2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18H02445
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
齋藤 大介 九州大学, 理学研究院, 教授 (90403360)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 始原生殖細胞 / 発生 / 鳥類 / 細胞移動 / 細胞外環境 / 生殖腺 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は計画通り、「生殖細胞性の実体解明」と「胚体外での生殖細胞の維持機構と移動機構」を明らかにするべく、ニワトリ胚とその始原生殖細胞を材料として研究を進めた。 「生殖細胞性の実体解明」に関しては、ニワトリ始原生殖細胞の培養実験から興味深い知見が得られた。ニワトリ始原生殖細胞を培養維持するためのフィーダーフリー・無血清培養条件はWhyteらによって報告されていたが、この条件における始原生殖細胞株の樹立効率は25%程度と高くない。我々はこの培養条件の改変過程で大幅に細胞株の樹立効率を改善する条件を発見した(特許申請を予定しているため培養条件の詳細を省略する)。この条件を元に取得した始原生殖細胞株を用いて次年度オミクス解析を進める予定である。 「胚体外での生殖細胞の維持機構と移動機構」に関しては、先に述べた、始原生殖細胞の培養を改善させる要因に注目し、この要因(シグナル)に関わる胚内のシグナル調節因子群の発現解析を進めた。この因子は始原生殖細胞の生存・増殖・未分化性維持に対して負に働く因子と考えられるが、孵卵一日のニワトリ胚において始原生殖細胞が局在する生殖三日月環領域において、そのシグナルの強度を抑制するようにシグナル調節因子群が発現することがわかった。今後はこれらの調節因子の機能解析を行い、そのシグナルが胚内における始原生殖細胞の維持に関わっているのかについて検証を進めたい。一方で、始原生殖細胞の移動機構についても研究を進めた。その一つは、鳥類の始原生殖細胞が血管内を循環移動したのちに行う血管外遊走の機構についてである。循環移動した始原生殖細胞は特定の毛細血管叢にて停止し、その後血管壁縦断移動を行うのであるが、その特定の毛細血管叢にて停止する機構としてアクチンによりもたらされる細胞の強度が重要であることを示すデータを補完した。その成果を現在Nature誌に論文投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
始原生殖細胞の培養条件の見直しが大幅に進んだことにより、始原生殖細胞の維持に関わる因子を複数得ることに成功したからである。これにより本来の目的である「始原生殖細胞が胚体外に生じる意義の理解」に近づくことが想定よりも早くできていると感じている。
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Strategy for Future Research Activity |
培養条件の改善を行えたことから、改めて全ての実験条件の先鋭化を進めていく。特に、この優れた培養条件を用いてニワトリのTG化を迅速に進め、始原生殖細胞の胚内移動機構を高いレベルで解析できる系の確立を早期に実現させる。
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