2019 Fiscal Year Annual Research Report
Pioneering the new horizon of bio-production using electron utilizing bacteria
Project/Area Number |
18H01574
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Research Institution | Kure National College of Technology |
Principal Investigator |
木村 善一郎 呉工業高等専門学校, 環境都市工学分野, 准教授 (60756617)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 克治 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (40358148)
松鹿 昭則 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究グループ長 (90443225)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 内在性Cas9 / 細胞外電子獲得遺伝子 / RNA-Seq |
Outline of Annual Research Achievements |
遂行予定の研究全体像は電気を食べる微生物(電極酸化細菌)を用いたバイオリアクターで廃棄物処理・有価物生産同時プロセス(電気発酵)の構築を目指すものである。本研究の目的は電極酸化細菌を育種するために、新興ゲノム編集技術であるCRISPR/Cas9を用いて当該細菌への遺伝子導入すること及び、その導入遺伝子資源を網羅的に獲得すること、遺伝子導入による新規物質生産システムを構築することの3点である。 令和元年度は(1)電極酸化物質生産システムの効率向上、(2)分離菌株の種同定とゲノムシーケンス、(3)ゲノム編集を用いた電子資化性細菌の分子育種に取り組んだ。 (1)では現在までに確立済みの好熱性電極酸化細菌Moorella sp. Y72株による電気バイオリアクターを対象に、リアクター構成材料及び培養条件の改良に取り組んだ。また、Y72株の電子獲得効率向上によるプロセスの「量的」改善を目指し、RNA-Seqを技術基盤とする当該株の電子獲得関連遺伝子のスクリーニングにも同時に取り組んだ。(2)の取り組みでは前年度までに獲得した電気バイオリアクターの遺伝子資源としての利用可能性を有する分離株についてゲノムシーケンス及び種レベルの同定を行い、分離株の一部に新種と考えられる株が含まれることを明らかとした。(3)では前年度構築したCRISPR/Cas9によるY72株ゲノム編集システムについて、さらなる検討を行った結果Cas9タンパク質とY72株間の至適活動温度のギャップから編集効率が低下していることを明らかとした。これを受け実用に耐える代替的技法としてY72株の内在性Cas9を利用する方法を検討し、ほぼ完成に至った。Y72株の内在性Cas9を用いるゲノム編集技法は世界初となる「好熱性」CRISPR/Cas9システムであり、本科研研究への利用のみならず、他の好熱菌研究への幅広い利用が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和元年度の活動方針として掲げた項目中下記(1)(2)は概ね予定通り遂行出来た。 (1)電極酸化物質生産系の効率向上については電極材料及び印加電圧条件の検討を行い、発酵生産物である酢酸生産量の2倍弱(当該株比)向上を達成した。また分子育種によるリアクター生産物「量的」改善を目指し当該株の電子獲得関連遺伝子のスクリーニングをに取り組んだ。この内容については電極存在下において特異的に発現する遺伝子をRNA-Seqで特定することを目指しており、現在までにRNAの網羅解析のために必要な前処理条件の検討が完了した。 (2)電極酸化細菌の特異的分離。本項目では前年度までに固相電気培養装置を用いて分離した分離株のゲノムシーケンス及び種同定を完了した(論文掲載済み)。現在Y72株へと導入可能な遺伝子の検討に取り組んでいる。 一方で下記項目は当初の予定とは別方向の成果が得られているものの全体としてやや遅れている状況にある。 (3)分子育種によるエタノール生産能力強化。本項目では平成30年度に作成したCas9遺伝子導入株を用いて酢酸合成関連遺伝子の破壊に取り組む予定であったが、令和元年度の研究活動によりY72株と外来性Cas9遺伝子(中熱菌由来)間の至適活動温度のギャップによりゲノム編集効率が低下し、遺伝子破壊に利用することが困難であることが判明した。代替案としてY72株の内在性Cas9を利用することを立案し、利用可能性の検証を行った。結果としてY72株のゲノム内にCas9タンパク質をコードする遺伝子が存在すること、また当該タンパク質が認識するPAM配列を同定することにほぼ成功した。この結果は世界初となる「好熱性」CRISPR/Cas9システムの開発に直結する重要な成果と言えるが、一方で令和元年度の目標であった酢酸合成関連遺伝子の破壊に至らなかったため、区分を「やや遅れている」と総括した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である今年度は下記の項目に沿って研究を遂行する。 (1)電極酸化物質生産系の効率向上。本項目では現在までに得られている印加条件、電極材料の検討に加え、電極に形成されるバイオフィルムの肥厚化(i.e. 電流密度の増加)を目指し鉄系鉱物(e.g. アワルアイト等)との混合培養による肥厚化条件検討に取り組む。 (2)ゲノムシーケンス済み分離細菌の遺伝子資源の探索。前年度までに得られた分離株ゲノムシーケンスからY72株に導入可能な遺伝子をスクリーニングする。候補遺伝子は下記項目(3)で開発する好熱性CRISPR/Cas9システムを用いたノックインに取り組む。 (3)分子育種によるエタノール生産能力強化。Y72株の内在性Cas9タンパク質を用いて酢酸合成関連遺伝子のノックアウト、及び項目(2)でスクリーニングした外来遺伝子のノックインに取り組む。
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Research Products
(4 results)