2018 Fiscal Year Annual Research Report
Non-destructive and non-contact freshness evaluation of postharvest fruits and vegetables by 4D image analysis
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18H02304
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
黒木 信一郎 神戸大学, 農学研究科, 助教 (00420505)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 博通 神戸大学, 農学研究科, 教授 (00258063)
福島 崇志 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (00452227)
中野 浩平 岐阜大学, 大学院連合農学研究科, 教授 (20303513)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 膜張力 / 鮮度 / プロトプラスト / 活性酸素 / 単離工程 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はホウレンソウ葉を対象に、低浸透圧耐性の評価、および酸化ストレスマーカーの測定を行った。0.5 Mマンニトール水溶液中での生存率を100 %として正規化した低浸透圧環境下における相対生存率を正規累積分布関数で回帰することで、プロトプラスト直径10µmごとの平均破壊浸透圧を算出した。Young-Laplaceの式を用いた解析の結果、膨張破裂時の膜張力はプロトプラストのサイズによらず一定であることが明らかとなった。またこれを受けて、プロトプラスト単離時における工程の影響を評価した結果、酵素処理時間と脱気による酵素溶液の浸潤処理の有無では膨張破裂時の膜張力に有意差が生じないのに対して、遠心分離処理は遠心強度によっては膨張破裂時の膜張力を下げ得る可能性が示唆された。他方、ジアミノベンジジン(DAB)およびニトロブルーテトラゾリウム(NBT)を用いた過酸化水素(H2O2)およびスーパーオキシドアニオン(O2・-)の組織学的染色を行った結果、過酸化水素濃度が葉の位置によらず貯蔵後期に急増する一方、スーパーオキシドアニオン濃度は収穫直後に高く時間経過と共に減少することが示された.これらの観察事実は、SOD様活性は収穫後も十分に高く維持される一方で、カタラーゼ(CAT)活性やアスコルビン酸ベルオキシダーゼ(APX)活性などの過酸化水素消去に関連する酵素の機能は収穫後に不十分になることを示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Young-Laplaceの式による膨張破裂時の膜張力の解析結果は、単離操作そのものによる膜へのダメージを最小化するプロトプラストの最適単離法の開発を可能にするものであり、プロトプラストを観察試料とする核磁気共鳴法と二層流法とによる細胞膜の拡散・浸透透水係数の測定など、他の膜物性計測にとっても重要な発見となった。また、一連の酸化ストレスマーカーの計測データの収集が進み、膜機能劣化と相関を持つ酸化ストレスや化学種が同定されつつあると評価される。年末に導入された備品の操作についても想定の範囲内で習熟が進んでいる。他方、プレッシャープローブ法による膜物性計測は、マイクロキャピラリーの先端加工の精度不足のため遅れが生じている。以上を総合すると、本研究課題はおおむね順調に進展していると自己評価される。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、温度およびガス環境を変化させる環境での貯蔵試験を行うことにより、鮮度状態が段階的に異なる青果物試料を作出し、細胞膜の輸送物性や力学物性の計測、抗酸化酵素や抗酸化物質など抗酸化能に関わる一連の酸化ストレスマーカーの計測、および脂質過酸化・分解産物の網羅分析によって、細胞膜の機能劣化を定量化する。また、高精度のマイクロキャピラリー先端加工を行うためのガラスプーラーや研磨機などの導入を検討し、プレッシャープローブ法による細胞弾性率の計測とそれを通した組織レベルにおける細胞の水透過性の測定を推進し、プロトプラストを観察試料とする核磁気共鳴法と二層流法とによる細胞膜の拡散・浸透透水係数との比較により、膜の機能劣化と鮮度低下との関係性を明らかにする。加えて、タイムラプスハイパースペクトル画像の収集と機械学習による解析を行い、鮮度の非破壊推定法とその分光学的解釈について議論する。
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