2019 Fiscal Year Annual Research Report
低圧低酸素および寒冷環境に対する循環調節系の適応反応とその多型性
Project/Area Number |
18H02518
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
前田 享史 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (90301407)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若林 斉 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (50452793)
安河内 彦輝 三重大学, 地域イノベーション推進機構, 助教 (60624525)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 生理人類学 / 環境適応能 / 生理的多型性 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の寒冷曝露実験よりも短時間でより低温まで気温を変化する改変プロトコルでの寒冷曝露実験(Ex1)と、常温での低圧低酸素曝露実験(Ex2)を実施し、低圧低酸素での気温低下実験(Ex3)の最適な環境制御パターンを探索しEx3を実行した。 Ex1では、成人男性20名を対象に、気温28℃湿度50%環境で60分間の仰臥位安静後、気温を5℃まで45分間かけて低下させた時の、皮膚温、深部温、皮膚血流量、酸素消費量等を測定した。また、体組成計測、生活習慣を調査し、寒冷時生理反応に関与する要因を検討した。栄養摂取量等が寒冷時の産熱に影響を及ぼし、末梢皮膚温低下を抑制したことが示唆された。 Ex2では、成人男性9名を対象に、気温28℃湿度50%環境で60分間の仰臥位安静後、気圧を高度3500m相当(約690hPa)まで30間かけて変化させ20分間滞在させる条件(HN)と気圧を変化させない対照条件(NN)で皮膚温、直腸温、皮膚血流量、酸素消費量、SpO2等の測定、唾液採取を行った。低圧低酸素に誘発される血管拡張は全身で一様ではなく体幹部での程度が大きい事を明らかにした。加えて、HN条件で平均皮膚温が高かったが、低圧による対流熱移動の減少のため全身の熱損失は条件間で違いがなく、結果として直腸温が維持されたことも明らかにできた。また、HN曝露前後の遺伝子発現量の違いを網羅的に調べた結果、発現量が有意に2倍以上増加した30の発現変動遺伝子を同定し、炎症・免疫反応に関与するものが含まれている事を明らかにした。 Ex3のために低圧環境での気温低下に最適な空調機器の制御方法を探索した。Ex3では、成人男性10名を対象に、気温28℃湿度50%で60分間の仰臥位安静後、気圧を高度3500m相当(約690hPa)まで30分間かけて変化させ、5分後から75分間かけて19℃まで気温低下する条件と常圧で気温を19℃まで低下する対照条件にて、SpO2、HR、皮膚温、直腸温、皮膚血流量、酸素消費量等を測定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初2019年度内に実施する予定であった低圧低酸素曝露実験を実施し、さらに進展させ低圧低酸素・寒冷曝露実験を実施した。進展させた実験は、機器センサー破損および新型コロナウィルスの影響により中断され、一部2020年度に延期せざるを得なくなったものの、2019年度当初計画以上に進展したことから「当初の計画以上に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルス感染症への感染対策を講じて、環境曝露実験を遂行するとともに、これまで得られた結果をまとめて論文として投稿する予定である。
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