2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18H01832
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
宮田 耕充 首都大学東京, 理学研究科, 准教授 (80547555)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 原子細線 / 遷移金属ダイカルコゲナイド / 原子層物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、これまで開発してきた合成法の条件検討を進め、原子細線の作製と評価を進めてきた。具体的には、有機金属原料を用いた化学気相成長(MOCVD)装置を利用して、単層二硫化タングステン(WSe2)等の遷移金属ダイカルコゲナイドの原子細線の合成を行った。所有する合成装置では、原料として液体の有機金属と有機カルコゲン原料を利用し、窒素バブリングにより600℃程度に加熱した基板上に原料の蒸気を輸送できる。例えば、W原料とSe原料の熱分解を通じて、単層のWSe2単結晶をシリコン基板上に成長させ、途中でW原料の代わりにMo原料を導入することでMoSe2の成長に切り替えることが可能である。二段階目の成長時間を変えることで、結晶の端から成長する細線の幅の制御を試みた。この時、最初の単結晶の端の直線性を反映して、原子細線の端(界面)構造が決まる。初年度は、このような端の直線性の向上と細線幅の制御を目指して、合成条件の最適化を進めてきた。検討してきた条件としては、合成温度、各原料のバブリングレート、全体の流量、圧力、基板の温度、成長補助剤の種類・量、配管の加熱温度、などが挙げられる。作製した試料は、光学顕微鏡による観察や発光・ラマン分光イメージングにより結晶形状を評価した。また、共同研究を通じて電子顕微鏡を利用した原子レベルでの構造観察を進めてきた。これらの合成と評価の研究より、10nm幅程度の一次元的に長尺な構造を持つ単層TMDCの合成に成功してきた。一方で、原子レベルでは、合成の順番に依存して界面構造のラフネスが異なる点や、残留原料による異種元素混入などの様子が観察されている。今後は、原料の切り替え時間や、配管加熱、真空排気等を利用することでこれらの課題解決を目指し、また作製した細線の電子構造について顕微発光分光等を利用して評価していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画のおける、化学気相成長における原子細線の成長に関して、順調に実験が進んでいる。特に、成長条件の検討を通じて、10nm程度の幅の原子細線が成長することが確認できてきた。また、作製した試料について、電子顕微鏡を利用した原子レベルでの構造解析も進めることができた。界面構造のラフネスや不純物元素の混入などの課題も明らかになってきている。以上より、計画はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、引き続き合成条件を改善し原子細線の高品質化と原子細線の物性評価を進める。特に、本年度の研究で明らかになった、界面構造のラフネスや不純物元素の混入などの課題の改善に向け、原料の切り替え時間や、配管加熱、真空排気等のプロセスを検討していく。作製した試料は、電子顕微鏡や走査プローブ顕微鏡の専門家との共同研究を通じ、原子レベルでの構造解析も平行して進める。また、作製した細線の電子構造や励起子の閉じ込め効果などに着目し、顕微発光分光を中心とした物性評価を進めていく。
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Research Products
(16 results)