2018 Fiscal Year Annual Research Report
認知学習と精神疾患における大脳基底核神経回路機構の解析
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18H02542
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
疋田 貴俊 大阪大学, 蛋白質研究所, 教授 (70421378)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 側坐核 / 腹側淡蒼球 / 認知学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は多くの精神神経疾患でみられる認知行動障害の神経基盤の解明を目的としている。そこでタッチスクリーン認知学習測定装置を用いて、タッチスクリーンに表示されるキュー(CS)と報酬を関連づけさせるパブロフ型条件付け認知学習課題を行った。野生型マウスに対して、報酬と関連づけさせるキュー(CS+)と無報酬と関連づけさせるキュー(CS-)をランダムに提示すると、セッションを繰り返す毎にCS+へのアプローチ行動(sign-tracking)が増加した。一方、キューに接近することなく報酬に向かう行動(goal-tracking)は減少した。これらの結果は、タッチスクリーンによる認知学習課題によって、マウスにタッチスクリーンに表示される報酬と関連づけたキューに対するパブロフ型条件付け認知学習が成立していることを示している。このパブロフ型条件付け認知学習の神経回路機構を調べるために、側坐核、背側線条体内側部、背側線条体外側部のそれぞれに、大脳基底核神経回路の直接路あるいは間接路に特異的な可逆的神経伝達法を適用した。側坐核の直接路を遮断すると、sign-trackingの増加およびgoal-trackingの減少がみられなくなった。それに対して側坐核の間接路遮断の影響は見られなかった。また、背側線条体内側部あるいは背側線条体外側部における直接路あるいは間接路の遮断の影響はなかった。これらの結果から、パブロフ型条件付け認知学習に側坐核の直接路が特異的に関与することが示された。 次に、側坐核の下流の神経核である腹側淡蒼球について神経回路機構を調べた。DREADD法による刺激あるいは可逆的神経伝達阻止法による神経伝達遮断を行なったが、パブロフ型条件付け認知学習に影響を与えなかった。一方、DREADD法による腹側淡蒼球の神経細胞刺激により忌避学習が障害された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
認知学習、特にパブロフ型条件付け認知学習と忌避学習における大脳基底核神経回路機構の一部を明らかにすることができ、論文発表を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
精神神経疾患モデルマウスのパブロフ型条件付け認知学習と忌避学習を調べる。これによって、大脳基底核のどの神経回路に異常があるかが推定できる。認知学習行動下での同定した神経回路の神経活動イメージングをin vivo顕微鏡あるいはファイバーフォトメトリーによって行う。
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Research Products
(17 results)