2020 Fiscal Year Annual Research Report
構造の複雑さがなぜ森林の生産量を高めるのか?生理生態学的メカニズムの徹底検証
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18H02236
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
飯尾 淳弘 静岡大学, 農学部, 准教授 (90422740)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
楢本 正明 静岡大学, 農学部, 准教授 (10507635)
水永 博己 静岡大学, 農学部, 教授 (20291552)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 樹種多様性 / 樹冠構造 / 葉フェノロジー / ドローン / 樹液流 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、樹液流計測などの生理的特性の調査を継続する一方で、ドローンを用いた樹木葉構造の時間的変異(フェノロジー;開葉、展葉完了、紅葉、落葉開始、落葉完了のタイミング)の種多様性について詳しく調査した。開葉前の4月上旬から落葉の完了する11月下旬まで、5日から2週間間隔で試験地全体の空中写真を撮影し、19種、60個体のフェノロジーをオルソ画像から定量化した。また同時に地上目視によるフェノロジー調査も行い、ドローンを用いたモニタリング手法の妥当性を検証した。その結果、 (1)画像からフェノロジーの種多様性を定量する手法は、樹冠下の植生(隣接木の枝、亜高木、林床植物)の影響を強く受け、種多様性を小さく評価してしまうこと (2)樹冠が大きく厚いブナやシナノキでは葉の重なりが大きいために、展葉速度を過大評価すること が明らかになった。ドローンは樹冠構造の種多様性を詳細かつ広い範囲で定量することのできる強力なツールであるが、階層構造の発達した成熟林に適用する際には上述した2点に注意する必要がある。(1)についてはオルソ画像の目視判読である程度解決可能であり、(2)の問題については樹冠のサイズ等を用いた補正が必要になると考えられる。 また、生理生態機能の多様性をより効率的に把握することを目的に、オルソ画像から得られるフェノロジーと樹液流の関係についても分析を行った。その結果、秋の紅葉の影響が他の指標より少ない色相(Hue)が、樹液流の季節変化パターンを最もよく再現することがわかった。これは、ほとんどの樹種で葉が紅葉を開始しても蒸散能力が低下しないためであり、生理特性の季節変化パターンの再現は難題であったが、蒸散能力に関してはドローンを用いた個体レベルでの広域予測を期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年前の台風による試験地設備の全壊に加え、コロナの影響でフィールド調査を制限しなければならず、野外研究を実施することが難しい状況が続いた。しかし、広域を詳細に観測可能なドローンを導入したことで、構造の時間的多様性に関するデータを効率的に取得し、それらに起因する遅れを取り戻すことができたから。これまでに試験地の主要種であるブナ、オオイタヤメイゲツ、ミズメ、テツカエデの生理生態情報と葉分布構造をほぼ取り終えており、可塑性と多様性の効果に関する調査を行うことで、最終目標であるシミュレーション分析に到達できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの行ってきた樹液流計測やフェノロジー観測を継続すると同時に、葉の生理的特性と葉分布構造を調査地全体に拡張するために、分光反射リモートセンシングによる葉面積の推定、樹冠構造の全木調査を行い、シミュレーション分析のための材料をそろえる。具体的には広域調査において、どのような条件(種の組み合わせ、配置)で構造の複雑化や葉面積の増加が起こるのかに注目した解析を行い、最終シミュレーション分析のためのフレームを構築する。
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Research Products
(2 results)