2018 Fiscal Year Annual Research Report
Dynamics of micro-organism and small animals in the soil and their contribution to crop productivity in cover cropping
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18H02310
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
荒木 肇 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (30183148)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小松崎 将一 茨城大学, 農学部, 教授 (10205510)
西澤 智康 茨城大学, 農学部, 准教授 (40722111)
内田 義崇 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (70705251)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 緑肥 / 作物生産 / 土壌微生物 / 土壌炭素 / 窒素動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.緑肥を短期および長期に導入した圃場での窒素・炭素蓄積と作物生産性:北海道大学では、施設栽培においてヘアリーベッチやライムギの緑肥を投入してトマトを長期栽培すると、混合施用において、8週目には土壌の微生物バイオマス窒素や炭素が多くなり、ヘアリーベッチ単独すき込みに近いトマト生産性を示した。緑肥投入後の土壌中の無機態窒素の蓄積と、レタスの収量に相関が見られたことから、レタスの生育制限要因が窒素であることが示唆された。茨城大学では長期緑肥試験圃場(2002年設置)での調査から、緑肥の連年施用により土壌炭素貯留が増加するとともに、温室効果ガスの増加が確認された。 2.窒素と炭素の循環機能に関与する微生物の単離と定量方法(北海道大学):緑肥を土壌に投入すると、特に分解しやすいヘアリーベッチやMIX(ヘアリーベッチとライムギ混播)では、土壌添加後に分解ポテンシャルの指標となるベータグルコシダーゼ活性が有意に高まり、微生物バイオマスも増加傾向が見られた。しかし、PCRにより土壌窒素の硝化に関与するアンモニア酸化細菌の増減を調査したが、バクテリアやレタス収量との明確な関係は認められなかった。 3.土壌微生物の群集構造解析のための土壌微生物遺伝子の網羅的解析(茨城大学):緑肥・カバークロップ(特にライムギ)施用土壌では、裸地に比べて耐水性団粒マクロ画分(>2mm)が増加し、そこへの炭素・窒素の蓄積が確認された。土壌団粒のDNAバイオマス量は減少したことから、土壌団粒内部の微生物代謝活性はライムギ区と草生区では異なることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.目標:茨城県と北海道で数種緑肥を短期および長期に導入した圃場での炭素蓄積、土壌微生物や小動物の消長、および作物生産性の連関を評価する。そのために、茨城大学で、緑肥による炭素蓄積と分解、土壌微生物遺伝子の網羅的解析により微生物の多様性と微生物群集の変化を評価する。北海道大学では、土壌中での緑肥分解や窒素サイクルに関与する微生物を抽出し、量的変化を調査する。網羅的解析と窒素サイクル関与微生物解析の手法で、茨城大学(暖地)と北海道大学(寒冷地)の緑肥の長期・短期投入土壌の生物性を評価する。 2.緑肥投入圃場でのレタス栽培において、経時的な緑肥分解、土壌窒素含量およびレタスの窒素吸収モデルが確立した。トマト施設栽培でも、緑肥と土壌中の窒素・炭素プールを大きくすることがトマト長期収穫には有効であると考えられた。茨城大学の不耕起圃場で炭素分解が測定できるようになった。 3.窒素サイクル関与微生物解析については候補遺伝子を絞り、その消長を観察中である。土壌微生物遺伝子の網羅的解析には、茨城大学の長期緑肥試験圃場に形成する耐水性土壌団粒DNAを利用するが、解析手法をさらに検討する。 4.土壌生物の多様性解析について、次年度より土壌線虫の活用技術を有する研究分担者を追加することにより、この分野を推進する。
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Strategy for Future Research Activity |
1.緑肥を短期および長期に導入した圃場での窒素・炭素蓄積と作物生産性:北海道大学では、施設トマト栽培において、緑肥種とその施用方法(すき込みやマルチ)も複数年調査し最適管理法を確立する。ヘアリーベッチとライムギの混用処理が長期収穫での生産に寄与できており、15Nによるライムギ由来窒素の動態も明らかにする。緑肥投入圃場でのレタス生産でも、経時的に土壌窒素、レタスの窒素吸収を測定し、無機化関与微生物の消長を比較する。茨城大学では、不耕起圃場で形成された土壌炭素貯留を対象に、13Cを利用して炭素量と分解速度を実測し、モデル化を試みる。これにより、緑肥を土壌に投入した場合の炭素分解速度を定量化する。 2.窒素と炭素の循環機能に関与する微生物の単離と定量方法(北海道大学):アンモニア酸化細菌だけではなく、他の窒素循環に関わる機能遺伝子(脱窒関与遺伝子nir、無機化/有機化の関与遺伝子gdh、ureC)を網羅的に定量PCRし、量的変化を調べる。これらの消長を1のレタス生長とも関連させて解析する。機能遺伝子の増減に関わっている微生物種を同定する。 3.土壌微生物の群集構造解析のための土壌微生物遺伝子の網羅的解析(茨城大学):土壌生態系の物質循環機能の鍵となる土壌団粒内の微生物群集に焦点を当て、長期緑肥試験圃場に形成する耐水性土壌団粒DNAの、物質循環機能に関与する微生物群集構造を明らかにする。簡便法の消光性蛍光プライマーを利用した定量PCRアッセイによる標的遺伝子の量的動態解析と同プライマーによるPCR-T-RFLP(制限断片長多型)法を用いて微生物群集を分析する。 4.緑肥導入圃場の生物多様性評価(新潟食料農業大学):北海道大学と茨城大学での緑肥導入後の土壌を採集し、線虫群集の動態解析から、緑肥処理による土壌生物多様性の変化を評価する。
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