2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of EMS Rheology Microscope
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18H01881
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
酒井 啓司 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (00215584)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | レオロジー / 粘弾性 / 電磁駆動式 / 遠隔測定 / 非接触測定 / 局所粘弾性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではソフトマテリアルの粘弾性測定の空間分解能をマイクロメートル域にまで向上させ、かつその分布を2次元的にとらえることができるレオロジー顕微鏡を作製する。このシステムでは独自に開発した電磁駆動回転方式の粘弾性測定手法を微小回転プローブに適用することにより空間分解能をこれまでに比して飛躍的に向上させる。この手法は試料中に配置した球状のプローブに遠隔にトルクを印加し、これに対する運動から非接触で粘性を決定できるという他の力学物性測定装置にはない特徴を有している。この技術と顕微画像解析手法とを組み合わせてソフトマテリアル内部の複数の微小プローブの運動を観察し、レオロジー的な性質の分布を画像として取得する。最終的には安価で簡便な汎用レオロジー観察装置として市場に供給することを目標とする。本年度は実際に粘性が経時変化する試料について、粘性変化を長時間にわたって連続モニタリングすることを試みた。例えば液体中に収容された固体状の物質が溶解することにより溶液の濃度が大きくなっていく場合などでは、容器の底部に接触した回転子にはその接触部に溶質が析出することにより滑らかな回転を阻害する恐れがある。このため回転子を浮力により試料内に浮上させ、溶液中に回転子と容器の接点を持たない新しい形状の回転子を開発した。この回転子により、ショ糖が水に溶解してゆく様子をモニタリングし、20日間にわたってショ糖濃度の増加により徐々に粘性が増加してゆく様子を連続して観察することに成功した。さらにこれまでは画像から読み取っていたプローブの回転を、磁場変化から読み取る新しい技術の開発に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画についてはおおむね順調に進行しており、さらに以下に記すような計画以上の成果を達成することができた。すなわち本研究では局所的な粘弾性を画像としてとらえることを目的とするが、さらに様々な工業プロセスで進行する粘弾性の経時変化測定への拡張が求められる。このような現象は圧力や温度を制御した 密閉環境下で現れることが多く、このため試料のサンプリングにより外気に触れる測定を避ける必要がある。本年度の研究では、プローブの回転をその中に装着した微小な磁石による磁場変動からとらえることに成功した。これにより不透明な試料、あるいは金属など光を透過しない材質で構成された試料セル内部でも本方式による粘性測定が可能になった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では当初の予定通り実際に粘弾性の分布が予想される試料について、レオロジー的な性質の長時間時間経過の観察を行い、作製した測定システムの性能を検証する。また本研究を進める中で、粘弾性のみなら ずレオロジー的性質が異なる複数の相間の界面エネルギーの測定を可能にする着想を得、これを発展させて分子混合系などで重要な役割を果たす不溶系ポリマーブレンドにおける微視的界面張力測定をさらに進めていく予定である。
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