2018 Fiscal Year Annual Research Report
Study on corundum-structured ultra-wide band gap oxides with p-type conductivity
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18H01870
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
金子 健太郎 京都大学, 工学研究科, 講師 (50643061)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | p型酸化物 / 超ワイドギャップ / 酸化イリジウム / コランダム / ミストCVD / 酸化ガリウム / 新規半導体 / 混晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、申請者が世界で初めて薄膜の作製に成功した新しいp型伝導を示す半導体、酸化イリジウム(α-Ir2O3)の未知の物性の解明と、酸化イリジウムを基にする新しいp型酸化物の混晶を作製して、これまで実現出来なかった大きなバンドギャップ(超ワイドギャップ)をもつp型酸化物を用いたバイポーラデバイスの作製を行い、SiCやGaNを凌駕する低消費電力でクリーンな電子デバイスの実現を目指し、超低消費電力社会の実現に貢献する事を目的とする。 これまでの研究では酸化イリジウムの作製は非常に難しく、また結晶の成長条件も大変シビアであり、きれいな薄膜を安定的に成長させる事は困難であった。しかし、今年度の本研究では、酸化イリジウム薄膜の安定的な成長は概ね達成する事は出来た。これは、結晶構造が同じで、結晶の格子長もほとんど同じである酸化ガリウムをバッファー層に用いる事で酸化ガリウムを安定的に成長させ、表面平坦性を大きく向上させる事で、従来の課題であった低い表面平坦性を克服する事が出来た。これはH30年度に本研究で購入した新型ミストCVD装置により安定的な結晶成長環境を得る事が出来た事が、大きな役割を果たしている。きれいな結晶を作る技術は電子デバイスを作製するうえで必須の技術であり、本成果は超ワイドギャップのバイポーラデバイス実現に向けた大きな一歩である。一方で、酸化イリジウムは依然として3次元成長をメインとした粒成長をしており、改善は必須であり、この粒成長を抑制し、きれいな2次元成長を促して膜質を向上させる事が今後の研究における大きな課題となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のように、作製が困難であった酸化イリジウムの膜質改善の方法として酸化ガリウムバッファー層を導入する事で、その改善を達成できた。これまでの酸化ガリウム薄膜と比較しても、走査型電子顕微鏡による観察では膜表面に異常粒等の構造物が確認されず。薄膜の表明平坦性は劇的に改善された。しかしながら、透過型電子顕微鏡による断面図の観察では、3次元成長に由来する構造が確認された。この3次元構造は酸化イリジウムの正孔移動度の低下やバイポーラデバイスにおけるリーク電流増加や耐圧の低下につながる可能性があるため、発生を抑制する必要がある。そのためには成長条件を工夫して、薄膜の成長モードを3次元から2次元に変化させ、結晶が横方向にも大きく成長させる必要がある。これらの点から、研究計画上概ね順調ではあるが、まだ解決しなければいけない課題がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究として、上述のように酸化イリジウム薄膜の成長モードを3次元から2次元に変化させ、結晶が横方向にも大きく成長させる必要がある。そのためには、新しい前駆体溶液の探索や溶液の溶解度の改善等、化学的視点から研究を推進する必要がある。これまでは物理的な薄膜成長の観点から膜質の向上を目指してきたが、溶液や前駆体等の化学反応まで考察し、結晶成長の改善を行う。また、膜質の向上が達せられた後は混晶の作製によりバンドギャップの変調を行い、超ワイドギャップのバイポーラデバイス実現に向けて推進する所存である。
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