2018 Fiscal Year Annual Research Report
推力密度の飛躍的な増加と冗長系の確保が可能な超小型エレクトロスプレー宇宙推進機
Project/Area Number |
18H01623
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
鷹尾 祥典 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (80552661)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土屋 智由 京都大学, 工学研究科, 准教授 (60378792)
長尾 昌善 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究グループ長 (80357607)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 電気推進 / 電界放出 / イオン液体 / 超小型衛星 / 高密度 |
Outline of Annual Research Achievements |
10 kg級以下の超小型衛星にも搭載可能な超小型エレクトロスプレー宇宙推進機は推進効率が高いものの推力密度がかなり低い問題を抱えている。本研究では従来のMEMS(Micro Electro Mechanical System)プロセスに加えて、電界放出電子源(FEA: Field Emitter Array)の作製プロセスも利用することで、これまでより4桁程度電極実装密度の高いイオン源を作製し推力密度の飛躍的な増加を目指す。 2018年度は、FEAのベースとなるSi基板側を深堀エッチングおよび酸により除去し、FEAで電子を引き出す第1ゲート電極をイオン源の新エミッタ電極に、第2ゲート電極を引き出し電極に変更するプロセスを構築した。この結果、5μm間隔(従来は数100μm間隔)で並ぶイオン引き出しアレイ電極とともに推進剤となるイオン液体が裏面から供給可能な構造が実現できた。また、スケールが小さくなる都合、別途加速電極が必要となるため、MEMSプロセスを利用した加速電極作製プロセスも構築した。予備実験として加速電極が無いイオン源においてイオン引き出し実験を行ったところ、従来比で数倍の電流密度を達成できた。加速電極を実装すれば1桁以上の推力密度上昇が得られる見込みである。 上記に加え、イオン液体からどのようにイオンが抽出されるかを把握することはイオンビーム軌道制御の観点から重要であるが、nmスケールで生じている現象を真空中で実験的に把握することは困難なため、原子分子レベルの現象把握が可能な分子動力学計算を用いたイオン抽出過程の解析を行った。エミッタ先端にあるイオン液体に電場が印加された状況を解析した結果、引き出される分子は単量体が支配的であり、引き出し時の運動エネルギーは約0.8 eV、引き出し半頂角は20度以下となることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べた通り、FEAプロセスによる超高密度イオン源作製のプロセス技術構築、MEMSプロセスによる加速電極作製のプロセス技術構築、分子動力学シミュレーションによるイオン抽出過程の解析ができているため。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は以下の方法により研究を遂行する。 ①MEMS/FEAプロセスを利用したイオン源の作製手法改良および確立: イオン抽出特性の改善を目指すため、前年度に確立した電極構造から作製手法の改良ならびにその技術の確立を行う。具体的な改良として、FEAのベースとなるSi基板側を除去する際に、前年度はSi基板と一緒に除去していたNiコーン電極を残す構造にする。この結果、FEAにおいて電子を引き出す機構を担っていた第1ゲート電極と電子を放出するNiコーンとの間に非常に狭い流路ができる。流路を狭くすることでイオン液体が通過する抵抗を上げ、イオン液体の漏れを防ぐとともに、イオン単体で引き出しやすくする。 ②引き出し電流特性評価およびTOF測定: 作製した素子は本学の実験室にてファラデーカップによるイオン電流測定、飛行時間差から質量電荷比を求めるTOF(Time of Flight)測定によりビーム特性評価を行う。液滴状態で引き出されると推進効率が大幅に下がるため液滴ではなくイオン単体として引き出し可能な機構(PIR: Purely Ionic Regime)の実現が可能な条件を探る。
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Research Products
(8 results)