2018 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of left-right asymmetric nuclear migration as a novel cue for laterality formation
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18H02450
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松野 健治 大阪大学, 理学研究科, 教授 (60318227)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 発生・分化 / 組織・形態 |
Outline of Annual Research Achievements |
からだの左右非対称性が形成される機構は、進化的に多様で、無脊椎動物においてはよく理解されていない。ショウジョウバエの左右非対称性形成機構は、胚の前半部と後半部で異なるというユニークな特徴をもつが、前半部の左右非対称性形成機構についてはほとんど理解されていなかった。これまでの研究から、胚前半部の左右非対称性形成が、中腸内臓筋の核の左右非対称な移動から始まることをみいだしている。さらに、核移動の左右極性化は、中腸内臓筋細胞での非古典的Wntシグナルの活性化、核膜アンカータンパク質などに依存して起こることが示唆された。この細胞では何らかの左右極性化が起こっていると考えられるが、その実態は不明である。そこで、本研究では、核移動の左右極性化に必要な遺伝子、細胞内分布に左右極性を示す因子の同定などによって、核移動の左右極性化による左右非対称性の形成機構を分子レベルで理解することを目的とする。この目的を達成するために、IとIIの実験を実施する。平成30年度には、Iのi)、ii)の実験、IIのi)の実験を実施し、それぞれ以下の成果を得た。 (I)中腸環状筋細胞の左右極性化機構の解明 i) 遺伝的スクリーニングを用いた核移動の左右極性化で機能する遺伝子の探索、同定 胚前半部の左右非対称性をランダム化するnarigoma遺伝子の遺伝子座を特定した。 ii) 核移動の左右極性化におけるWntシグナルの作用機序 Wntシグナルを構成する二つの遺伝子の突然変異体において、核の移動方向の左右非対称性がランダム化した。 (II)左右非対称な核移動の機構の解明 i) 核移動の左右極性化におけるアクチン動態の関与 光褪色後蛍光回復法の条件検討を実施した。当初計画していたUAS-LifeActでは、GFPを光褪色させることが難しことがわかった。 ii) 核移動の左右極性化における核膜アンカーの機能
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度の研究では、以下のような成果が得られており、研究の進捗状況はほぼ予定通りである。 (I)中腸環状筋細胞の左右極性化機構の解明 i) 遺伝的スクリーニングを用いた核移動の左右極性化で機能する遺伝子の探索、同定 研究代表者は、全ゲノム遺伝子をほぼ網羅をした、胚消化管の左右非対称性に異常を示す突然変異体のスクリーニングを完了している。前半部消化管の左右非対称性がランダム化する突然変異のうち、narigoma遺伝子の遺伝子座を、全ゲノム配列解析と、CRISPR-Cas9によるゲノム編集で作出した染色体欠失を用いて同定することができた。GAL4/UASシステムを用いて、narigoma突然変異体胚の中腸環状筋の核を核局在型赤色蛍光タンパク質(Redstinger)、細胞の輪郭を膜局在型緑色蛍光タンパク質(Myr-GFP)で可視化し、タイムラプス撮影で核移動を解析する準備を進めた。 (II)左右非対称な核移動の機構の解明 研究代表者は、消化管前半部の左右非対称形成は、アクチン細胞骨格に依存するが、微小管には依存しないことを明らかにしている。このとこから、アクチン細胞骨格が、核移動の極性化に重要な機能を担っている可能性が考えられる。そこで、光褪色後蛍光回復法を用いて、アクチンやミオシンIIの細胞内動態が、核の移動方向と関連する左右極性を示すかどうかを調べる。アクチン細胞骨格の安定性は、UAS-LifeActを中腸環状筋細胞で特異的に発現させ、共焦点レーザー顕微鏡を用いた光褪色後蛍光回復で調べた。しかし、レーザー照射による光褪色を誘発できる条件を見出すことができなかった。これは、LifeActの細胞内拡散が速すぎるためではないかと考えられた。そこで、その他のF-アクチン結合タンパク質とGFPの融合タンパク質をプローブとする実験計画を立てた。
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Strategy for Future Research Activity |
(I)中腸環状筋細胞の左右極性化機構の解明 i) 遺伝的スクリーニングを用いた核移動の左右極性化で機能する遺伝子の探索、同定 平成30年度までの研究で、前半部消化管の左右非対称性がランダム化する突然変異の責任遺伝子を新たに定した。そこで、これらの突然変異体において、GAL4/UASシステムを用いて、中腸環状筋の核を核局在型赤色蛍光タンパク質(Redstinger)、細胞の輪郭を膜局在型緑色蛍光タンパク質(Myr-GFP)で可視化し、タイムラプス撮影で核移動を解析する。これらの突然変異体における核移動の左右極性化の異常を調べ、各責任遺伝子の左右非対称な核移動における機構を明らかにする。 ii) 核移動の左右極性化におけるWntシグナルの作用機序 研究代表者は、中腸環状筋細胞の核移動の左右極性化が、非古典的Wntシグナル(β-カテニン非依存性経路)に依存して起こることを明らかにしている。中腸環状筋細胞内に平面内細胞極性経路、カルシウム経路の左右極性が存在すると仮定し、ライブイメージングでこれを検出する。また、カルシュウム・スパイクは、UAS-GCaMP6を同様に発現させ、ライブイメージングで検出する。 (II)左右非対称な核移動の機構の解明 研究代表者は、消化管前半部の左右非対称形成は、アクチン細胞骨格に依存するが、微小管には依存しないことを明らかにしている。このとこから、アクチン細胞骨格が、核移動の極性化に重要な機能を担っている可能性が考えられる。そこで、共焦点レーザー顕微鏡を用いた光褪色後蛍光回復法によって、アクチンやミオシンIIの細胞内動態が、核の移動方向と関連する左右極性を示すかどうかを調べる。
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