2018 Fiscal Year Annual Research Report
Spectroscopic investigation for optical generation/control of surface spincurrent
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18H01875
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
荒船 竜一 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 主任研究員 (50360483)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高木 紀明 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (50252416)
石田 浩 日本大学, 文理学部, 教授 (60184537)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | スピン軌道相互作用 / 非占有順位 / モアレ構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
スピンの流れ-スピン流-はスピントロニクスが生み出した最も興味深い概念の一つである。さまざまなスピン流生成方法があるが、光励起によるスピン流の生成・制御は非磁性物質のみでスピン流デバイスを構成できるという特徴や、高速応答性が達成出来ることから特に魅力的な方法である。そのため「オプト・スピントロニクス」[4]はスピントロニクスの中でも重要なブランチの一つである。光励起スピン流の理解を進めるためにはスピン偏極バンド構造、占有・非占有準位間の光吸収断面積、励起電子の緩和ダイナミクスを知る必要がある。この3つの必須情報を調べる上で角度分解二光子光電子分光は、最も適した分光法である。 グラフェンで修飾したIr(111)表面に高エネルギー分解能二光子光電子分光を適用し、表面光励起スピン流の分光学評価を行った。占有順位にあるスピン分裂表面共鳴状態のバンドを利用して、スピン偏極電子を励起し、光励起による純スピン流生成が可能であることを分光学的に示した。また(楕)円偏光励起による、スピン偏極光電流の生成も実証した。スピン偏極度は励起(楕)円偏光の楕円率を変えることで制御可能であることを示した。 加えて鏡像電荷バンドにエネルギーギャップを観測した。これはグラフェンとIr(111)表面の格子定数のわずかな違いに由来するモアレ構造に由来するものである。これを確認するためにエンベッディド・グリーン関数法を用いた半無限系における電子状態計算を行った。計算されたエネルギーギャップはおよそ25meVであり、実験結果と一致した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電子エネルギーアナライザーの故障などいくつかのトラブルに見舞われたが、100fs励起レーザーシステムの設計や構築など、平成31年度の研究につながる設備の構築等も行っており、おおむね計画通りに進捗していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
モアレ構造の影響を評価するために、グラフェンとは異なる格子定数をもつハニカムに時限物質であるh-BNをIr(111)表面上に展開して、鏡像電荷バンドのスピン分裂の大きさの変化を調べる。 測定システムの改良、新規測定システムの構築を行う。具体的にはオプト・スピンカレントの実時間ダイナミクスを評価するために、100 fs のパルス幅となるTi;Sapphireレーザーシステムを構築する。高いエネルギーのエネルギー状態、または高い仕事関数を持つ試料表面に対して測定を行えるよう、従来のω-3ωのレーザーシステムではなく、2ω-4ωの組み合わせで測定を行えるるシステムの設計を行う。 理論面ではエムベディッドGreen関数法計算プログラムの並列化をすすめ、これまで不可能であったモアレ構造を含んだシステムで非占有順位のスピン軌道分裂を計算する。
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