2020 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of functional involvement of RGM, an inhibitory factor for neuronal regeneration, and development of RGM-targeted therapy in critical illness.
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18H02903
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
松本 直也 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (50359808)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田島 吾郎 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (00437427)
田崎 修 長崎大学, 病院(医学系), 教授 (90346221)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 頭部外傷 / RGMa / Neogenin / ミクログリア / 神経再生 / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
神経再生阻害因子RGMaの発現動態が頭部外傷によりどのような影響を受けるか,Pneumatic Cortical Impact Deviceを用いたマウスモデルを用いて評価した。脳損傷部のRNAを抽出してqPCRにて解析した所,損傷24時間後には有意差を持って発現が低下していた。有意差を持った発現の低下は少なくとも3日目まで続いていたが,7日目には損傷前のレベルまで改善していた。14日目にはさらなる上昇傾向を示した。RGMaの受容体であるNeogeninに関しも同様な傾向が認められた。1日目には有意にmRNA発現が低下し,3日目には最低値を示した。Neogeninの場合,有意な低下は7日目まで持続し,14日目以降は元のレベルに回復した。TNF-α,IL-1β,IL-6等の炎症性サイトカインは損傷6時間後からすでに上昇し,3日目からは急速に発現が低下していた。マクロファージの遊走調節因子であるケモカイン受容体CCR2と単球マーカーであるCD11bは損傷1日目に有意に上昇し,CD11bに関しては7日目に最高値を迎えた。一方,ミクログリアの活性化マーカーであるIba1はRGMa発現の経時的変化と同じ傾向を示した。 以上より,脳損傷で生じる炎症性サイトカインの影響によりミクログリアの活性化が低下することでRGMaの分泌が抑制され,一事的な内因性の神経再生機構が働くが,局所炎症の改善とともに急速にRGMa-Neogeninシグナルが回復し,実質的な脳修復には至らないものと考察された。脳損傷モデルの信頼性は,シリンダーテストによる行動学的評価で確認された。上記の成果は,2020年度の米国外傷学会総会で口頭発表し,Journal of Trauma and Acute Care Surgeryに論文として掲載され,international paper awardを受賞している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
頭部外傷により引き起こされる損傷局所炎症下で,神経再生阻害因子であるRGMaの発現が抑制されることが明らかになった。同時にNeogeninの発現も低下することで,RGMa-Neogeninシグナルが相乗的に阻害され得る状態になっていた。RGMa-Neogeninシグナルは,成熟脳において余計な神経回路の発達を防ぐことで,安定化した中枢神経機構を維持する役割を担っていると考えられる。RGMa-Neogeninシグナルが脳損傷に応答して低下することで,神経再生の誘導に関わる内在性プログラムが作動する可能性が示された。一方,RGMa-Neogeninシグナルが急速に回復するために,最終的には神経再生が得られないものと推測された。本研究を通して,①RGMa-Neogeninシグナルの一時的な低下には局所的なサイトカインストームが関係している可能性,②脳損傷にて誘導されるサイトカインがミクログリアの活性化を制御している可能性,③RGMa発現の源が活性化ミクログリアである可能性が示された。以上のように,現在までの研究で,頭部外傷におけるRGMa,Neogenin発現の経時的変化が明確となり,RGMa-Neogeninシグナルの誘導メカニズムや再生応答との関連を焦点として,さらなる研究を進める基盤を作ることができた。また,頭部外傷に対する行動学的解析のためにシリンダーテストを導入することで,今後の治療介入における臨床的側面からの評価を容易にするシステムが確立された。同成果を海外学会にて発表し,国際的な学術誌への掲載が実現した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までの成果にて,頭部外傷によりミクログリアの活性化が一過性に低下することで,RGMaの発現が抑制されるのでは無いかという新たな推測が生み出された。この仮説を証明するために,組織学的にミクログリアが損傷脳において,量的並びに質的にどのような経時的変化を示すかを評価する。活性化ミクログリアがRGMaの発現源であることを明らかにするために,i) 脳切片を用いて,損傷前後におけるIba1とRGMaの発現動態の変化を免疫組織化学的に解析,ii) FACSでミクログリアや他の神経系細胞をsortingし,RGMaの発現レベルを比較検討,iii) ミクログリア培養において,活性化誘導前後でRGMaの発現がどのように変化するかを分析する。頭部外傷に反応して,脳損傷部におけるRGMa,Neogenin発現が一過性に低下するが,早期に正常レベルまで回復することがわかった。成熟脳は余剰な神経再生を必要としない。神経再生阻害因子RGMaは成熟脳の安定化因子として働いていると考えられる。RGMaが損傷早期には正常レベルの発現を示していること自体が,損傷脳修復の阻害に働いていると推測される。我々は,RGMaの発現が回復する前に抗RGMa抗体を投与することで,神経再生が促進されるのではないかと考えている。次年度は,頭部外傷マウスモデルに抗RGMa抗体の投与を行い,形態学的に,また行動学的に脳保護・再生が誘導されるかを評価する。抗RGMa抗体治療は,脊髄損傷において既に臨床試験が始まっている。本実験でマウス頭部外傷に対して抗RGMa抗体治療の効果があると判定されれば,ヒトへの臨床応用への礎とする。
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Research Products
(3 results)