2019 Fiscal Year Annual Research Report
Estimation of saponin chemical structures in soyfoods by profile anbalysis
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18H02149
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
塚本 知玄 岩手大学, 農学部, 教授 (20312514)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 大豆 / 大豆加工食品 / サポニン / 化学構造 / LC-PDA/MS/MS |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)大豆サポニンアグリコンC-3位GlcUA転移酵素とC-22位結合糖鎖末端糖アセチル化酵素の変異体探索を進め,いくつかのサポニン組成変異体は発見された(Sundaramoorthy等)が,目的の変異は発見できなかった。マメ科モデル植物ミヤコグサではグループAサポニンは合成されずDDMP-βgは合成されることが確認できている(山根等,2018)ので,ミヤコグサを用いてGlcUA転移酵素遺伝子の推定を進め(Krishnamurthy等),大豆サポニン生合成経路の全容が見えてきた。これまでの知見から,大豆サポニン組成改変新品種の育成が可能と考えられる(Tsukamoto等)。 (2)サポニン組成変異大豆EnT-3131は発芽後の生育が極端に悪く植物体も小さい。かろうじて開花結実するものの,種子の増殖は極めて困難であり,種子胚軸に蓄積する新規サポニン(Ab-δとDDMP-δ)の単離精製はできていない。 (3)EnT-3131の交配実験も困難であり,出現が予想されるAa-δやA0-δ確認用種子も得られていない。 (4)LCーPDA/MS/MS分析によりEnT-3131子葉で単一ピークとして検出されるDDMP-βg’は,C-3位結合第二糖にGlcを配する新規大豆サポニン(C-3-Rham-Glc-GlcUA-DDMPサポニン)と推定された。質量分析で観察される分子質量とフラグメント質量はDDMP-βg(C-3-Rham-Gal-GlcUA-DDMPサポニン)と同じだが,フラグメントパターンに違いがみられ,分子内で切断されやすい部位が異なっていた(Son等)。この結果は,これまで質量分析では判別できないと考えられてきた大豆サポニン糖鎖中のGalとGlcの違いをLC-PDA/MS/MS分析で判別できることを強く示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
EnT-3131は発芽後の生育が極端に悪く植物体も小さい。かろうじて開花結実するものの,種子の増殖や交配実験は極めて困難であり,当初計画していた(2)EnT-3131種子胚軸に蓄積するAb-δとDDMP-δの単利精製と構造解析と(3)交雑後代種子の分析による新規サポニン生成確認実験については進めることができなかった。色々な可能性が考えられるが,生育不良とサポニン組成の関係は明らかではない。これまでに発見されたサポニン組成変異大豆やサポニンを全く合成しない変異体などは全て,普通に生育し増殖が可能であったため,EnT-3131が生育不良を示すことは予想できなかった。EnT-3131の解析を進めることで,これまで不明であった大豆サポニンの生理作用の一端が解明される可能性がある。
一方,EnT-3131の子葉アルコール抽出液のLC-PDA/MS/MS分析では,普通大豆子葉で観察されるDDMP-βg(C-3位結合糖鎖配列がRham-Gal-GlcUA-であるDDMPサポニン)が検出されない。また,普通大豆子葉ではDDMP-βgのすぐ前にショルダーとして検出されるDDMP-βg’が,EnT-3131では単独ピークとして検出される。構造解析の結果,DDMP-βg’はC-3位結合糖鎖がRham-Glc-GlcUA-と推定された。DDMP-βgとDDMP-βg’は,MSとMS/MS分析で観察される分子質量とフラグメント質量は同じだが,フラグメントパターンに違いがみられ,分子内で切断されやすい部位が異なる。この結果は,これまでMSやMS/MS分析では判別できないと考えられてきたGalとGlcの違いを,大豆サポニンであれば,LCーPDA/MS/MS分析で判別できる可能性を示唆している。
当初計画していた結果のいくつかは得られていないが,当初計画とは別の収穫が得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)ミヤコグサで,大豆サポニンアグリコンC-3位GlcUA転移酵素の候補遺伝子が見つかるなど,大豆サポニン生合成に関わる遺伝子の全容が見えてきた。各種遺伝子の組合せを変えることで新規化学構造を有するサポニン分子種の作出が可能となり,それにより多様な大豆サポニンのLC-PDA/MS/MSプロファイルデータベースが充実することになる。各種遺伝子変異体に蓄積する未確認サポニンのLC-PDA/MS/MSプロファイルデータベースの蓄積を進め,アグリコンと糖鎖配列の化学構造をLC-PDA/MS/MSプロファイル解析のみで可能にする。 (2)このデータベースを用い,各種大豆加工食品のサポニン組成をLC-PDA/MS/MS分析で調査する。 (3)EMS処理大豆系統で発見された変異体EnT-3131は,ソヤサポゲノールC-3位結合糖鎖第二糖にGalを導入できず,代わりに,Glcを導入できると考えられ,EnT-3131種子子葉でRham-Glc-GlcUA-を持つ新規大豆サポニン類が多数検出できると予想される。これまで,C-3位結合糖鎖第二糖にGlcを配する大豆サポニンは無いと考えられてきたため,今後,プロファイル解析手法を駆使して,これら新規大豆サポニンの検出を進めると共に,C-3位結合第二糖のGlcとGalの違い(これらはいずれも質量162の脱離フラグメントを与えるが,これまで,大豆サポニン糖鎖中のGlcとGalの違いはMSやMS/MS分析では判別できないとされてきた)をLC-PDA/MS/MSプロファイル解析で判別できるようにする。 (4)EnT-3131種子が十分量得られれば,蓄積する変異サポニン類を単利精製し,NMRやIR等の機器分析による構造解析を進める。これにより,機器分析による構造解析とLC-PDA/MS/MSプロファイル解析による構造解析の相関を明らかにする。
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Research Products
(8 results)