2019 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝性疾患を用いた遺伝的背景による大腸がん制御機構の解明
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18H02684
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
八尾 良司 公益財団法人がん研究会, がん研究所 細胞生物部, 部長 (80291095)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
足立 淳 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 創薬デザイン研究センター, プロジェクトリーダー (20437255)
長山 聡 公益財団法人がん研究会, 有明病院 消化器外科, 医長 (70362499)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 家族性大腸腺腫症 / 遺伝学的背景 / KRAS |
Outline of Annual Research Achievements |
家族性大腸腺腫症(FAP)は、APC遺伝子に遺伝性変異をもつ優性遺伝性疾患であり、消化管に発生する多数の腫瘍を特徴とする。本研究課題では、FAP患者に発生する個々の腫瘍が、同一の遺伝学的背景をもち、かつ様々な体細胞変異を有するという特徴に着目し、複数の腫瘍から独立にpatient-derived organoids (PDOs)を樹立し、遺伝学的背景と体細胞変異による腫瘍発生機構と薬剤感受性について、細胞内シグナル経路の制御を明らかにすることを目的とする。 がん研有明病院で手術が行われた5名のFAP患者から樹立された計42個のオルガノイドの解析を行った。すべてのPDOsの遺伝子変異について、独自にカスタマイズされた69個の遺伝子について解析を行なった。さらに、造腫瘍性については、全例を免疫不全マウスへの異所移植により検討し、一つのPDOsにのみ造腫瘍性が確認された。 遺伝子発現解析の結果、IFN/STATシグナルの亢進が造腫瘍性に強く関与していることを見出した。興味深いことに、IFN/STATシグナルは、KRAS変異を持つPDOsのMEK阻害剤感受性する可能性が示された。これらの結果を、個体レベル実証するために、FAPモデルマウスを用いて、STAT1のゲノム編集を行った結果、STAT1欠損により、FAPモデルマウスに生じる腫瘍が有意に減少することが示され、IFN/STATシグナルが消化管腫瘍の発生に関わることが個体レベルで実証された。 一方、造腫瘍性と薬剤感受性の分子機構を明らかにすることを目的とし、細胞内シグナルの網羅的なリン酸化プロテオーム解析を進め、PDOsの効率的な解析プロトコールを作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
FAPオルガノイドの解析結果を、遺伝子改変マウスのゲノム編集により実証することができた。また、PDOsの網羅的リン酸化プロテオーム解析について、効率的な手法が確立し、解析に着手することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
PDOsのリン酸化プロファイルを取得するとともに、MEK阻害剤処理による変化を明らかにし、がん細胞の造腫瘍性と化学療法感受性についての分子機構を明らかにする。
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