2018 Fiscal Year Annual Research Report
日本における竜巻発生環境の再評価に基づいた竜巻発生予測の高精度化
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18H01682
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
佐々 浩司 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 教授 (50263968)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野田 稔 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 教授 (30283972)
本田 理恵 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 教授 (80253334)
宮城 弘守 宮崎大学, 工学部, 助教 (90219741)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 竜巻 / レーダー解析 / 室内実験 / 画像解析 / ナウキャスト |
Outline of Annual Research Achievements |
レーダー解析については、新たに高知県内で発生した突風事例6例を解析し、うち一つはダウンバーストなど発散性の突風であることを示した。その他の5事例はノンスーパーセル竜巻ながら明瞭なフックエコーを捉えることに成功した。これらの事例のうち高知市長浜地区に上陸してJEF1の被害をもたらしたものについては、被害調査だけでなく画像解析も行なっており、画像から推定される強さとレーダーエコーに示された渦径などとの対応関係を明らかにした。 気象庁レーダーを用いた全国の渦分布については、2013年1年間の全国レーダーデータを解析し、日本海側、太平洋側、南西諸島の3地域で季節変化傾向がわかれることを明らかにした。最も渦が発生しやすいのは9~11月であったが、日本海側は12月~2月の冬場が最も発生数が多いことを明らかにした。日変化については午後に認知数のピークが見られる気象庁竜巻等突風データベースとは異なり、顕著な傾向が見られないことを明らかにした。渦の平均直径は3.8km、速度差は34m/sであり、大半が極めて寿命の短いノンスーパーセルタイプであることを明らかにした。検出数約40000個のうち、寿命が1時間を超える事例は1年間で60程度であった。レーダーからの距離依存性が検出数に認められたことや、まだ誤検出と思われる事例も多いことから、エコートラッキングと組み合わせた解析が必要であることも確認した。 室内実験においては、前年度までの研究で存在が認められていた、ノンスーパーセル竜巻形成過程における下層の下降気流領域の原因を明らかにするため、水平断面と鉛直断面の同時観測を行い、冷気外出流外縁の傾圧効果による水平渦が竜巻状渦に巻きついていく際に、竜巻状渦近傍で下降気流を示すことなどを明らかにした。 機械学習による画像解析については教師画像の作成追加により検出精度を高めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高知県内の観測事例については、年間で最大の6事例の検出に成功し、渦周辺の降水システムの形態についても分類が可能となるようなデータが蓄積されてきた。また、気象庁全国レーダーを用いた解析においても1年間の気候学的特性を把握できるデータが整備され、研究所年度において今後の解析に重要なデータを予想以上に多く収集することに成功した。一方、年度始めに朝倉レーダーが故障したことにより、修理を本研究費より捻出する必要が生じ、実験に使用予定であったレーダー光源の追加購入を断念した。このため、実験の進行が危ぶまれ、初年度にスーパーセル再現実験を実施することは断念した。しかしながら、ノンスーパーセル竜巻再現実験については、既存のレーザー光源を用いることで竜巻形成過程を詳細に捉えることができ、予想以上の解析結果を得ることができた。 画像解析については当初の計画通り、機械学習による自動検出の精度を高めることに成功するとともに、郷土の推定なども事例解析を進めることができた。 これらを総合した結果、研修計画全体としてはおおむね順調に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
高知県内に展開したレーダーネットワークを用いて常時観測を継続し、事例が発生した場合は、被害調査も含めた詳細な解析を行う。また、これまで検出されてきた事例について再整理を行い、スーパーセルタイプとノンスーパーセルタイプの構造やスケールの違いを明らかにする。 気象庁全国レーダーの解析については、エコートラッキングを含めた解析とし、誤検出をより削減するとともに、降水システムの形態との対応関係も含めた統計的解析を行い、竜巻等突風データベースとの気候学的特性の違いを明らかにする。 室内実験においては、新たなスーパーセル模擬装置を作成し、リアフランクダウンドラフトを模擬した冷気下降流の貫入によってメソサイクロン下でどのように竜巻状渦が形成されていくのかを明らかにする。また、ノンスーパーセル竜巻についても並行して実験を進め、渦形成過程の気流構造を3次元的に計測する。 画像解析については、機械学習による自動検出の精度をさらに高め、他の動画事例についても検出精度を検証するとともに、規模や強度などを判定できる要素の盛り込みを検討する。
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Research Products
(10 results)