2018 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular mechanism of photoactivation of a light-regulated adenylate cyclase
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18H02413
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
朴 三用 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 教授 (20291932)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小山 隆太 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 准教授 (90431890)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 光活性化アデニル酸シクラーゼ / 光遺伝学 / 構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
光活性化アデニル酸シクラーゼ(photoactivated adenylate cyclase; PAC)は、動物・植物で普遍的な情報伝達物質(cAMP, cGMP)の生産を光で制御できる生体タンパク質で、生体内での光スイッチとして医学的な応用が期待される分子である。PACは、最初にミドリムシから発見され以後、複数の原核生物からも相同遺伝子が見出されていたが、いずれも原子レベルでの構造・機能解明までには至ってなかったが申請者によって、ランソウ由来の光活性化アデニル酸シクラーゼ(OaPAC)における初めて原子レベルでの構造・機能解明に成功した。本研究では解明されたOaPAC光活性化メカニズムの構造科学的解明を基に、細胞内でのセカンドメッセンジャー光制御への光遺伝学の展開や、PACの酵素ドメイン改変によるcGMP光産生酵素の創出、更には脳病変発生などにおける発生学的疾病の機構解明と治療を光制御医学ツールとして基礎医学的研究を目指す。 本年度では、光活性化シクラーゼによる複合的な光制御の実現に向け、分別的な複数波長の励起(マルチカラー化)を目指して、天然のOaPACはFMN (flavin-mono-dinucleotide)又はFAD (flavin-adenin-dinucleotides)を結合するため、青色光(440nm)にて光活性化がおこなわれる。そのため、OaPACの補因子をFMNからRoseo-Flavinに置換を試みた。その結果、Roseo-Flavinの最大吸収波長 505nmであるRoF-OaPACタンパク質の作製に成功し、今後、cAMP活性測定や、反応機構、X線結晶構造解析を行い、詳細な機能・構造解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目指す、藍藻(ランソウ)由来の生物光センサー分子OaPACやその改変OaPACタンパク質の応用による細胞内セカンドメッセンジャーcGMPを光で制御する手法の確立は、これらによる特異的遺伝子発現制御などを介した血管新生・脳疾患・記憶・神経ネットワークの形成など、広範な発生・分化的メディカル現象の機構のよい解明と、それを踏まえた革新的な治療法あるいは薬剤スクリーニング法の開拓につながる、極めて有望な方向である。 本年度ではOaPAC(1-366残基) の遺伝子に、N末端の領域HisタグとFactorXaサイトを付加し、プラスミドをpColdベクターに挿入した。作成したプラスミドを用いてE. coli ArcticExpress株に形質転換し、LB培地で培養した。37℃で培養後O.D.600が0.5-0.8のときに終濃度0.5 mMとなるように IPTGを添加し、タンパク質の発現誘導を10℃で4日間行った。OaPAC菌体を陰イオン交換カラム、硫安沈殿、ハイドロキシアパタイトカラムで精製した。精製したサンプルを10 mg/mlまで濃縮し、Roseo-Flavin化合物を導入し、4℃で1日間攪拌しながら、FAMの置換を行った。その後、ハイドロキシアパタイトカラムで精製を行う。この操作を3回繰り替えることで、高純度のRoF-OaPACタンパク質の作製に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
PACは日本の研究グループによって発見されたタンパク質で、青光により活性化アデニル酸シクラーゼcAMP分子を量産する酵素として、特性解明や生物機能光制御への展開も提唱・実行してきた(Nature, 2002)。本申請者は、PACの相同遺伝子であるOaPACの立体構造解明に世界初めて成功し、光活性化機構に関する構造科学的な研究は本研究グループが先駆的に積み上げてきた。神経興奮の光制御、いわゆる「光遺伝学、optogenetics」が急速に普及し、OaPACによるcAMPを介する生体機能光制御も概念上同類とみなされつつあるが、はるかに広範で多彩な生命活動の光制御につながり、血管新生・脳病変原生・神経回路ネットワーキング・記憶などの光発生医学現象の制御・解明・治療・創薬スクリーニングという広大な新分野の開拓を先導するものであり、かつ独創的な新領域の研究分野であると言える。 このような目標に向け、今後、高純度のRoF-OaPACタンパク質のcAMP活性測定や、反応機構、X線結晶構造解析を行い、詳細な機能・構造解析を行う予定である。また、OaPACにRoseo-Flavinが置換されたOaPAC-RoFタンパク質を哺乳類培養細胞HEK293細胞へ導入し、光制御、生物発光による細胞内cAMPの定量計測を行う。市販のプラスミドpGloSensor-22F (プロメガ社製)を用いて、glosensor-22Fを発現するHEK293細胞株に発現させる。細胞内cAMPの定量計測はホタルイカのルシフェラーゼベースによるcAMPレポーターの発光で行う。細胞内での発光量は浜松ホトニクス製のEM-CCDカメラにより測定をおこなう。本申請者はこのような方法で、OaPAC(ワイドタイプ)をHEK293細胞での光制御による細胞内cAMPの定量計測技術は確立している。
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[Journal Article] Chemical array system, a platform to identify novel hepatitis B virus entry inhibitors targeting sodium taurocholate cotransporting polypeptide.2018
Author(s)
Kaneko M, Futamura Y, Tsukuda S, Kondoh Y, Sekine T, Hirano H, Fukano K, Ohashi H, Saso W, Morishita R, Matsunaga S, Kawai F, Ryo A, Park SY, Suzuki R, Aizaki H, Ohtani N, Sureau C, Wakita T, Osada H, Watashi K.
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Journal Title
Sci Rep.
Volume: 2769
Pages: 1-13
DOI
Peer Reviewed / Open Access