2019 Fiscal Year Annual Research Report
Population history of Japan
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18H02514
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大橋 順 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (80301141)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 縄文人特異的変異 / 大陸系渡来人 / 本土日本人 / SNP / 混血 / 自然選択 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代日本人は、縄文人と渡来人の混血によって誕生した集団の子孫である。組換えが起こるため、縄文人由来と渡来人由来の常染色体ゲノム領域を区別するのは困難であるが、組換えを受けないY染色体(領域)であれば、塩基配列の違いをもとに、縄文人由来のY染色体を同定できる可能性がある。そこで、我々は日本人男性345名のY染色体の全塩基配列決定と変異解析を行った。345名のY染色体の系統解析を行ったところ、日本人のY染色体は主要な7つのクレードに分かれることが示された。さらに、韓国人・中国人を含む他の東アジア集団のデータを併せて解析した結果、日本人で35.4%の頻度でみられるクレード1は他の東アジア人に観察されないことが示された。クレード1に属する日本人Y染色体の変異を詳細に解析したところ、クレード1はYAPという特徴的な変異をもつY染色体ハプログループD1bに対応していることが示された。YAP変異は、形態学的に縄文人と近縁と考えられているアイヌ人において80%以上という高い頻度で観察される。渡来人の主な母体である韓国人集団や中国人集団には系統1に属するY染色体が観察されなかった結果も踏まえると、クレード1のY染色体は縄文人に由来すると結論できる。 クレード1に含まれる122人のY染色体配列データをもとに、遺伝子系図と集団サイズ変化をMCMC(Markov chain Monte Carlo)法によって推定したところ、縄文時代晩期から弥生時代初期(およそ3,000~2,000年前)にかけて合祖が集中していること、この時期に人口が急減した後、急増したことが示された。 発見された遺跡数やその規模等をもとに、縄文時代の人口は縄文時代後期・晩期にかけて急減し、弥生時代に入って急増したと推定されており、今回の結果はそれを裏付けるものといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
縄文人由来のY染色体クレードを特定できたことに加え、常染色体における縄文人由来SNPおよびゲノム領域の抽出が完了したため。
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Strategy for Future Research Activity |
① 縄文人由来ゲノム成分(仮想縄文人集団)、およびアジア人73集団(PanAsia SNPデータ)をあわせ、TreeMix解析などを行い、縄文人と近縁な集団(縄文人のルーツ)を探る。② 領域ごとに最も近い共通祖先(MRCA)に至るまでの世代時間を計算し、縄文人集団サイズの時間変化を推定する。③ 集団分化(Fst)と連鎖不平衡の伸展(EHH)を指標として、正の自然選択作用領域を同定する。④自然選択候補変異が検出されれば、申請者が開発したABC rejection algorithmを用いて、その選択係数や年齢を推定する。⑤遺伝的・形態的特徴:一般的形質(皮膚の色、耳垢の乾湿、毛髪の太さ、体型など)の表現型や各種疾患感受性と関連する多型のアリルの頻度から、縄文人の平均的形態や多様性を明らかにする。
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Research Products
(6 results)