2018 Fiscal Year Annual Research Report
白色腐朽菌と共存細菌とのケミカル・トーキング~シグナル分子の解明と新機能発現~
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18H02257
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
亀井 一郎 宮崎大学, 農学部, 教授 (90526526)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 白色腐朽菌 / リグニン / 微生物間相互作用 / バイオマス / バイオレメディエーション / ケミカルコミュニケーション / シグナル物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.白色腐朽菌と共存細菌とのケミカルコミュニケーションに関わるシグナル分子の同定:共存細菌の液体培地より有機溶媒抽出した画分に白色腐朽菌の菌糸伸長促進効果を認めたため、活性の無い細菌培養液の抽出物との比較メタボロミクスにより複数の候補化合物を選抜し、そのうち3物質に菌糸伸長促進活性があることを明らかにした。この結果から、細菌が発するシグナル分子は単一の化合物ではなく、複数の化合物が複合的にかかわっている可能性が示唆された。 2.白色腐朽菌と共存細菌との共培養による機能強化(有害汚染物質分解):白色腐朽菌Phlebia brevisporaと菌糸伸長促進活性を持つ細菌Enterobacter sp. TN3W-14を共培養することで、Phlebia brevispora単独での処理よりもネオニコチノイド系殺虫剤の除去および人工色素の脱色能を高めることを明らかにした。いずれも、細菌の共培養によりP. brevisporaの生長が促進されていることが要因ではないかと考えられた。このことから、有害化合物分解においても白色腐朽菌と細菌との共培養が有効であることが示された。 3.白色腐朽菌と共存細菌との共培養による機能強化(バイオリファイナリー):遺伝子組み換えにより作出されたセルロースからグルコースを蓄積する白色腐朽菌Phlebia sp. MG-60 KO77株とClostridium saccharoperbutyliacetonicumを嫌気条件下で共培養することで、セルロースからブタノールを生産できることを明らかにした。変換効率等はさらなる検討が必要であるが、白色腐朽菌と異種微生物を組み合わせた複合微生物系で、リグノセルロースからエタノール以外の有価物を生産可能であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
白色腐朽菌と細菌との間で働くシグナル分子の探索は当初の計画通り進捗しており、複数の候補化合物を同定できた。31年度も計画通りこれらシグナル分子に対する白色腐朽菌の応答の解析を進めることができる。一方で、当初計画していた物質を介した白色腐朽菌-細菌間コミュニケーションに加えて、新たに白色腐朽菌と細菌との直接的な接触が様々な現象を示すことを見出している(未発表)。研究対象となる微生物間のコミュニケーション様式が広がりを見せていることから、当初の計画以上に進展しているといえる。また、人為的な複合微生物系構築による有害汚染物質の分解能向上、およびバイオリファイナリー技術の構築は、当初31年度以降に本格的に取り組む予定であったが、30年度の時点でネオニコチノイドおよび人工色素の分解性向上を示すことができ、セルロースからのブタノール生産を可能にする複合微生物構築が可能であることが示せており、すでに効率向上に関する研究を開始している。当初の期待よりも複合微生物系構築の効果が高く、対象化合物を広げることが可能であるため、当初計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画については遅滞なく研究を進め、シグナル物質を介した白色腐朽菌と細菌との相互作用を明らかにする。特にシグナル物質を受容した白色腐朽菌側の遺伝子発現応答に着目し研究を進める。当初計画では2種類の白色腐朽菌と細菌との組み合わせをモデルとして研究を進める計画であったが、一方で、白色腐朽菌と細菌との直接接触など相互作用の様式が複数存在することが分かってきたため、対象とする担子菌と細菌を広げるために、フィールドから新たな試料採取を行う予定である。また、複合微生物系構築による物質変換についても、現行の結果をより高効率化するとともに、組み合わせる微生物種を増やして多くの有価物の生産が可能であるかを研究する。
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Research Products
(19 results)