2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of novel control technology for wastewater treatment process based on multi-omics data and machine learning
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18H01576
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
成廣 隆 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ長 (20421844)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
延 優 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (40805644)
黒田 恭平 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (50783213)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 廃水処理 / 微生物 / メタゲノム / 微生物群集構造 / 活性汚泥 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、90%以上を占める機能未知微生物群の菌叢、機能遺伝子、各種オペレーションデータ等からなる廃水処理データベースを構築して活用することで、廃水処理制御因子を発見することを目指している。今年度は、これまでに収集した汚泥試料の菌叢データやメタゲノムデータを元にした解析を実施した。その結果、実規模都市下水処理施設の活性汚泥プロセスに共通して存在する微生物群を見出した。それらのうち、粘液細菌(Myxococcota門)に近縁の微生物群が、多くの処理施設において5-25%と高頻度に検出されることが明らかとなった。そこで、ショットガンメタゲノムシークエンスデータから粘液細菌群のドラフトゲノム情報を再構築して代謝機能を解析したところ、生理活性物質であるミクソケリン、ホパノイド、ポルフィリンの前駆体であるコリスミ酸、スクアレン、アミノレブリン酸等を合成するための基幹的な代謝経路を有することを見出した。この結果は、生理活性物質を生産する機能未知な微生物群が、活性汚泥における微生物間相互作用の中心的な役割を担っていることが示唆され、活性汚泥プロセスにおける制御因子としても利用可能であると考えられた。さらに、「逐次モニタリングリアクターによる実証実験」では、食品系工業廃水を模擬した人工廃水を供給するラボスケールの嫌気性上昇流汚泥床リアクターから採取した汚泥を対象としたショットガンメタゲノム解析を実施し、アミノ酸等の分解とメタン生成に関与する機能遺伝子群についての基盤情報を取得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究計画においては、昨年度までに収集してきた活性汚泥や消化汚泥等の試料について、菌叢データの解析と、機能未知遺伝子を含むメタゲノム情報データベースを構築することを目標としていた。なお、新型コロナの影響もあり、新たな試料採取は実施しなかった。菌叢データの包括的な解析により、粘液細菌群が活性汚泥試料に共通して存在していることを見出した。菌叢データの統計学的解析の結果、廃水中に含まれるアンモニアの除去を担うNitrosomonas属細菌と粘液細菌との間に強い正の相関関係があり、粘液細菌由来の未知物質がアンモニア酸化菌の増殖を促進する作用を有していることや、アンモニア酸化菌以外の多種多様な菌との相関関係もあるためプロセス全体の処理効率を維持する役割を担っていること等が示唆された。さらに、活性汚泥メタゲノム情報から23種の粘液細菌群のドラフトゲノムを回収し、それらの代謝機能解析により、生理活性物質であるミクソケリン、ホパノイド、ポルフィリンの前駆体であるコリスミ酸、スクアレン、アミノレブリン酸等を合成するための基幹的な代謝経路を有することを見出し、活性汚泥に生息する未知の粘液細菌群が、既知の有用物質前駆体を骨格とする新しい生理活性物質を産生する能力を有することが示唆されている。さらに、「逐次モニタリングリアクターによる実証実験」では、食品系工業廃水を模擬した人工廃水を供給するラボスケールの嫌気性上昇流汚泥床リアクターから採取した汚泥を対象としたショットガンメタゲノム解析を実施し、20種以上の嫌気性微生物のドラフトゲノム情報を取得した。それらのゲノム情報に基づき代謝機能解析を実施したところ、アミノ酸等の有機物の分解、エネルギー生成、メタン生成に関与する酵素群をコードする機能遺伝子群を見出し、それらの基盤情報を取得した。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、本課題の目標である、「微生物機能に基づいた廃水処理の制御因子」を特定することを目指し、可能な範囲でこれまでに採取した汚泥サンプルのうち代表的なものについてショットガンメタゲノムシークエンスを実施し、機能未知遺伝子を含むメタゲノム情報データベースを拡充する。それと並行して、「逐次モニタリングリアクターによる実証実験」においては、分担者である黒田恭平研究員が2020年度から研究代表者の所属機関(産業技術総合研究所)に異動し、実験に必要な設備(安全キャビネットならびに遠心機等)を整えてリアクターの再立ち上げを実施し、安定運転に達した。来年度は引き続き連続処理実験を継続して、オペレーションデータと微生物群集構造データを蓄積する。最終的には、実規模プロセスとラボスケールプロセスの両方の試験研究から得られた菌叢データ、代謝機能データ、水質データを統合したデータサイエンス的解析を実施し、生物学的廃水処理において重要な役割を担う微生物群を特定し、それらの鍵微生物が有する代謝機能を解明することで、安定的な運転を可能にするためにどのようなパラメータをモニタリングすればよいかを見極め、微生物機能に基づく廃水処理制御技術の創出を目指す。
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