2018 Fiscal Year Annual Research Report
細胞壁ダイナミクスが誘起するイネ根系形態の可塑的反応機構の解明
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18H02174
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
犬飼 義明 名古屋大学, 農学国際教育研究センター, 教授 (20377790)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
兒島 孝明 名古屋大学, 生命農学研究科, 講師 (40509080)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | イネ / 突然変異体 / 細胞壁 / 根系形成 / 分子機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
イネの耐乾性を高める上では側根と呼ばれる分枝根の発達を促すことが有効であり、これは側根のメリステムサイズの増大により可能となる。本年度は、側根メリステムサイズに関わる突然変異体の形態的特徴、および原因遺伝子の発現パターンを解析した。 weg1変異体は、主軸根が湾曲して伸長するとともに、側根メリステムサイズが著しく増加する特徴を有する。興味深いことに、これらの側根は湾曲した部位の凸側に形成される傾向を示した。そこで、湾曲部位における個々の細胞の伸長パターンを野生型とweg1変異体間で比較した結果、本変異体では本部位の細胞長が内側と外側で大きく異なっており、その結果として湾曲して根が伸長することが判明した。マップベースクローニングの結果、本変異体の原因遺伝子は第9染色体に座乗し、更なる座乗候補領域の制限化により、最終的に細胞壁の伸展性に関わると推定されるhydroxyproline-rich glycoprotein をコードすることが明らかとなった。また、本遺伝子は根の伸長帯で発現しており、そのため本遺伝子の機能欠損により細胞伸長の左右対称性が乱れ、主軸根が湾曲すると考えられた。 次に、湾曲伸長と側根メリステムサイズ制御の関係性を調べるため、根の発生制御に深く関わることが知られているオーキシンの局在性を、オーキシン応答プロモーターであるDR5 を用いて解析した。その結果、主軸根の湾曲部位の凸側では高濃度のオーキシンが局在し、その結果として直径の大きな側根メリステムが形成されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のように、本年度は細胞壁の伸展性に関わると推定されるhydroxyproline-rich glyco proteinが側根メリステムサイズの増加に関わることを明らかにした。その際、オーキシンの局在性の乱れが側根メリステムサイズの増加を促すことも見出すことに成功している。加えて、本機構に関わる候補遺伝子としてオーキシンのシグナル伝達に関与する因子群が選抜されつつあり、本年度の成果をもとに今後二年間の研究発展が大いに期待できる。そのため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
I. 側根メリステムサイズ関連変異体群の形態的特徴および原因遺伝子の発現パターンの把握 ひきつづき、側根メリステムサイズが増加する台中65号由来の突然変異体群を用い、原因遺伝子を単離するとともに、それらの野生型における発現パターンを定量PCRやin situ hybridization法、プロモーターGFP等により解析する。加えて、これらの原因遺伝子とイネの公開マイクロアレイデータとの共発現解析を行い、根における細胞壁の伸展性や二次細胞壁合成に関連する遺伝子群を探索することで、メリステムサイズ決定機構に関わる重要因子群を絞り込む。
II. 側根メリステムサイズ制御因子の相互作用タンパク質、および標的遺伝子の探索を通したネットワーク機構の理解 上記変異体群の原因遺伝子には、転写因子が存在していたため、Yeast Two-Hybrid法により各転写因子と相互作用するタンパク質の探索を試みる。また、各転写因子の結合塩基配列の決定をgSELEX-Seq解析により進めていくことにより、遺伝子間ネットワークの構築を試みる。
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