2019 Fiscal Year Annual Research Report
マダガスカルでの遺伝子水平伝播パンデミックとヘビによる世界的な伝播因子拡散の実証
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18H02497
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Research Institution | Nagahama Institute of Bio-Science and Technology |
Principal Investigator |
倉林 敦 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 准教授 (00327701)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 英利 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 教授 (10201972)
森 哲 京都大学, 理学研究科, 准教授 (80271005)
米澤 隆弘 (財)進化生物学研究所, その他部局等, 客員研究員 (90508566)
田辺 秀之 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 准教授 (50261178)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 遺伝子水平伝播 / 次世代シークエンス / メクラヘビ / 染色体FISH / 分子系統 / 分岐年代 / 系統地理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ヘビからカエルに水平伝播したLINEレトロトランスポゾン(ここではTE-X表記)について、(1)水平伝播時期と地域の解明、(2)水平伝播遺伝子の視覚化、(3)爬虫類・両生類以外のマダガスカル産脊椎動物にもTE-Xの水平伝播が生じているかの解明、(4)水平伝播を媒介した寄生虫・ウィルスの探索、(5)南アジア原産のブラーミニメクラヘビが、マダガスカルのヘビタイプのTE-Xを持っている理由の解明を目的としている。 本年度は、(1)分岐年代推定と水平伝播発生地域の推定を行った。(2)シマヘビと、ネガティブコントロールのツメガエルに対して染色体FISHを行なったところ、前者では強いシグナルが出たが、後者ではシグナルが得られなかった。これにより、FISHによる染色体上のTE-X検出系が確立できた。(4)蛇の体組織からウィルス核酸抽出方の確立を試みた。現在までに行なった実験系では、ウィルス核酸よりも細菌由来核酸の出現率の方が高かった。(5)バングラデシュとスリランカにおいて、現地共同研究者により、メクラヘビの採取が進んでいる。現時点で、バングラデシュでは30個体、スリランカでは19個体のサンプルが得られている。さらに、インドでは、30個体以上のメクラヘビが収集され、そのうち1個体がブラーミニメクラヘビであったが、残りは別種のヘビであった。そのうち1種は、異種間交雑起源のブラーミニメクラヘビの父方系統に属する種である可能性が高いことが分かった。さらに、インドのブラーミニメクラヘビについては、Hi-Seq NGS によりシークエンスが行われ、130 Gbp のアウトプットが得られた。また沖縄産個体について、MinION NGSによるシークエンスを行い、40 Gbpのアウトプットを得た。南アジアにマダガスカルヘビタイプのTE-Xを運んだベクター蛇の可能性が高いスナヘビが収集できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的の、(1)、(2)、(5)については大きく進展した。特に、(5)については、現地共同研究者の力添えにより、十分なサンプルが集まりつつある。特に、研究の鍵となるが、採取が極めて困難と考えられていたスナヘビが入手できたことは、本研究において重大な成功である。また、実際にインドに赴き、現地で十分に次世代シークエンスまでが可能であることを確認するとともに、技術交換が行えたことは大きな収穫であった。また、(2)のTE-Xの視覚化はこれまで実施できていなかったが、今年度ようやく研究が進んだ。(1)については、明確な結果がでており、現在論文化を進めている。 一方で、(3)、(4)については十分に進捗していない。まず、(3)爬虫類・両生類以外のマダガスカル産脊椎動物にもTE-Xの水平伝播が生じているかの解明、については、ドイツとの共同研究を予定していたが、先方のスケジュールの都合で実施できなかった。この点については、年度後半に生じたコロナウィルスの影響が大きく、不可抗力な側面がある。(4)のウィルス核酸の抽出については、実験試行回数自体が少ない。また、より高効率でウィルス核酸を得るために、実験手順に改善の余地があると思われた。 以上のように、一部の目的については大きく進捗したが、一部は遅れている。これらを総合的に鑑み、概ね順調に進んでいると自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、(1)分岐年代推定と水平伝播発生地域の推定と、(2)染色体FISHの結果を合わせ、論文としてまとめることを目標とする。(3)については、ドイツ・ブラウンシュバイク工科大学の Miguel Vences 教授のスケジュールに都合がついた場合、同大学に赴き、収蔵されているマダガスカル産脊椎動物の中でも未解析の魚類・鳥類・哺乳類の組織標本からDNAを抽出し、PCR法によって、TE-Xの有無を明らかにする。(4)については、ヘビとカエルから、ウィルス画分の生成と、同画分のメタゲノム解析を試み、これらの実験手順の標準化を行う予定である。特に、今年度の反省点として、スタートマテリアルの量が少なかったこと、ウィルス顆粒のみを通過させるフィルタリング処理が不十分であっったこと、一部酵素反応が十分でなく細菌DNAのコンタミネーションが多くなったことが挙げられる。これらの点を改善し、ヘビ・カエルの体組織から高効率でウィルス核酸を抽出する方法を検討していく。(5)については、コロナパンデミックが終息し次第、スリランカ・バングラデシュに赴き、サンプル採取と、サンプルの日本への輸送を行う予定である。その後、国内で分子系統解析を行う。また、インド産のサンプルについては、分子系統解析とTE-Xの次世代シークエンス解析を実施し、なぜ南アジア原産のヘビがマダガスカルヘビ型のTE-Xを持っているのかを明らかにする。なお、インドでは、遺伝子資源持ち出し許可取得が困難であるため、実験までを現地で行う。(なお、コロナパンデミックが終息しない場合は、研究課題の繰越を検討したい。)
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Research Products
(5 results)