それらを公表したいと考えている.3次元数値計算モデルによる解析については,アマモモデルを国際雑誌に投稿中であり,現在,revision後の査読結果待ちの状態である.アマモモデルは1本1本を忠実に再現するモデルであることから,実際の3次元場への適用には計算機容量の問題から実現可能性が低い.その問題を解決するために,数千本のアマモを1本で再現できるスーパーアマモを利用したモデル化を行っている.アマモ密度にもよるが,数10本程度であれば再現可能なスーパーアマモのモデル化には成功しており,今後,数千本単位でのモデル化を目指す.次年度において,スーパーアマモを実スケールの現象に適用し,その再現性を検討する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は,コムケ湖,宍道湖,八代海に加えて,台湾の湖であるYuan Yang Lake (YYL)およびTsui-Fong Lake (TFL)における研究を推進する予定であり,プロジェクトの目的である亜寒帯,温帯,亜熱帯におけるアマモ・水草がCO2フラックスに与える影響についての網羅的な解析が可能となる.観測については,昨年度までと同様な内容であり,継続してデータを蓄積する予定である.ただし,現在,感染症により外出等が困難な状況にあるため,夏季を中心とする現地観測については実施が不可能となる可能性が高い.そのリスクも考慮して,今年度は数値計算モデルの開発に力を注ぎたいと考えている.これまでの成果として,アマモ場を対象としたSubmerged Aquatic Vegetation (SAV) modelを開発することで,波・流れとアマモとの相互干渉問題を高精度に解くことに成功している.しかし,SAVモデルの実行において,流れ場を非静水圧で解く必要があり,計算時間が膨大にかかるという欠点が存在するため,静水圧モデルとアマモを連成し計算時間の短縮を目指す.また,SAVモデルでは詳細な再現計算を実施するために全てのアマモの葉を対象としており,計算領域が数100m程度と小さい場合には問題ないが,一般的な湖沼に対して用いる場合には計算不可が大きく解析は不可能である.これまでの研究において,数10本程度であれば1本のアマモに集約することが可能であることが分かっており,その成果を利用して,最終的には数千本のアマモを1本のアマモで再現できる“super SAV”モデルを開発する予定である.super SAVモデルの適用には,これまでに多くの現地観測を行ってきており,流動について多くの知見を有するコムケ湖を対象とし,最終的にはDICの再現性の検討まで行いたいと計画している.
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Research Products
(10 results)