2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18H02078
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
韓 礼元 国立研究開発法人物質・材料研究機構, エネルギー・環境材料研究拠点, NIMS招聘研究員 (20531172)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ペロブスカイト太陽電池 / 計測 / イオン移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高効率を示したヘテロ接合構造ペロブスカイト太陽電池を中心に、材料物性およびヘテロ接合に関して、種々の測定法を用いて、ペロブスカイト太陽電池を構成する要素の理解・解明を行い、デバイスの高性能化を狙う。 本年度では、ペロブスカイト太陽電池を不活性雰囲気にて光を試料上方から照射し測定を行った。p-n接合の空間認識を行うために、「暗状態」および「光照射下」において電位計測を行う。暗状態と光照射下の電位曲線の差分を取った。この差分曲線から、光照射による電位変化がどの位置で生じるかを調べた。逆型ペロブスカイト太陽電池を測定した。正式太陽電池と異なり、ペロブスカイト層の両側に電位の変換が認められた。p-i-n接合ではないことが分かった。ついで、色素分子によるペロブスカイト膜の処理効果をX線光電子分光法(XPS)でPb元素の原子価状態を解析した。ペロブスカイト膜のイオン欠陥が色素分子によりパッシベーションされたことが判明した。また、フーリエ赤外分光法(FTIR)測定により、無機ペロブスカイトの光活性相を安定化する色素分子のメカニズムを調査した。色素分子のカルボニル基がペロブスカイトのPb2+と配位結合を形成することが判明した。PL測定では、色素で処理したペロブスカイト膜のフォトルミネセンス強度が2倍になり、色素分子の導入によって無機ペロブスカイト膜の結晶性も改善できることを証明した。さらに、太陽電池内のイオン移動は、電荷輸送材料を破壊し、劣化の主な原因である。イオン移動を抑えるため、グラフェン誘導体を用いた。グラフェンがペロブスカイト層の表面に均一に塗布しているかをケルビンプローブフォース顕微鏡を使用して測定した。その結果、塩素修飾された酸化グラフェンを用いたサンプルの表面の電位分布は均一で、エージング前のPTAAの電位分布と一致するため、最も有効な方法であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、高効率を有したヘテロ接合構造ペロブスカイト太陽電池を中心に、材料物性およびヘテロ接合に関して、種々の測定法を用いて、ペロブスカイト太陽電池を構成する要素の理解・解明を行う。今年度は太陽電池について、KPFM計測でp-n接合の測定、ペロブスカイトとPCBM膜を用いてフォトルミネッセンス(PL)測定、太陽電池における電子と正孔の分離と再結合の測定を計画している。 上記計画に対して、本年度は下記の研究成果を得た。 まず、ペロブスカイト太陽電池を不活性雰囲気にて「暗状態」および「光照射下」において電位計測を行った。この差分曲線から、光照射による電位変化により、正式太陽電池と異なり、ペロブスカイト層の両側に電位の変換が認められ、p-i-n接合ではないことが分かった。また、種々の測定法(X線光電子分光法、FTIR、PL法)を用いて、ペロブスカイト太陽電池の欠陥やキャリア輸送と再結合の評価を行った。その結果、色素分子のカルボニル基がペロブスカイトのPb2+と配位結合を形成することが判明した。それらの成果を論文誌Advanced Materialsに掲載されて、半年の間に37回引用された。 さらに、ペロブスカイト太陽電池内劣化の主な原因の1つはデバイス内のイオン移動であることをXPS測定で判明した。KPFMによるペロブスカイト層の表面に均一に塗布可能なグラフェン誘導体を見つけイオン移動を抑えた。この成果をまとめた論文が論文誌Scienceにアクセプトされた。その他、Snペロブスカイト膜の形成メカニズムの解明により、非鉛ペロブスカイト太陽電池の変換効率は10%を超えた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、逆型ヘテロ接合構造ペロブスカイト太陽電池を中心に、材料物性、キャリア輸送、イオン移動、欠陥のパッシベーションに関して、種々の測定法を用いて、ペロブスカイト太陽電池を構成する要素の理解・解明を行う。その知見をベースに、デバイス特性の理解を深め、特性向上のための材料とデバイスの開発指針を明らかにする。 具体的には、下記の研究を行う。 1)ヘテロ接合における電荷分離プロセスは、異なる厚さの傾斜ヘテロ接合層を有するペロブスカイトとPCBM膜を用いてフォトルミネッセンス(PL)測定を検討する。PLスペクトルのピークの強度から電子と正孔の分離速度についての知見を得る。また、その減衰スペクトルから電子とホールの再結合時間を求められる。また過渡吸収分光法による各層間の電子注入速度を測定する。また、インピーダンス分光、変調電流分光、変調光電圧分光により、各層の電子移動度や電子寿命などのメカニズムの解明を行う。 2)太陽電池デバイスにおける電子輸送速度と電子再結合寿命を求めるには、過渡光電圧測定、過渡光電流測定を用いる。この方法では、パルス光照射による電流または電圧の減衰を測定して電子再結合寿命または電子輸送速度を求めることができる。例えば、電子再結合寿命を求める場合、過渡光電圧測定を用い、パルス光による開路状態の電圧の減衰を測定する。減衰曲線から積分してデバイス内のキャリア密度を得る。また、過渡光電流測定から電子輸送速度を求める。 上記の測定で得られた知見をもとに、ペロブスカイト太陽電池の変換効率の向上を試みたい。
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Research Products
(8 results)