2019 Fiscal Year Annual Research Report
Studies on the synchronous-resting mechanisms of the marine diatoms
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18H02266
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
山口 晴生 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 准教授 (10432816)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
外丸 裕司 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水研機構(廿日市), 主任研究員 (10416042)
木村 圭 佐賀大学, 農学部, 准教授 (30612676)
堀田 純一 山形大学, 大学院理工学研究科, 准教授 (80301919)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 珪藻 / ブルーム / 休眠 / 代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
珪藻類は海洋における最も主要な生産者の一つである。その増殖に関わる生態戦略は徐々に解明されつつあるが,大量に増殖した珪藻個体群(ブルーム)が唐突に終焉へと到る機構は未だ解明されていない。そのような状況でブルームの終焉要因として注目されるのが「休眠(休眠期細胞への変化)」である。本研究課題では,厳密に環境条件を制御した室内培養実験によって,休眠していく微小珪藻細胞の形態・生理状態・代謝産物の変動を包括的に明らかにし,同藻の同調的な休眠移行がブルームの終焉に及ぼす影響を定量的に評価する。本年度に実施した研究で得られた成果は以下に総括される。 <休眠誘導系における微小珪藻の休眠諸性状>モデル微小珪藻キートセロス・テヌイシマス(学名Chaetoceros tenuissimus)の複数培養株を対象に,室内環境下にて休眠誘導させることができた。本藻は栄養塩の枯渇が引き金となって休眠状態へと移行しはじめ,暗黒下であれば長期にわたって休眠状態で生残可能であった。このような休眠移行は,複数の培養株で共通しており,かつ細胞群として同調的なものであることがわかった。 <休眠診断指標>蛍光観察および転写産物解析により,休眠診断の指標を見出そうとした。休眠移行に至る珪藻細胞群は蛍光試薬LysoTrackerならびにBODIPYによって染色された。フローサイトメーターを用い,栄養細胞と休眠移行細胞のクロロフィル自家蛍光・BODIPY蛍光強度ならびにLysoTracker蛍光を細胞個々で比較することにより,休眠状態に特徴的な蛍光情報を得られることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画にしたがい,フローサイトメトリーならびに複合ストレス培養法がベース技術となる珪藻休眠誘導系を構築することができた。この実験系を用いた試験により,供試珪藻細胞がほぼ同調的に(一斉に)休眠状態へと移行できること,ならびに供試藻の株間で休眠移行能に差はないことがほぼ判明しつつある。休眠移行してからの生存には,水温が大きく影響しており,高水温に比べて低水温下においてはより長期にわたって休眠状態を維持可能である。 休眠状態へと誘導された細胞群では,総じて細胞内小器官の発達,油滴状物質の蓄積が認められ,それらを蛍光情報として取得できた。当該情報の定量化と取得においては,珪藻細胞一つ一つの蛍光強度・蛍光画像を高速解析可能な装置“イメージングフローサイトメーター”を活用可能なことから,珪藻の休眠状態を高速かつ定量的に診断可能な技術を確立できつつある。一方で,新型感染症の拡大に伴い,一部の解析に遅れが生じた。当初予定していた計画よりもやや遅れて進捗しているものの,次年度に解析をスタートできる見込みが得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
モデル微小珪藻C. tenuissimusの休眠代謝を遺伝子産物・代謝産物の観点から解析するために,基盤的な重要情報となるドラフトゲノムを構築する。休眠移行する際に珪藻細胞内で誘導あるいは抑制されるmRNAをゲノム情報と関連づけることで,休眠移行において特徴的な遺伝子群の転写産物を特定,それらの休眠における役割について考察する。 超解像蛍光顕微鏡ならびに画像化フローサイトメトリーによりC. tenuissimusの細胞構造・諸性状を明らかにする。特に,強力な超解像蛍光顕微鏡技術の一つであるSTORMあるいはSOFIの適用可能性を検討するとともに,染色試薬の選定ならびに染色諸条件の最適化を図る。これにより,対象珪藻細胞に特徴的な被殻・各小器官の構造について明らかにする。すでに休眠移行時に認められた細胞内小器官については,細胞の休眠移行―復活においてどのように変動するのかを調べる。 また,沿岸底泥における微小珪藻C. tenuissimusの分布を明らかにし,本課題の機構を強力に支持する知見を確保する。それに向けて,底泥に含まれる珪藻細胞と非生物粒子の粗分画法を確立し,効率よく対象珪藻の分布を調べることが可能な実験基盤を整えている。
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Research Products
(2 results)