2018 Fiscal Year Annual Research Report
河床変動モデルと斜面崩壊モデルの結合による天然ダム決壊予測手法の開発
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18H01547
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
里深 好文 立命館大学, 理工学部, 教授 (20215875)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堤 大三 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (40372552)
藤本 将光 立命館大学, 理工学部, 准教授 (60511508)
宮田 秀介 京都大学, 防災研究所, 助教 (80573378)
中谷 加奈 京都大学, 農学研究科, 助教 (80613801)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 天然ダム / 進行性崩壊 / 氷河湖の決壊 / 紀伊半島豪雨災害 / 平成30年7月豪雨 |
Outline of Annual Research Achievements |
京都大学穂高砂防観測所の観測領域内にあるヒル谷において、天然ダムの進行性崩壊に関する現地実験を行った。渓流内に高さ1m強の天然ダム模型を設置したのち、上流からの流水によりダム上流に湛水が生じる状況や提体内の地下水位の変化を計測した。ダム法尻が浸透流によって浸食され、小規模な崩壊が繰り返し発生する(進行性崩壊)状況を生じさせ、天然ダム形状の時間的変化を追跡するとともに、ダム決壊に伴って発生する洪水のハイドログラフを計測した。 ネパールの氷河湖Tsho Rolpaの決壊リスク評価のため、現地踏査をし、2019年度以降の観測(地温分布、湖面水位変動)のための、予備調査を実施した。また、モレーン決壊危険度評価のための熱伝導解析を実施することを前提として、実験室レベルでのモデル実験を行い、熱伝導解析によって再現計算を行った。 国内外の天然ダムについて情報収集や整理を行った後に、決壊時に想定される被害状況や対策について数値シミュレーションを実施した。平成30年7月豪雨により京都府福知山で発生した天然ダムは、発生箇所の勾配が緩く、決壊しても直下流の渓流内で堆積するだけで、居住地や道路までの土砂移動は起こらないことを確認した。平成23年紀伊半島豪雨災害で発生した奈良県の赤谷の天然ダムは、実際の天然ダム越流決壊時の土砂移動状況との比較から、災害事例に近いシナリオや計算条件を選定した後に、効果的な砂防施設の配置を検討した。 天然ダムの進行性崩壊に関する数理シミュレーションモデルを開発した。ダム内部の浸透流れと地表面の流れを同時に解析できるモデルと浸透流による崩壊予測発生モデルを組み合わせることにより、その計算を可能にした。計算モデルを小規模な水路実験の結果に適用したところ、良好に再現できることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
数値計算モデルの開発は順調に進んでおり、小規模な水路実験の結果を良好に再現できている。また、実渓流における天然ダムの進行性崩壊に関する実験も3回にわたって成功した。今年度以降、この実験に関して数値シミュレーションを適用することにより、さらに合理的な天然ダム決壊予測モデルを構築できる。 氷河湖の決壊に関しても、ネパールでの現地観測や実験室での熱伝導実験を実施できており、順調に進んでいると考えられる。 汎用土石流シミュレータへの組み込みも着実に進展しているので、進捗状況に問題はないと考えている。 2019年度も引き続き現地実験、数値シミュレーションモデルの開発を精力的に進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
数値計算モデルの開発においては、大規模なすべり崩壊に関するモデルをこれまで開発してきたモデルにさらに組み入れる。これを実渓流における天然ダムのすべり崩壊に関する実験結果に適用し、一層合理的な天然ダム決壊予測モデルを構築する。 氷河湖の決壊に関しては、ネパールでの現地観測を継続し、実験室でより詳細な熱伝導実験を実施する。 汎用土石流シミュレータへの組み込みもさらに進めていく。
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