2018 Fiscal Year Annual Research Report
乳腺上皮細胞の温度応答性分子群が乳腺組織の形態形成と機能発現を制御する機構の解明
Project/Area Number |
18H02320
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小林 謙 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (30449003)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
磯部 直樹 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 准教授 (80284230)
川原 学 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (70468700)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 乳腺上皮細胞 / 乳腺 / 暑熱ストレス / 寒冷ストレス / 乳分泌 / TRPチャネル / ヒートショックプロテイン / 乳分泌培養モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
研究のロードマップでは、2018年度にCRISPR-Cas9ノックアウトにより温度受容体のTRPV4ノックアウト細胞を作製する予定であったが、群馬大学医学部の柴崎先生よりTRPV4ノックアウトマウスを譲渡していただけることになったため、ゲノム編集細胞を用いた解析ではなく、ノックアウトマウスの実験に計画を変更して実験を進めた。ノックアウトマウス由来細胞では、TRPV4が発現していないことがウエスタンブロットやRT-PCRにより確認された。ノックアウトマウス由来の乳腺上皮細胞培養においてアゴニストやアンタゴニストを添加しても反応性はなく、培養温度を変化させた実験に対する反応性も正常な乳腺上皮細胞と異なるものであった。また、当初の計画通りに進めた2019年度の実験により、ペパーミント精油とその含有成分であるメントールとユーカリプトールが乳腺上皮細胞に発現する低温度受容体のTRPM8とTRPA1を活性化し、乳腺上皮細胞の乳タンパク質産生や乳脂質の直径を調節することがわかった。乳腺胞の内腔形成およびその直径拡大は41℃で抑制され、37℃と39℃の間には大差がなかった。さらに、ヤギの乳房を局所的に加熱して暑熱ストレスを負荷した結果、体細胞数やタイトジャンクション構成タンパク質の局在が変化しており、乳房の局所的な温度上昇が乳腺上皮細胞や免疫細胞に影響することが示唆された。以上の結果より、今後もTRPV4ノックアウトマウスを用いた実験を活用することで当初の予定よりも生体反映性が高く、分子レベルで生理現象を捉えることが可能と判断された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度に行った上記の計画変更後の実験により、当初の研究計画で示した研究ロードマップとほぼ同じ進捗状況になったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進は、当初の研究計画通りの実験・研究と昨年度までの研究成果に基づいた追加実験・研究の2本立てで行う。まず、前者の“各温度応答性分子の活性化が乳腺組織発達と乳分泌に及ぼす影響”では、昨年度までに温度による影響をin vitro培養モデルで調べたことから、今年度は各温度応答性分子群の活性化・不活性化をそれらのノックダウン、ノックアウトおよび化学的刺激により誘発して調べる。また、“暑熱ストレス下における温度応答性分子群の関与の実証”では、気温の昼夜変動や季節変動に伴う乳房温度の変化を再現するため、 短期(1~12時間)と長期(1~10日)の温度応答性分子群の活性化による影響も調べる。一方、後者の追加実験・研究としては、温度応答性分子群の一つであるTRPM8とTRPA1を活性化する成分がペパーミント内に二種類存在していたことを踏まえ、温度応答性分子群を刺激する有効成分を家畜飼料やハーブ類の中から探索し、その影響をin vivoおよびin vitroで調べる予定である。上記で行う実験を行う際、2018年度から2019年度への予算の繰り越しを行って追加したTRPV4ノックアウトマウスを用いた実験を活用することで当初の予定よりも生体反映性が高く、分子レベルで生理現象を捉えた検証を可能とする。
|
Research Products
(6 results)