2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of technology to search for novel antibody targets by proteomics specialized on the surface of circulating tumor cells
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18H02004
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
井上 豪 大阪大学, 薬学研究科, 教授 (20263204)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鎌田 春彦 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 創薬デザイン研究センター, プロジェクトリーダー (00324509)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | プロテオミクス / 癌 / 血管内皮 / ビオチン化ラベル / 抗体標的探索 |
Outline of Annual Research Achievements |
抗体は分子量の問題から細胞内部には直接侵入できない。従って、抗体の開発には疾患組織の細胞表面に存在する膜表在性蛋白質を高精度に分析する技術の開発が必須である。また、がん細胞周辺組織である新生血管はがん細胞の成長に必須であり、血管内皮細胞に特異的に発現する膜蛋白質や細胞増殖の足場として不可欠な細胞外マトリクス(ECM)を構成するECM構成蛋白質などを標的にした抗体は固形癌を組織ごと死滅することができる可能性を秘めており、癌組織等の血管内皮に存在する蛋白質を高精度に分析する技術の開発が望まれている。 これまでに、難治性がんの治療を目的に、がんの間質組織に特異的に発現する分子の新規ラベル化法を確立し、新規創薬標的に対するバイオ医薬品の開発に貢献することを目的として、非天然型ビオチン (IMNBTN)の誘導体を用いてラベル化し、特異的に発現する膜蛋白質や細胞外マトリクスを構成する蛋白質を改変型ストレプトアビジンストレプトアビジン (MTSA)を担持したビーズで精製するシステムの構築を行ってきた。 そこで本申請研究では、本系を用いて野生型およびA20を播種した担癌マウスの両方で、血管からビオチン化ラベルの試薬を還流させ、血管内皮の蛋白質を精製し、プロテオミクス解析を行い、両者を比較することによって癌の新生血管の内皮細胞の表面に特異的に発現している抗体の標的蛋白質を探索することを目的とした。 2019年度までに得られたデータでは、この手法で得られたタンパク質の中にはビーズへの非特異的吸着によって得られたものが含まれ、ラベル化タンパク質の回収率が低いという問題があることが判明し、膜画分抽出手法(Crude Membrane Fraction CMF法)とラベル化プロテオミクス解析法(BisBTN法)の技術を融合し、ラベル化された膜タンパク質の割合を増大させることを試み大きく改善できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、疾患モデル動物の病態組織血管に発現する分子をラベル化し、創薬標的として有用なタンパク質の同定をプロテオーム解析によって行うことを目的としている。具体的には、疾患マウスの血管に直接ラベル化試薬(非天然型ビオチン化試薬)を導入し、全身の血管・間質組織に発現するタンパク質をラベル化し、非天然型ビオチンのみに結合する改変型ストレプトアビジンを担持したビーズを用いて精製した後に、プロテオーム解析を行う。 2019年度までに得られたデータでは、この手法で得られたタンパク質の中にはビーズへの非特異的吸着によって得られたものが含まれ、ラベル化タンパク質の回収率が低いという問題があることが判明し、膜画分抽出手法(Crude Membrane Fraction CMF法)とラベル化プロテオミクス解析法(BisBTN法)の技術を融合し、ラベル化された膜タンパク質の割合を増大させることを試みた。 得られたタンパク質全体の同定された膜タンパク質の割合は、肝臓・腎臓・脳いずれも大幅に改善され、従来法ではそれぞれ約8%、11%、10%であったものが、約50%、48%、23%程度まで向上した。この傾向は得られた膜タンパク質の種類数についても同様であった。肝臓を中心に詳しい解析を行ったところ、同定タンパク質の種類はいずれも約1000種類で変化がなかったが、膜蛋白質の種類は従来法では333種類であったのに対し、cmf法を加えた方法では536種類も同定された。cmf法でのみ発見された223種類のタンパク質のうち51種類は個体差に関係なく同定され、Transmembrane serine protease 6など肝臓特異的なタンパク質やvasoactive intestinal polypeptide receptor 1など血管新生に関わるタンパク質なども発見できた。
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Strategy for Future Research Activity |
健常マウスの心臓内にラベル化試薬を投与し、血管を通じて全身の組織に試薬を還流することで血管内皮細胞の表面タンパク質をラベル化し、肝臓・腎臓・脳のそれぞれでラベル化されたタンパク質の精製を試みた。各組織についてホモジナイザーを用いて懸濁し、得られた溶液サンプルを改変型ストレプトアビジンを担持したビーズで回収する前に超遠心による分離を行い、膜画分を回収してから精製するという方法(cmf法)を行うことで、精製される膜タンパク質の量や質(種類)に大幅な改善が見られた。そこで、今後はcmf法を加えた方法を用い、疾患マウスと健常マウスの比較解析を行うことによって、標的蛋白質の同定を行う予定である。
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