2018 Fiscal Year Annual Research Report
ワクチン抗原を分泌する組換えマレック病ウイルスを用いたワクモ防除法の開発
Project/Area Number |
18H02332
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
村田 史郎 北海道大学, 獣医学研究院, 助教 (10579163)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今内 覚 北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (40396304)
大橋 和彦 北海道大学, 獣医学研究院, 教授 (90250498)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ワクモ / 外部寄生虫 / マレック病 / マレック病ウイルス / 組換えウイルス / 組換えワクチン / 弱毒生ワクチン / ウイルスベクター |
Outline of Annual Research Achievements |
日本を含め多くの国々の養鶏場において、ワクモによる被害は深刻な問題となっている。ワクモ対策に貢献するため、殺虫剤に変わる新たな手法として、ワクモ防除用ワクチンの開発を目指して研究を行っている。これまでに複数のワクチン抗原候補を同定しており、その有用性を評価してきた。加えて、ワクチン接種時にかかる負担を軽減させるため、ワクチン抗原遺伝子を挿入したウイルスベクターの応用についても、組換えマレック病弱毒生ワクチンを用いて検討を行ってきた。本研究では、これまでに作製したワクチン抗原遺伝子挿入組換えマレック病弱毒生ワクチンの効果増大を目指し、従来型ワクチンに改良を加え、抗原分泌型の弱毒生ワクチンの作製とその効果検証を行うことを目的とした。 本年度は、ワクチン抗原分泌型のマレック病弱毒生ワクチンゲノムの作製を行った。本研究では、マレック病ウイルス強毒株であるRB1B株のmeq遺伝子とワクチン抗原遺伝子を置換させたウイルスゲノムプラスミドを用いた。meq遺伝子はマレック病ウイルスの病態形成に必須であるため、ワクチン抗原遺伝子の挿入に伴い、meq遺伝子が欠損することとなり、マレック病ウイルスの病原性も欠失する。ワクチン抗原分泌型とするため、ウイルスゲノム中のワクチン抗原遺伝子上流に分泌シグナルを挿入し、改良型のマレック病弱毒生ワクチンゲノムプラスミドを作製した。さらに抗原の細胞外分泌時に宿主細胞への影響を低減させるため、ワクチン抗原のタンパク質機能を失活させる点変異をワクチン抗原遺伝子中に挿入した。以上より、ワクチン抗原分泌型の弱毒マレック病生ワクチンゲノムプラスミドが完成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画では、今年度はワクチン抗原分泌型弱毒マレック病生ワクチンの作製を主に実施することとしていた。ワクチン抗原を分泌タンパク質として発現させるため、まずマレック病ウイルスの分泌タンパク質遺伝子の分泌シグナルをクローニングした。次にすでに作製してあるワクチン抗原遺伝子を挿入してあるマレック病弱毒生ワクチン株ゲノムに、En Passant Mutagenesis法により、ワクチン抗原遺伝子の上流に分泌シグナルを挿入した。得られたクローンのうち 、ウイルスゲノムプラスミド中の目的の領域に分泌シグナル配列が挿入さているかとどうか、RFLP、PCR及び塩基配列解析により確認した。その結果、ワクチン抗原遺伝子上流に分泌シグナル配列が挿入されたクローンを複数得ることができた。続いて、ワクチン抗原遺伝子のタンパク質機能を失活させるための点変異をワクチン抗原遺伝子中にEn Passant Mutagenesis法により挿入した。得られたクローンについては、上記と同様にRFLP、PCR及び塩基配列解析により目的箇所への変異の挿入を確認し、複数のクローンを得ることに成功した。 以上より、ワクチン抗原分泌型の弱毒マレック病生ワクチンゲノムプラスミドが完成し、目的とする組換えワクチンゲノムを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究については、組換えウイルスゲノムプラスミドから組換えウイルスの再構成を行い、組換えウイルスの性状を解析した後、ワクチン効果の判定を実施する。まず、リン酸カルシウム法により組換えウイルスゲノムプラスミドを培養細胞に導入し、組換えウイルスを再構成させる。この際に従来型の組換えウイルス(細胞内発現型)についても同様に再構成させる。抗原分泌型および細胞内発現型の組換えウイルスは、in vitroにおける性状解析(ウイルス増殖能、抗原タンパク質の発現解析など)の後、鶏を用いた感染実験により、マレック病発症予防効果およびワクモに対するワクチン効果を解析する。まず、組換えウイルスを初生ひなに接種し、その後、マレック病ウイルス強毒株による攻撃を行う。経時的に血液を採取し、ウイルス増殖、サイトカイン産生、抗ワクモワクチン抗原に対する抗体産生を解析する。観察期間中は、鶏の死亡率および剖検により腫瘍発生率を観察し、マレック病に対する発症予防効果を確認する。観察終了時には血液を採取し、人工吸血装置を用いてワクモに対するワクチン効果の評価を行う。以上の試験について、細胞内発現型の組換えMDVと比較することで、抗原分泌型組換えMDVの有効性を明らかにする。
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Research Products
(19 results)