2019 Fiscal Year Annual Research Report
増殖型レトロウイルスを用いた遺伝子治療を応用した膵癌の新規治療戦略
Project/Area Number |
18H02876
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
平野 聡 北海道大学, 医学研究院, 教授 (50322813)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
七戸 俊明 北海道大学, 医学研究院, 准教授 (70374353)
土川 貴裕 北海道大学, 大学病院, 講師 (50507572)
中村 透 北海道大学, 医学研究院, 助教 (70645796)
平岡 圭 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (10719587)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 膵癌 / 新規遺伝子治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は増殖型レトロウイルスベクターを用いた膵癌遺伝子治療を開発している。①正常免疫を持つC57BL/6Jマウスに、マウス膵癌細胞株 (Pan02) の両背側皮下腫瘍を作成し、右側腫瘍に治療を施行し、非治療の左側腫瘍における免疫応答を観察した。右側にRRV-yCD感染細胞(RRVシステムによる治療)と左側にRRV未感染細胞(非治療)を移植し評価した。治療2クールで、右側腫瘍は5FC投与開始後から腫瘍増大の停止を認め、左側はやや遅れて、1クール目の終盤から増大の停止を認めた。次にCTL assayによる抗腫瘍効果の検討した。治療クールの終了ごとに各群の脾からCD8+細胞を分離・抽出し、7-AAD/CFSE Cell-Mediated Cytotoxicity Assay Kitにて細胞傷害効果を判定した。1クール目はET比増大に従い有意に高い抗腫瘍効果を示したが、2クール目は抗腫瘍効果が減弱した。治療開始で一時的に高い腫瘍免疫反応が活性化するが、持続性に課題があることが示唆された。 ②膵癌実臨床は5FU、CPT-11、オキサリプラチンの3剤併用療法が施行される。CPT-11とRRVシステムの2剤併用のin vitroの検討を施行したが、RRVシステムの感染効率の違いにより抑制効果が変動し、データの再現性が得られなかった。 ③K-RASを不活性化する新規RRVとして、Dominant negative RAS変異体(N116Y/C-del2)を搭載したプラスミドを構築したが、HEC293T細胞による十分なウイルス産生量が得られなかった。N116Y/C-del2がHEC293T細胞に影響すると考察した。そこで、アデノウイルスのmajor late promoterおよびglucocorticoid-response elementを組込んだデキサメタゾン誘導型発現システムを開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腫瘍免疫応答に関しては、免疫の活性化が経時的に変化することが明らかとなった。予想と異なり、自然免疫の応答の限界で、最初の腫瘍破壊によるインパクトが低下する問題点が指摘された。腫瘍免疫の抑制系の評価が今後の課題である。K-RASを不活性化する新規RRVシステムの開発に関しては、N116Y/C-del2によるHost cellへの作用(細胞障害)によるウイルス産生量の低下に起因すると考えられ、デキサメタゾン誘導型発現に変更した。また、実臨床に即したRRVシステムの応用に関しては、CPT-11併用でのin vivo実験を施行したが、RRVシステムの感性率に差があると、効果判定が困難であり、プレミックス100%(既に感染した細胞が100%の状態)で腫瘍を形成する方法に変更した。プレミックス100%にプロドラッグを使用する場合と5fuを投与する場合でのCPT-11併用療法の効果を検討中である。実験全体の進捗は順調と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)CD3+細胞でCD4, CD8陽性T細胞の両者の関連を維持した状態で細胞障害assayの評価や、ELISAや細胞内染色によるIFNγ産生評価、治療による脾臓内リンパ球の組成変化について観察する。また、腫瘍免疫応答を持続させる新たな戦略を再考する必要がある。たとえば、免疫抑制系を評価し、その活性化を阻害する方向性がありうる。 (2)膵癌細胞にRRVシステムがどの程度感染した状態でCPT-11のコンビネーションによる効果が期待できるか、プレミックス(感染細胞の割合をコントロールしたモデル)を用い、感染割合を一定させて、併用療法の効果を検討する。BALB/c-nu/nuマウスにMIAPaCa-2(Toca511 100%感染細胞)を移植し、PBS投与群、5-FU+CPT-11投与群、5-FC/Toca511+CPT-11投与群の3群を作成。腫瘍移植後day15より治療開始。治療効果は週2回の腫瘍径の測定により評価する。投薬は5-FU+CPT-11はday15, 22, 29, 36と週1回投与。5FC+CPT-11 はCPT-11は上記同様、5FCは5日連投・2日休薬であるが、薬投与量については50~100mg/kg/回の間で投与量を調整し、副作用と治療効果を検討する。 また、CPT-11と同様にL-OHPとの併用療法についても検討する。 (3)K-RASを不活性化する新規RRVシステムの開発については、デキサメタゾン誘導型発現により、随時in vitro、in vivoの実験計画を立てている。
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