2019 Fiscal Year Annual Research Report
Modeling tolerance to irradiation embrittlement of reduced activation ODS steels by quantitative specification of nano-mezo structures
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18H01915
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木村 晃彦 京都大学, エネルギー理工学研究所, 教授 (90195355)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 先進鉄鋼材料 / 酸化物分散強化鋼 / 中性子照射 / イオン照射 / 照射硬化 / 転位ループ / 溶接部 / 事故耐性燃料被覆管 |
Outline of Annual Research Achievements |
原子力用酸化物分散強化鋼の耐照射性支配因子の探索研究を継続し、中性子照射材およびイオン照射材の照射硬化挙動及び照射による微細組織変化を調べた。得られた成果を以下に列記する。 1.中性子照射材:事故耐性燃料被覆管として開発された酸化物分散強化フェライト鋼(Fe-12Cr-6Al-ODS鋼)の母材及び電子ビーム(EB)溶接処理材に中性子照射(照射温度290℃、照射量約3dpa)を実施し、照射硬化測定および照射損傷組織観察を行い、以下の結論を得た。 1)EB溶接線導入部と母材部を比較すると、照射硬化量はEB溶接処理材が母材に比べ、約1.5倍大きくなった。2)TEM組織観察により、照射によって形成された転位ループは、溶接線導入部においては母材部に比べ、ややサイズが大きく、数密度が高くなることが判った。3)オロワン型硬化量を評価した結果、溶接線導入部では母材に比べ、約1.37倍硬化量が高くなることが示された。この評価値は実際に測定した硬化量(1.5倍)に近い値であった。 2.イオン照射材:EB溶接処理部を持つクーポン上のODS試料に対し、6.4 MeV Fe3+ イオンを300°Cにおいて2.6,7.9,13.0 dpaまで照射し、照射硬化の照射量依存性を調べ、以下の結論が得られた。 1)酸化物粒子はいずれの照射量においても安定であり、サイズおよび数密度に変化は認められなかった。2)照射により形成された転位ループは、a0/2<111>およびa0<100>の二種類であり、照射量の増大に伴い、サイズが大きくなる傾向を示した。数密度はEB溶接処理材で大きくなった。3)照射硬化量は、母材に比べEB溶接処理材で大きくなった。4)中性子照射材とイオン照射材を比較した場合,照射硬化量および微細組織変化は類似する事が判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、耐照射性に優れた酸化物分散強化鋼の耐照射性支配因子を明らかにし、微細組織に基づいて耐照射性を定量的に表すための指標を得ることを目的としている。これまでの研究から、耐照射性の評価においては照射脆化,照射硬化,スウェリング挙動などが照射影響として研究されているが、それらのマクロ的現象を引き起こすミクロ的あるいはナノスケーの損傷組織変化の詳細が不明であることから、本研究では対象となるODS鋼に対し照射を実施し、照射による微細組織変化を調査してきた。2019年度は、中性子照射材およびイオン照射材に対し、その照射による微細組織変化を予定通り進めることができた。 照射硬化を調べた結果,照射硬化量が照射によって形成された転位ループの数密度及びサイズに依存することを明らかにした。照射によって形成された転位ループのキャラクタライゼーションも終了している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに得られた照射影響に関するデータをまとめ、照射硬化量と密接に関連する因子を決定する。さらに、その定量評価法について検討し、照射硬化を抑制するための材料組織学的因子を特定する。その検証のため、さらに中性子照射材及びイオン照射材について照射影響評価実験を行う。 次に、その検討結果に基づき、より耐照射性に優れたODS鋼の成分調整および製造プロセスを検討し、その検証のため、候補となるODS鋼を作製し、その耐照射性を確認する。 最後に、以下の各因子について耐照射性への寄与の程度をまとめる。 1)転位ループのサイズ(d)および数密度(N),指標:(d*N) 2)空孔集合体のサイズ(d)および数密度(N),指標:(d*N) 3)酸化物粒子の分散形態変化 4)酸化物分散強化鋼の平均結晶粒径 5)Cr濃度 6)Al濃度
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