2018 Fiscal Year Annual Research Report
The significance and the mechanisms of virus-induced diabetes susceptibility genes
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18H02853
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
永淵 正法 佐賀大学, 医学部, 特任教授 (00150441)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 宏和 佐賀大学, 医学部, 講師 (20607783)
安西 慶三 佐賀大学, 医学部, 教授 (60258556)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ウイルス / 糖尿病 / 感受性 / 遺伝子 / インターフェロン / チロシンキナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
SJLマウスが有する変異型Tyrosine kinase 2 (Tyk2)遺伝子がEMCV-Dウイルス誘発性糖尿病の感受性を促進していることを報告した(Nat Commun. 2015)。しかし、DBA/2マウスの感受性遺伝子は不明であった。そこで、ウイルス感染2日後のマウスから単離した膵β細胞の遺伝子発現解析により、DBA/2マウスの膵β細胞はInterferon-stimulated genes の発現がウイルス糖尿病抵抗性系統C57BL/6(B6)マウスよりも低いことが明らかとなってきた。特筆すべきは、B6マウスの膵β細胞は自然免疫反応に関わる経路が最も大きく変動しており、なかでも、17個の遺伝子発現が明らかに有意に変化していた。この17個の遺伝子と相互作用のあるハブ遺伝子を探索したところ、Signal transducer and activator of transcription 2 (Stat2)遺伝子が17個中9個の遺伝子と相互作用があった。さらに、Stat2遺伝子の発現は、DBA/2マウスの膵β細胞で明らかに低いことが判明した、しかしながら、DBA/2マウスのStat2遺伝子エキソンおよびプロモーター領域の遺伝子配列はB6マウスと同じであった。また、Stat2遺伝子CpG islandのメチル化状態もB6マウスと同じであった。以上のことからDBA/2マウスにおけるウイルス糖尿病感受性亢進は膵β細胞におけるStat2遺伝子発現上昇の乏しさに起因すると考えられたがさらにその発現制御メカニズムの解明が必要であると考えられた。一方、ヒトの糖尿病誘発性ウイルスの候補であるエンテロウイルスの受容体を膵島細胞特異的に発現するトランスジェニックマウスの作成に取り組んでおり、最近、ようやく3匹のトランスジェニックマウスが誕生した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究内容の中心は、新規のウイルス糖尿病感受性遺伝子を同定することと、潜在的糖尿病誘発性ウイルスを検出するために、複数のウイルス糖尿病感受性遺伝子を有し、かつヒトのエンテロウイルスが膵島細胞に感染できるマウスの系を開発することである。新規のウイルス糖尿病感受性遺伝子についてはStat2が第一の候補であることが明らとなりつつあり、その制御メカニズムの解析にまで踏み込んでいる。このテーマは順調に進展している。一方、エンテロウイルス受容体を膵島細胞特異的に発現するトランスジェニックマウスの開発はようやく3匹のマウスが誕生した段階である。このマウスを繁殖させ真に膵島細胞特異的に受容体を発現するマウスの系列を樹立する必要がある。そのためにはサザンブロットによるトランスジーンの検定とともに膵島細胞を取り出して発現レベルを評価する必要がある。この系は予定よりやや遅れている。一方、検定すべきエンテロウイルスとしてコクサッキーB1~6、それぞれ3株、総計15株は研究協力者の愛知県衛生研究所皆川洋子所長より分与を受けた。このヒトウイルスについて、培養細胞における増殖、プラックアッセイの確立のためHeLa, Vero, Human Embryonic Fibroblastなどで検討中であり、すでにHeLa細胞における増殖、プラック形成は確認できた。さらに、in vitroにおけるそれぞれの株の増殖、定量については、トランスジェニックマウスの作成と同時 進行で遂行する予定であり、ほぼ順調に実験が行えている。将来、膵島細胞特異的エンテロウイルス受容体発現マウスをウイルス糖尿病高感受性マウスと交配し、潜在的糖尿病誘発性エンテロウイルスの同定のための系を確立するために継続して研究を推進する。最終年度までには研究目的が達成可能な段階になっている。
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Strategy for Future Research Activity |
新規のウイルス糖尿病感受性遺伝子について、Stat2が膵島細胞特異的に低下したためであることが明らかとなりつつあり、発現低下の機序の詳細を検討する。現時点ではプロモーター領域の変異が認められないためエンハンサー領域の変異とその意義について解析を進めている。同時に、ヒトウイルス糖尿病の最も重要な候補ウイルスであるエンテロウイルスをマウスの膵島細胞に効率よく感染させる目的で、エンテロウイルス受容体を膵島細胞特異的に発現するトランスジェニックマウスの開発を行なっている。現時点で、3匹のトランスジーン陽性マウスが誕生した。このマウスを繁殖させ、真に膵島細胞特異的に受容体を発現するマウスの系列、特にウイルス受容体の高発現と低発現、2つの系列を樹立する。そのためにはサザンブロットによるトランスジーンの検定とともに膵島細胞を取り出しウイルス受容体の発現レベルを評価し、安定性の高いエンテロウイルス受容体高発現、低発現、それぞれのマウス系列を樹立しなければならない。一方、潜在的糖尿病誘発性を検定すべきヒトエンテロウイルスとして、コクサッキーB1~5、それぞれ3株、計15株を、研究協力者の愛知県衛生研究所皆川洋子氏より分与を受けた。このウイルスについて、培養細胞における増殖、プラックアッセイの確立のため、HeLa, Vero, Human Embryonic Fibroblastなどで検討中である。すでにHeLaおよびVero細胞における増殖、プラック形成は確認できた。今後、ヒト膵島細胞における増殖の検定も行う。並行して、最高レベルのウイルス糖尿病感受性マウスを作成する。具体的には。複数のウイルス糖尿病感受性遺伝子を有し、エンテロウイルス受容体を膵島細胞特異的に発現するマウス系列を確立する。このマウスを用いて、潜在的糖尿病誘発性エンテロウイルスを同定し、将来のワクチン開発へ繋げることを目指す。
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