2019 Fiscal Year Annual Research Report
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18H02042
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
玉置 信之 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (00344218)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 分子機械 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに合成に成功した非加水分解性AzoTP誘導体を用いて、キネシン-1/微小管系、およびミオシンII/アクチン系について繰り返し光異性化反応による運動の誘起または運動特性への影響を調べた。その結果、非加水分解性AzoTP誘導体のみを添加して、光照射してもモータータンパク質を駆動しないことがわかった。合成した化合物は、シス体からトランス体への異性化反応が光化学的に起こり、非効率であることが考えられるためそれを解決するためにアミノ基を含有する非加水分解性AzoTPを合成した。合成した化合物のシス体は、ミリ秒以下の時間スケールで熱的にトランス体に戻ること、また、トランス体でモータータンパク質と相互作用してATP存在下で阻害剤として働くことを確認した。今後は、これらの化合物を使った光駆動を確認する予定である。一方で、別のモータータンパク質で抗がん剤のターゲットとしても注目されているキネシン-7(CENP-E)に対して働く光応答性化合物の合成を行った。合成した化合物は、CENP-Eに対する有効な光応答性阻害剤であることが、ATP加水分解アッセイおよび細胞周期の観察より判明した。すなわち、可視光照射後の状態であるトランス体では染色体の赤道面への配列を阻止し、紫外光照射後の状態であるシス体では染色体の配列を許す働きがあり、これらの状態間を光で繰り返し制御可能であることを明らかにした。本光応答性阻害剤は、細胞内でのCENP-Eの働きを高い時空間分解能で調べることを可能とし、また、部位選択的にがん細胞の増殖を抑える新規抗がん剤開発のきっかけになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画した化合物の合成に成功し、完全ではないものの当初想定した特性を得ることに成功している。さらに、これまで光制御が全く試みられてこなかったモータータンパク質CENP-Eに対して働く光応答性阻害剤を新たに開発し、モータータンパク質の光制御という分野に大きな進展をもたらした。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度合成したシス体の寿命が短い非加水分解性AzoTP誘導体を用いて、可視光誘起によるモータータンパク質の駆動の可能性を調べる。さらに、これらの化合物を用いてクラミドモナスのようなダイニンを分子モーターとして活動する微生物の光運動制御を試みる。
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Research Products
(2 results)