2020 Fiscal Year Annual Research Report
Carbon storage due to aquatic plants in stratification for climate change mitigation
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18H01545
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中山 恵介 神戸大学, 工学研究科, 教授 (60271649)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢島 啓 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 教授 (10283970)
矢野 真一郎 九州大学, 工学研究院, 教授 (80274489)
駒井 克昭 北見工業大学, 工学部, 准教授 (90314731)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | CO2 / DIC / TA / stratification / global warming |
Outline of Annual Research Achievements |
気候変動を緩和する施策として,光合成によるCO2の吸収効果を利用するブルーカーボン研究が世界的に成されている.アマモ等の水草を対象とした研究の推進により,水域における炭素の吸収量を推定できるようになりつつある.しかし,光合成が活発化する閉鎖性水域における炭素吸収量に関しては,詳細な流動を考慮した推定が行われておらず,数倍のスケールで推定量に誤差が生じている.そこで本研究では,水生植物を利用した植生スケールの室内実験に基づいて数値計算モデルの開発を行い,波・流れと水生植物との相互干渉による複雑なCO2の輸送機構を解明する.さらに,閉鎖性水域において水生植物によるCO2の放出と吸収に関する現地計測を行い,一般化を目指して数値計算モデルを開発することを目的とする. 室内実験の結果を利用することで,本研究で開発した水草モデルを適用し,その再現性の高さを証明することができた.その成果は,2020年のWater Resources Researchに掲載された.炭素フラックスの水質環境との関係について,Science of the Total Environment(STOTEN)にも論文が掲載された.北海道道東に位置するコムケ湖での観測結果を利用することで,Ecological Modellingにアマモによる炭素吸収量の推定を提案できた.STOTENの成果を発展させた研究において,成層場と炭素フラックス,および大規模擾乱との関係を解明し,Journal of Geophysical Research - Biogeosciencesに論文が掲載された.一方で,宍道湖や八代海での研究も進んでおり,八代海での研究は2020年度の国際会議や国内の査読付き雑誌へ掲載された.今後,現場での研究成果をより発展させ,最終目的である水草と流動を連成させた実スケールでの数値モデルの構築を目指す.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では,室内実験を利用したSubmerged Aquatic Vegetation model(SAV model)の開発,現地観測による炭素フラックスの解析,および現地における成層流動場と炭素フラックスの関係を解明・モデル化することを目指している.室内実験の利用については,2020年度に国際雑誌にその成果を発表することができた.SAV modelでは,過去のモデルでは考慮できていなかった全ての作用力(抵抗力,摩擦力,弾性力,浮力)を組み込むことができており,数100本スケールの水草を考慮した世界初の流動場との連成解析を可能とした.現地観測については,北海道東部に位置するコムケ湖(分担者である北見工業大学の駒井准教授が担当),宍道湖(分担者である島根大学の矢島教授が担当),八代海(分担者である九州大学の矢野教授が担当)において観測および解析を実施しており,国際雑誌に1本,国際会議に1本,国内の全文査読付き雑誌に3本の成果を得ることができた. 主たる成果としては,成層を考慮することにより,これまでに不確かであった水中CO2分圧の詳細な鉛直分布の成り立ちを説明することが可能となったことがあげられる.亜寒帯,温帯,亜熱帯における解析を通じて,成層構造が水中CO2分圧の鉛直分布に同様な影響を与えていることもわかった.3次元数値計算モデルによる解析に関して,SAV modelの再現性について室内実験結果を利用して証明することができたことから,現場レベルへの適用を試みた.SAV modelは,1本1本を忠実に再現するモデルであることから,実際の3次元場への適用には計算機容量の問題から実現可能性が低い.そこで数100本を1本に集約できるSuper SAV modelの開発を行っている.現在,Super SAV modelをコムケ湖に適用し,その再現性の検証を行っているところである.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である令和3年度は,閉鎖性水域において水生植物によるCO2の放出と吸収を高精度に再現できる数値計算モデルを開発することを目的とする.現地観測を行っている現場は,コムケ湖,宍道湖,八代海,台湾の湖であるYuan Yang Lake (YYL)およびTsui-Fong Lake (TFL)であり,その中で最も観測データが充実しており,数値計算モデルの検証に適したコムケ湖での観測データを利用することとする.大きな問題として,SAVモデルの実行において,流れ場を非静水圧で解く必要があり,計算時間が膨大にかかるという欠点が存在する.そのため,静水圧状態を仮定した上での再現性の検討を行う.さらに,アマモは10cm間隔で繁茂しているため,1km2内に1億シュート存在することとなる.1シュートあたり平均で葉が4枚存在するため,3次元計算において数億本の葉を考慮した再現計算を行わなくてはならないこととなる.市販のPCで再現できなければ,様々なシチュエーションで利用できず汎用性に劣る.そこで1億シュートを1000本程度に集約できるSuper SAV modelを開発・適用し,その再現性を検証する. 一方で,成層流動場と炭素フラックスの関係について,これまでに多くの現地観測を行ってきた.成層することで水中CO2分圧の鉛直フラックスが抑制され,その結果,成層が発達することで水面付近での活発な光合成により急激に水中CO2分圧が減少し,炭素をより多く吸収していることがわかった.この結果は,亜寒帯,温帯,亜熱帯の全て共通しており,広範囲な気候帯で成立することがわかった.現在,感染症により外出等が困難な状況にあるため,夏季を中心とする現地観測については実施が不可能となる可能性が高い.そのため,最終年度では,これまでの観測結果をとりまとめ,本研究で開発するモデルの信頼性の裏付け資料とする計画である.
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Research Products
(16 results)
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[Journal Article] Integration of submerged aquatic vegetation motion within hydrodynamic models2020
Author(s)
K. Nakayama, Y. Nakagawa, Y. Nakanishi, T. Kuwae, K. Watanabe, H. Moki, K. Komai, K., Tada, J.W. Tsai, M.R. Hipsey
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Journal Title
Water Resources Research
Volume: 56
Pages: e2020WR027369
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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